B'z いつかのメリークリスマス に思う
大晦日にクリスマスに関することの記事を書くというのも、なかなかになかなかで、乙だねと思うので、したためてみる。
B'zの名曲「いつかのメリークリスマス」を聴くたびに、不思議と涙が溢れてくるのは、私だけではないだろうと思っているがいかがだろうか。この曲には、一見シンプルでありながらも、心の奥深くを揺さぶる力がある。その理由を探るうちに、歌詞の中に描かれた男女の関係や、その背後にある物語が見えてきた。
「いつかのメリークリスマス」は、愛し合う二人が過ごしたかけがえのない時間と、わたしの勝手な想像だが、そんな二人の別離の後に訪れる切なさを描いた楽曲だと考える。歌詞は、クリスマスの季節に紡がれる一つの小さな物語のようだ。特に印象的なのは、「いつまでも手をつないでいられるような気がしていた...」というフレーズ。この一節は、手をつないでいた二人の関係が、今はできないことを想像させる。愛する人との思い出が、クリスマスに降る雪のようにすぐに融けて儚く消えていく。何度も聴き返すたびに、ここで胸が締め付けられるような感情を覚える。
この曲が感動を呼び起こすのは、リスナー自身の経験と重なる部分が多いためだろう。例えば、かつて大切だった誰かとの特別な瞬間や、その人と別れた後の空虚感。誰もが一度は経験するであろう普遍的な感情が、この曲の中に凝縮されている。特に、歌詞の中で描かれるクリスマスという特別な日。その日がもたらす期待と、現実とのギャップが、切なさをより一層際立たせる。
また、この曲のメロディーも感情を引き立てる要素の一つだ。冒頭のオルゴールと穏やかなギターの旋律と、稲葉浩志さんの情感あふれる歌声が、歌詞の物語に深みを与えている。特に、静かなイントロから徐々に盛り上がり、サビで感情が爆発するような構成は、リスナーを感情の波に巻き込むようだ。この構成の妙が、歌詞の内容と相まって、一種の映画を観ているかのような体験を提供してくれる。
個人的には、この曲を聴くと、遠い昔の自分自身の思い出がよみがえる。学生時代に好きだった人との淡い恋愛や、家族と過ごした穏やかなクリスマス。そのどれもが今は過去のものとなり、二度と戻らない時間であることを思い知らされる。そんな中で「いつかのメリークリスマス」は、忘れかけていた感情や記憶を鮮やかに蘇らせてくれる。まるで、自分の心の中にあるアルバムをめくるような感覚だ。
さらに考えてみると、この曲は単なる失恋ソングではないように思う。歌詞の最後に描かれる「幸せそうな顔で」という言葉は、かつて、あんなふうに荷物を抱えて、今はいない彼女の待つ家に急いで帰ったことを思い出して、感傷に浸る男性の姿が思い浮かばずにはいられない。過去の別れを受け入れながらも、やっぱり、なんらかの理由でいなくなってしまった彼女を思うと、自然と涙が頬を伝う。そんな情景がわたしは思い浮かばせる深い余韻を与えているのではないだろうか。
「いつかのメリークリスマス」は、時間が経つにつれて色褪せるどころか、むしろその魅力が増しているように感じられる。それは、私たちが年を重ねるごとに、人生の中で失ったものや得たものの重みをより深く理解するようになるからだろう。この曲は、そんな人生の喜びと悲しみをそっと包み込んでくれる、一つの芸術作品といえる。
結局のところ、「いつかのメリークリスマス」がこれほどまでに心を揺さぶるのは、リスナーの感情に寄り添いながらも、希望を感じさせるメッセージを秘めているからだ。この曲を聴くたびに、過去を振り返り、現在を見つめ直し、未来に思いを馳せる。そんなひとときを与えてくれるこの名曲に、これからも心から感謝したいと思う。