アディスアベバ国際空港置き去り事件 vol.1
アディスアベバ
エチオピアの首都にある空港に初めて降り立ったのは2007年6月14日
「エチオピアに行ってくれ」
と社長から言われた2週間後のことだった。
関西空港行きのバスに乗り込んだ私を、姿が見えなくなるまで追いかけ、涙を拭いながら見送ってくれた母とは真逆で、私の心は浮かれていた。
夢に見た海外出張
しかもアフリカ
あの日の私は全身からワクワクが溢れでていたと思う。
空港で社長と会い、
「じゃあ現地で」と別々にエミレーツの飛行機に乗り込んだ。
初めての長距離飛行機
美しすぎるエミレーツの客室乗務員
乗り換えのドバイ空港内は小さな世界だった
動く歩道で目の前にそびえ立つ黒人
黒い布で頭のてっぺんからつま先まで覆った女性
見たことのない料理
表現できない臭い
welcome to the world
世界へようこそ、と言われているようだった。
大阪からドバイまでは約10時間
ドバイで4時間ほど待ち、アディスアベバ(アディス)行きの飛行機に乗った。
アディス行きの乗客だけでは満員にならないためだろう、アディス行きの飛行機はいつもアディス経由エンテベ(ウガンダ)行きだった。
アディスに到着し社長と再会した途端、
「俺、すぐにケニアに飛ばんなあかんから。数日で戻る。迎えが来るはずやから出て待っとけ」
と言い残し、エチオピアの入国審査を済ませることなく、社長はそのままKenya Airwaysに乗ってナイロビへ行ってしまった。
23歳
初めてのアフリカ
今まで行った国は、韓国、ミャンマー、台湾
英語は挨拶程度
(会社に外人から電話がかかってくると「ホードン、プリーズ」と言って、隣の先輩に受話器を渡すのが精一杯。相手の会社名も聞き取れないレベル)
迎えに来る人の名前も聞かされていなかった。
当時は、海外に着いてすぐ使える携帯も持っていなかった。
待つこと30分くらいだろうか・・・
チョコレート色の肌をしたお腹の出た男性が、迷わず私の方に近づいてきた。
「アーユーユカ?」
と聞かれたた。
そのとき、空港に残っていた日本人女性は私だけだったから迷わなかったのだろう。
彼が、
「お前一人か?社長はどうした?」と聞くので、ケニアに行ったことを力づくで伝えた。
こうして私のエチオピア出張が、幕を開けた。