青山真治クロニクルズ展レポート(2)
〔青山真治という生き方 —「サッドヴァケイション」の相関―〕
2007年公開の「Sad vacation(サッドヴァケイション)」は、まず青山真治が過去に撮った二部作の「Helpless」・「EUREKA」が背景にあって作られたことを理解しておきたい。しかし、1996年に「Helpless」でデビューして間もない青山がその当時から三部作という構成を考えていた訳はなく、二部作目の「EUREKA」とつながって随所に配役の欠陥があることも、「サッドヴァケイション」では一律している。
さて重要なのはその点ではなく、この作品の主人公・白石健次を、11年ぶりに演じた浅野忠信や、そのメガホンを取った青山など、撮影現場の雰囲気はどうだったのだろうか。「青山真治クロニクルズ展」で延々と再生されていた「サッドヴァケイション」のメイキング映像を見た方がいれば、その全体が分かっただろうと思う。
インタビューに答える浅野忠信曰く、「脚本を読むときのスピードが速かった」というように、本作の役にかなり没頭できたと見ることが出来る。
だが、本作の構成は、青山作品のなかでもクリストファー・ノーラン並みの複雑さがあり、慎重に練られて作られていると考える。つまり、一つの場面に対し、多くの情報が見え隠れしていて、それを観客は想像して応えるというものであった。また、本作は北九州を中心にロケを行ったとされてる。「青山真治クロニクルズ展」では、そのロケ地マップが展示されていた。実際に着用された衣装などを見ながら、実際とイメージの確かめも出来る。
最後に「サッドヴァケイション」は、男性的な他二部作と比べ、「女性」の存在が際立つストーリ仕立てだったように思う。それは、三部作を作るまでに青山は、女優のとよた真帆との結婚もあり、「女優と仕事をするのが楽しくなった」といったようなことを語っていたことから、それが彼がこれまで撮ってきた数々の作品と比べ、作風の変化に動機付けたことは確かだろう。その視点に基づき次回は、多部未華子が主演した「空に住む」を批評していく。これが悔しくも青山真治が最後にメガホンを取った作品となった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?