【お茶屋】四半世紀価格を変えなかったお茶を値上げした結果
2022年から相次ぐ値上げラッシュ。物価の優等生と言われた卵ですら値上げ。
日本茶も物価の影響を受けづらいカテゴリでしたが、大手メーカーの伊藤園さんが2022年10月に値上げ。
ウチも原材料費高騰や経費増加の影響を受け、30年以上変えてこなかったお茶の価格を2023年4月に値上げしました。
値上げする前、他のお茶屋さんがどこまで値上げしてるのか気になり、調べました。
資材メーカーさん経由の情報だと半数以上は値上げしている、仕入先の茶商さん経由の情報だとほとんど値上げしていない。
キレイなまでに情報が分かれました(笑)
値上げに積極的なお茶屋さんと消極的なお茶屋さんで、二極化している印象です。(それか容量削減で価格据え置きのステルス値上げパターン)
お茶が飛ぶように売れた昭和に、ある程度の資金を貯めることができたお茶屋さんは、値上げしなくても何とか回せる状況だと思います。
一方、昭和のいい時代に資金を貯めることができなったウチのようなお茶屋は、値上げせざるを得ない状況です。
長年値上げをしてこなかったので、値上げは一大イベントでした。今回、値上げした時の状況やその結果をお伝えします。
値上げを検討している方々の参考に少しでもなれば。
1.値上げしたきっかけ
お茶の味香りは、お茶屋によってだいぶ変わります。
茶葉の品種や産地もさることながら、茶葉を摘んだ後の、加工(蒸す工程や火入れ工程)によって、かなり仕上がりが異なるからです。
そして、お茶は嗜好品であり、人によってお茶の好みが分かれるため、これだ!と気に入ってもらえたら、特定のお茶屋のお茶を買ってくれます。
更に、お茶は日常的(継続的)に飲まれるため、お茶屋のビジネスモデルはある種のサブスクモデルだと考えています。
お茶にはそういった特性があるので、お茶屋は同じ特徴のお茶を継続的に提供していく必要があります。(味香りが変わると既存のお客さんが離れる可能性がある)
お茶は1年ものであり、厳密にいうと、その年の気候や壌土の条件により、味や香りが変わります。
それを、蒸す工程や火入れ工程などの加工段階で味香りが変わらないように、うまく調整します。
なので、お茶の仕入れ価格は、
①お茶が1年ものであること
②加工(特に火入れ)で調整できること
により、今のところ原価は変わってないです。(少なくとも、うちの仕入れ先もお茶の原価理由による値上げは受けていない。)
一方、ティーバッグのナイロンや茶袋、シールなどの資材費が、結構な頻度や額で値上がりしています。ウチの値上げきっかけもこれが一番大きいです。
さらにその他経費。全体的にじわじわと増えていますが、特に光熱費の負担が大きくなりました。
これら資材費や光熱費高騰分を補うため、茶葉やティーバッグ商品の一律5%値上げを決行しました。
2.値上げするまでにおこなったこと
まずはスーパーのバイヤーの方への連絡。値上げする2ヶ月以上前に伝えました。
値上げ交渉は初の試みだったので、ドキドキしながら伝えましたが、他の商品が値上げの真っ最中だっとこともあり、「あー今回はお茶ね」と、特に嫌な顔をされることはありませんでした。
次に個人商店及び来店されたお客さんへの連絡。こちらは値上げする2ヶ月前から伝えました。
「まあこの状況じゃ仕方ないよね」と、商店の方やお客さんに嫌な顔されることなく、了承頂きました。が、いい話をするわけではないので、値上げを伝えるのが私的には一番辛かったです。
個人商店は10店舗以上あったため、妻と手分けをして電話や訪問をしました。
蚤の心臓の私は、申し訳ない気持ちで動揺してしまうので、強心臓で物事を粛々と進める、妻にかなりの部分を任せてしまったのであります(;^_^A
3.値上げした結果
値上げ前、毎年の売上は減少傾向だったので、減少の幅に拍車をかけてしまうのではと不安でした。
しかし、蓋を開けてみると、値上げをした2023年4月〜2024年1月の期間で、
・小売部門は、前年と売上が同じ、粗利益は前年比8%増
・スーパー向けを含めた卸部門は、売上が前年比3%増、粗利益は前年比11%増
と、特に粗利益がかなり増えました。
光熱費などの経費が増えているため、営業利益では厳しい状況が続いていますが、それでも経営的にかなり楽になりました。
一点面白かったのが、スーパー向けでの100g1,000円前後のお茶の販売実績が激減したこと。(経営的には痛いですが。。)
3桁台(900円台)で販売していたのが値上げ後に4桁台(1,000円台)になったため、高くなった印象をより与えてしまったことが理由かなと考えています。
一方、100g1,500円以上の高級茶は、販売本数が前年比16%増と、値上げしたことで販売実績が増えました。
色んな要因があるとは思いますが、やってみないとわからないのは、商売の面白いところですね。
「商売は値上げで潰れるのではない。値下げで潰れるのだ。」
私が尊敬してやまない木下斉さんの名言です。
値上げすることで経営的に余裕が生まれ、次のステップを考えることができる。
それがゴーイングコンサーン(継続企業)につながることを、身をもって実感することができました。