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広島旅行(9) day2

耕三寺はトイレが多かったことも印象的だった。耕三寺を出ると昼食にすることにした。候補は耕三寺の入り口の目の前にある2件の店のうちのどちらかだった。一つは入り口に数人がいて何やら話していた。僕らはすぐに入れるもう一つの店に入ることにした。店に入るとおばちゃんが消毒を促し、テーブル席に案内された。僕らはそれぞれおすすめのメニューを頼んだ。4つくらいあるメインのランチメニューから。彼女は「鯛めし定食」。僕は「牡蠣飯定食」。他には海鮮丼などがあった。もう一つは思い出せない。確かアナゴ丼だった気がする。メインのランチメニューではないれけれど、はま鍋という鍋も名物らしく、店が推していた。僕らはちょうど12時くらいに店に入った。頼んだ料理は5分くらいで来て、僕らは”思ったよりも早く来た”…と驚いていた。前日のお好み焼きがすごい時間がかかったこともあり。だけど、その理由がわかった。僕らが料理を食べ始めると店に客が次々と入り始め、皆が同じような料理を頼み始めたから。僕らの後に入ってきた息子と母親も同じメニューを頼んでいた。鯛めし定食&牡蠣飯定食。すぐにその二つを運ぶ、店のおばちゃん。そしてまた、家族だったり、男二人だったり、男一人の客だったり、カップルだったりがメニューを頼んでいった。席についてから数分が経ったころに、ずいぶん前に座った男一人の客に水を持っていくおばちゃんは「ごめんなさいね」と謝っていた。店を一人で切り盛りするのはこの時間は大変だ。彼女は鯛めしを3分の1程食べて僕に「食べて」とくれた。昨日のお好み焼きもそうだけれど、僕は結構な量を本来は食べれるので、通常の1人前では足りないのである。だけど、その量でもなんとかなるのだけれど(本当はもっと食べたい)。だから、彼女が少食で僕に分けてくれるのは心底ありがたいことなのだ。店で「大盛りにしてください」って最近はどこか言えなくなっているから。というか、”食べ過ぎはよくないことだ”と、どこかで思っているので、”今日は食べるぞ”と心のどこかで気持ちが入っていない時にまで、「大盛りでお願いします」とは言わないだけの”ナニカ”は持ち合わせている…ということだと思う。その気持ちから大盛りを敬遠している。

この店でもう一つ覚えていることの一つに消毒がある。僕らが店に入って、僕は「2名で」とピースをして、人数を告げようとした…、そのタイミングだった。僕の表現に被せるようにして、おばちゃんは言ったのだ。「消毒お願いします。」と。僕は”しっかりしているな”と思った。僕らの料理が運ばれて、店に客が次々と入り始めていた。2人組のカップルが入ってきた。やはり、まず「消毒お願いします」とおばちゃんは言った。「こちらにお願いします。」と座敷を案内するおばちゃん。すぐに新しい二人組の男が入ってきた。黒縁メガネで白髪頭、それなりの身なり(ジャケットだったような気がする)は何やらおばちゃんに言っていた。”座敷使っていい…!?”というような感じ。どうやら常連のようだった。おばちゃんはキッチンに向かう途中だったので、振り向きながら、男と数秒のやり取りをした


二人の男たちは消毒をしないで座敷に上がっていく。


おばちゃんはそのままキッチンへ向かう。常連だからか、はたまた忙しいからか…そこまで気が回らなかったからか…、僕が店に入った時の第一声が、僕の動きを拒絶しての「消毒」に関するものだったのにも関わらず、おばちゃんは消毒の”し”の字も発することはなかった。店には消毒をしていない男二人の客がいた。


誰もがその人に課せられている役割を果たせるわけではない。


ただ、”やるように”と課すことは簡単なことので、その誰かはいとも容易く課すのだろう。そして、また課された者たちはそれに応えようとあらゆる自分の常識を差し置いてまでも不自然にもそれに応えようとする。それだけの話だろう。時と場合、状況によってはその課せられたルールはなかったことになる。それだけの話なのだ。

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