君はビター、僕はホワイトチョコレート
斜め前の席の君は、授業中にビターチョコレートを食べている。教科書に隠れ、教師の目を盗み。教師の声のみが響く教室で、それを噛み砕けない君は口に含んだまま、溶けて消えるのを待っている。その様子を見るのが僕の日課だった。
突然のプリント配布にまだチョコが残っているだろう君が後ろを向き、そして目が合う。僕は思わず片手で口を覆った。
終業のベルが鳴ると君はなにもいわず、チョコを一つ僕の机の上に置く。ちょっと悪戯な顔をして。
ホワイトチョコレートのほうが好きなんだよな、と思いつつ口に含むと、甘味と苦味が舌から喉にゆっくり流れていく。
たとえそれが君の気まぐれだとしても、僕が君を好きだと気づくには十分なきっかけだった。
Twitterで企画されている「毎月300字小説」、今月も参加させていただきました。
二月なので、やっぱりチョコレートかな? と思いましたが、バレンタインデーよりも日々の些細な甘さを書きたくなり、このお話になりました。
読んでくださり、ありがとうございます。