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広島旅行(17) day2
僕はトランクスをとりに戻ることも考えた。このままだと、風呂から出てさっぱりして最高の状態になったとして、またさっきまで履いていたトランクスを履くことになる。トランクスを履かないで直接にワークパンツを履くことも考えた。再び考える。まだ全ての服は脱いでいない。ロッカーにはコートを入れたぐらいだ。もう一度コートを取り出し、ロッカーを閉め、鍵を閉め、13番の木札を靴箱に入れ、靴をとり、靴を履き、受付に「忘れ物をとりにいく」ことを告げ、ホテルの入り口で電子ロックを解除し、ルームA(僕らの泊まる部屋)に行き、ルームキーで鍵をあけ、トランクスを見つけ、また同じことを逆から繰り返しyubuneに戻り、受付を済ませ、13の木札をとり、脱衣所で服を脱ぐ。
”決めた”。
僕はトランクスをとりに帰ることをやめ、そのまま服を脱いだ。もう一度、温泉から出たら、また同じトランクスを履くことにした。ホテルに戻ったら真っ先に新しいトランクスを履くことを夢見ながら。
気持ちを切り替える。
温泉に入ってみると人は一人もいなかった。僕はどの場所に座るか悩んだ。初めは入ってすぐの湯船から離れたところの奥にしようとするも、やはり湯船のほうにしようとする。だけど、また思い直した。湯船のところで体を洗ったりしていると、温泉で湯船に浸かっている人が僕が体を洗ったりシャンプーをしているのをずっと眺めていたりすることになるかもしれない。…再び、入ってすぐの湯船につかっている人から見えない場所に腰を下ろし、体を洗い始めた。桶や座る椅子は木製でここにもこだわりが感じられた。というか、風呂の中のタイルから壁の絵から何から何まで今風にデザインされている気がした。シャワーも、今までこんなに大きなシャワー使ったことないというくらいに出るところが大きかった。勢いもすごかった。僕はゆっくりとシャンプーで髪を洗い、コンディショナーで仕上げをし、ボディソープで体を洗い、湯船へ向かった。湯船は何種類かあるようだった。これまでの経験からお湯の温度が違うのではないかと思った。僕はとりあえず、熱めの風呂に入りたかった。そしてサウナへ行き、満足したら温泉から上がろうと思ったいた。この温泉にある”全種類の温泉に入ろう”…とかそんなつもりはなかった。落ち着いて、静かに温泉に入れれば多少僕の望む温度の温泉がなくたって構わなかった。だから、この温泉の空いている状況は僕の想像を遥かに超えてよかった。温泉に浸かった後はサウナに行くことにした。サウナにつながるらしいドアを開けるとちょうどサウナから出た人とすれ違った。サウナと温泉の間には少しの空間があった。そこにはサウナで座る為に敷く、タオルのようなものがあったが僕は手に取らなかった。そしてまた、紙コップと水も置いてあった。こんな快適なサウナは見たことない。僕はサウナの扉を開け、サウナに入った。誰もいなかった。時計らしいものがあったので何時か調べようとしたら、それは時計ではなく10分間を繰り返し計測するアナログのストップウォッチのようなものだった。秒針がくるくると周り、長針が時計でいう12の所にある10へ向けて、8あたりを通過したところだった。僕はそのアナログストップウォッチのことはあまり気にしないで、目を瞑った。背中を壁につけようと思ったが、熱かったので持っていたタオルで背中が接する部分にタオルをつけた。熱さを和らげようとした。もう一度背中をつける。まだ熱い。だけど、最初に背中をつけた時よりも木製の背中と接触する部分の壁は確実に熱を奪われていた。僕はもう一度、タオルで壁から熱を奪い、背中を壁につけることに成功した。それからは目を瞑り、少しの間サウナについて考えた。最近はサウナが人気だった。YouTubeやネットでもサウナ好きを公言している人がいる。このサウナはどうなのだろう。僕はとりあえず目を瞑っていた。こういう時は意外に時間が経つのが遅いのだ。きっとまだ5分も経っていないような気がした。サウナのドアが開き人が一人入ってきた。