ちょっと!お父さん!!⑨
父は歌う事が大好きで、お酒も強くないのにカラオケがしたいばかりでスナックに通いつめていた。
カラオケボックス世代の私たちの事をみて、ギャラリーのおらんところでうたって何が楽しいんや!?と言っていた。
確かに夜のお店に行けば、
〇〇さん!素敵な声やし、ええわぁ〜、しびれるわぁ〜。
などと歌う度に誉めてくれるのだから気持ちが良いものだ。
そうやって、父はどんどん自分の歌に酔いしれ、カラオケ大会などに参加して賞をもらったりして 遂には歌手デビューを夢見る事となる。
父の歌手デビューを夢見るきっかけとなったのは、父と同世代のお爺さんが孫の事を歌った曲でメジャーデビュー!!というニュースを見たからだ。
今風に言うと
ワシも、ワンチャンあるんじゃね?的な具合である。
父は日々歌に磨きをかけてはいたが、今までにしなかった事をしはじめた。
作詞である。
常に紙と鉛筆を持ち歩き。
自分の書いた歌詞を 行く先々で披露してはアドバイスをもらい
一人暮らししている私や遠方に住む姉にまで電話したりファックスで歌詞を送りつけては感想を聞きたがる。
歌詞の一文目に
俺の人生凸凹道
という節があったのだが、
母は 「あんたの人生のどこに凸があったん?ボコボコ道やないの!!」
と言っていたのが印象的だ。
近所の喫茶店に行くたびに、マスターやお客さんにこの歌詞どう思う?とアドバイスをもらおうとするので、はた迷惑なのを母が気にして
「ほんまに、死んでほしいわ!」などとボヤいたら、マスターが笑いながら「殺したるやわ」と冗談を言っていたそうだ。
余談だが、、、
後に父が亡くなった時、(確認のため書くが母はあやめいない)
このマスターお通夜に来てくれたのだが、髪の毛を結んでいてそこに5円玉と鈴がついていたので、
私や姉は供養に関係するものかと思ってママに聞いてみると、
「あー!あれな。あれしていくとパチンコ勝ちやすいらしいんやわ!」
と言っていたので古い言い回しだがズッコケた。
後にその歌詞は出来上がる。
手書きもなんだかなと思ったのか、パソコンを買いワードをしてその時に私の夫(当時は彼)を呼び出して教えさせていた。
呆れた事に、自分の歌詞であると言うことを認めてもらうため著作権を守るため(特許?)まで取りに行った。
その歌詞の内容は、夜の居酒屋で会う何故か気になるあの子のために通いつめる的な話で、二人は結ばれることが無いというような歌詞だった。
出来上がった時には誰かのアドバイスで無くなっていたが、二人が愛し合うエロい内容を表現するような歌詞があったのを覚えている。
そのアドバイスをくださった方に心からお礼が言いたい。