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技術よりもビジネス感覚。クリエイター業において誰もが身につけたいスキル。

はじめに

修正依頼や仕様変更が突然発生することは、制作において頻繁に起こる。しかし、それに対してどれだけ的確に対応できるかで、プロジェクト全体の進行やクライアントとの信頼関係に大きな影響が出る。

今回、1ページのWebコーディング案件で発生したデザイン変更に対応する中で、ディレクションやクリエイターに求められるスキル、さらにビジネス感覚について改めて考えたため、この記事にまとめておく。

案件の概要

この案件は、広告代理店から定期的に依頼されるもので、わずか1ページを用意されたデザインをもとにコーディングすることが主な目的である。

ディレクション費用はいただいておらず、コーディング費のみの案件であったため、ディレクターとしては無駄な動きを極力減らす必要があった。ディレクターというよりは「連絡窓口」に近い立場で、コストを考慮し、コーダーに直接横流しして対応させるという選択肢も出てくる、そんな案件であった。もちろん、社内のコーディングの仕方に合わせるために、リンクやテキスト関連をNotionやエクセルにまとめたりなどの最低限のことはする。

経緯:デザイン修正と判断の連携

デザイン修正が入ったのは夕方17時を過ぎた頃、世の中的にはそろそろ仕事を終える時間帯だった。その際、私はデザインの詳細をあまり確認せずに進めてしまった。ディレクションにかかるコストを考慮し、とりあえずコーダーに「この修正版デザインで、1時間後までに修正対応可能か」とほぼ横流しで確認を取った。コーダーから「大丈夫です」と返事をもらった後、私はクライアントに「18時までに対応します」と報告した。

しかしその後、実際にデザインを見ると、画像がセットのスライダーの画像に対してシャドウがついているデザインで、後々分かったのだがこのスライダーと画像シャドウの相性は悪いらしい。しかも、画像の高さが均一ではなく、ガタツキが発生してしまうなどの予期せぬバグも産むような、あまり見ないようなデザインだった。

代替案を提案

この状況を踏まえ、以下の代替案を提案することにした。

  • 提供された画像の高さが均一でないことやシャドウの影響を考慮すると、18時には確実に間に合わないため、追加の時間が必要である。

  • もし18時に間に合わせるならば、次の方法であれば対応可能。

    • シャドウをつけず、代わりにグレーの枠線で対応する。

    • 画像の高さがバラバラでも白背景などを敷くことで、見た目は同じ高さであるように整える。(白背景を敷くだけで十分対応可能な画像だったため)

    • この代替案はCSSのみで対応可能だったため、画像の再書き出しなどの手間は不要。

この案を代理店に提案したが、結局「デザイン通りで進めてほしい」と言われたため、最終的には時間を伸ばしてもらいつつ、その指示通りにすることに。一度私から代理店に対して「18時までに対応します」と言った手前、代替案が通らないのは薄々感じてはいたが(代理店からの案件で直クラではないので、コーディングができないのでデザインを修正するとかは避けたいのが本音だと思う)。

判断力とビジネススキルの重要性

ここで改めて感じたのは、コーダーに求められるスキルの重要性である。私自身、コーダーに「対応可能」と判断を任せ、クライアントに進行を報告したが、こうした場面ではコーダー自身がデザインの問題点を瞬時に見抜く判断力が求められる。デザインをただ言われた通りにコーディングするだけでは、今後のビジネスにおいて難しい局面に立たされる可能性がある。

特に、AI技術が発展する現代において、単純に指示された作業をこなすだけの人材は価値を失っていく可能性が高い。むしろ、コーダーであってもデザインや仕様の問題点を理解し、的確に代替案を考え、クライアントに提案できるスキルが求められる。こうしたスキルは、ただの技術者ではなく、ビジネスパーソンとしての価値を高めるために必須と思う。

と、少しコーダーが悪い扱いのようになってしまったが、私自身がコーダー出身であるため、「なんとかなるっしょ」という気持ちで「大丈夫です」と言ってしまうことも理解できる。おそらく、私がディレクターという経験を積んでいなければ、「大丈夫です!」→「やっぱり時間かかりそうです」という一言で済ませようとしていたかもしれない。

しかし、ディレクターとして仕事をしていると、心の何処かで「先ほどの代替案のようなことを、コーダー自ら言ってほしい」と思ってしまう時がある(もちろん、まずはデザインを正確に再現することが重要なのでその場では言わないし、私が言ったところでコーダー自身の行動が変わるほどの影響力はない)。

学んだこと

そんな出来事を通じ、ディレクターとして感じたのは、以下の3点。

  1. スケジュール管理と期待値調整
    修正が予想以上に多く、しかも遅い時間に来ることは往々にしてある。クライアントとのスケジュール管理や、事前に期待値を調整することが進行をスムーズにする鍵となる。

  2. デザインの確認プロセス
    修正内容を進行前に十分に確認しないまま進めると、後でトラブルが発生する可能性が高い。デザインの変更点や仕様が全体に与える影響を細かく確認することが重要。

  3. 代替案の提案力と調整力
    問題点を見つけた際、すぐに代替案を提示するスキルは不可欠である。しかし、提案が通らない場合にも柔軟に対応できる調整力が求められる場面も多い。ディレクターとしては、コーダー自身が自らの判断で対応できない局面も十分にあるため、そのフォローする調整力も必要である。

最後に (本紹介)

今回の案件は、単なる1ページのコーディング案件ではあったが、そこには「できる・できない」といった技術的なスキルよりも、判断力や提案力、さらにはビジネス感覚が必要な場面が多々あった。

PCの画面とにらめっこするのもいいが、人と人とがどうやってコミュニーケーションをとっていけば円滑に物事を進めることができるのか。コーダーに限らず、デザイナーなどのクリエイティブに関わる人がこうしたスキルを身につけて活かすことが、これからの時代に必要とされる。そんな気がした出来事であった。

と、そんな記事を書いていたら、少し頭をよぎった本が3冊あるので、一応紹介しておく。これは、私がWEBディレクターになってから読み続けている良書。今回の記事の内容が直接書いているわけではないが、ビジネスパーソンとしてあって損の無いスキル本。ぜひ手にとって見てほしい。

人は話し方が9割 (永松 茂久)

どんな仕事でもコミュニケーションは避けられない。本書のタイトル的に「話す」にフォーカスされているように思えるが、「話し方=聞き方」でもあり、話す場面以外においても使える技などが37項目で書かれいる。「ほんのわずかな聞き方・話し方」が仕事や日常生活の些細な部分に影響する。今でも辞書的に見返す本。

解像度を上げる

曖昧な指示や、過去に経験したことのない案件による課題などに直面した時、成功へ導くために必要な「明晰な思考と行動」。本書は、深さ、広さ、構造、時間という4つの視点から、曖昧な思考を明晰にし問題解決の手法を提供してくれる一冊。

コンサル一年目が学ぶこと (大石哲之)

本のタイトルには「コンサル」とあるが、職業・業界を問わず役立つ普遍的なスキルが書かれており、「ビジネスの基礎書」ともいえる一冊。話す技術、思考術、デスクワーク術、ビジネスマインドなどを章ごとに解説してくれている。

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