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【参考にならないソロキャンプ】遠い目をして食べ続け、観光地に疲れてそそくさと帰る
スイッチでパチリと切り替えたかのように秋がきた。
それと同時に夏の間完全にOFFっていた私の中のキャンプ欲もONに。少し仕事が落ち着いたタイミングで出かけることにした。
最後にキャンプに行ったのはまだ暑くなる前の5月末。約4ヶ月ぶりのキャンプということでブランクなのか、なんだか山の中のソロに心細さを覚える。
近くのキャンプ場は平日休みのところが多く、あまり選択肢がない。以前行ったことのある山の中のキャンプ場を予約するも、急速に心細くなり、予約後5分でキャンセルした。
「海をみたい」という気持ちもむくむくと湧いてきたので、海辺のキャンプ場を予約した。今は自分専用車がないので、母が病院から帰ってくるのを待つ。その間、夜に楽しむためのつまみを数品仕込む。
まずはランチ。変哲なきラーメンと家過ぎるチャーハン
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いつからだろうか。メシ屋を調べるときに食べログではなく、Google mapを開くようになったのはと思い掛けて、ただ勤めていた時のように街に行く機会が少なくなったからだと思い直す。外に出るときはほとんど車なので、ルート上の行きやすい店を探しているだけである。
ただ、おいしさとしての味ではなく、「味がある」の味で選びがちになったのは間違いない。店名や店の風貌などで決めがちである。
ランチに選んだのは「みかんのいえ」というラーメン屋。「みかんのいえ」という店名とmapに掲載されていた写真のスープの色、チャーシューのサイズにグッときた。
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おじさんおばさんが2人で切り盛りしており、店内には韓国ドラマが流れている。駄菓子屋チックというかなんというかノスタルジーを感じずにはいられない。作業着姿のおじさんや、タオルを額に巻いたおじさんたちが数人順当に散りばめられていて、これこれ〜と思う。
チャーシューメンとセットの焼飯で1,100円。チャーシューメンのビジュアルが異様に刺さる。サイズ、質感、鉢への収まりなど複数の要素が満点を叩き出し、私への刺さりやすさの五角形の面積を広げている。
スープを飲むと、目がギンと開くようなおいしさではない腑に落ちる過不足ないおいしさに嬉しくなる。飲む前にあらかじめつけた味の採点を修正する必要がない。
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セットの焼飯は驚くほど我が家味だった。今まで店で食べた焼飯のなかで群を抜いて家味だと思う。味付けは塩胡椒と醤油とかそんな感じ。特別パラパラとかでもない。これ、いいぞ。今は実家に住んでいるから泣かないけれど、一人暮らしだったら泣くぞこれは。
ランチ2食目。唐揚げ弁当とビール
ランチをして、買い物をして14時くらいにキャンプ場に入るつもりだったけれど、買い物をゆっくりしても13時に着いてしまった。
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約10年前に後輩のふじぴーと来たことのある「気比の浜キャンプ場」。その頃は無料だったが今は有料で、車横付けのソロキャンプで1泊3,000円。入退場フリーで無料みたいなキャンプ場がなかなかなくなってるな。松の下がソロ用のサイトらしい。テントから海、空が見渡せる。ロケーション素晴らしい。
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厳し目の残暑を思わせる予報だったが、やさしい風が吹いていて、涼しい。キャンパーも2組ほどで、サイトが広いからかなり距離がある。快適すぎる。テントを張り終えてもまだ13時半。時間的余裕もあり、気持ちが安らいでいくのを感じる。ここのところ、何か焦燥感めいたものがずっと胸のあたりにあったが、やや濃度が薄まった気がする。
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唐揚げ弁当とビール。チャーシューメンと焼飯がなかったかのようにもう1食ランチを食べる。到着が14時を回るのであれば食べるつもりはなかったが、まだまだ昼時の範疇である13時に到着するのなら、海辺ランチも楽しみたいと欲が出た。1日2食になるのは気持ち悪いのに、4食、5食と増えるぶんには全然OKというご都合主義の腹を持っている。
爽やかな風にチャーシューメンと焼飯の油は連れ去られ、すっかりリセットされていた。目線の高さにビールを掲げ、青い海と空にカンパイする。冷めた唐揚げが幼少期にお弁当を持って海水浴に来た思い出を呼び起こす。でもビールを飲んでいるというギャップに年齢だけはすっかり大人になったのだなと感じる。
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海や空を仏フェイスで眺めては、本を読む。その繰り返し。くどうれいん「日記の練習」。これまで本はほぼジャケ買い、題名買いをしていたが、2年ほど前に出会い、明確に好きになったはじめての作家さんである。それでも最近家で読書が全然捗らなかったので、外で読みたいと思ったのもキャンプに来た理由のひとつである。
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唐揚げ弁当を食べ終え、お腹はいっぱいだが、口がさみしい。立ち寄ったスーパーで何故か目に止まり、購入したクリームコロンをつまむ。1〜2時間経つと、海風を含んだのか湿気てクリームと側の一体感が増した。
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ゆったりと夜が来るのを、いや、次のメシを待つ。普段常に仕事をしていて、お金のことしか考えていない自分に嫌気がしてキャンプに来た節もある。一旦何も考えずぼーっとしようと。でもやはりぼーっとするのって難しい。
海や空は魅力的で、いつまでも見ていられると思って眺めはじめるが、長くは難しい。1、2分見つめていたら何もしていない自分にそわそわしてくる。もっとぼんやり暮らせないとなぁと思う。
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砂浜に薪にする流木を拾いに行ったり、場内を散策したりしているうちに16時になり、まぁもうはじめるかと夜飲みを開始する。
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先日奈良観光に行った際に購入した「梅の宿ジン」。ポーションタイプで持ち運びやすく、キャンプに持ってこいだ。スーパーで買った肉団子、出かける前に仕込んだカリフラワーのおかか梅和え、自家製らっきょうを1皿に盛り、満足する。やや斜陽だがまだまだ明るい。日本酒やワインが待っている。
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かつて無料だった名残なのか、ふいに普通に地元のおばぁさんおじいさんウォーカーが目の前を横切っていく。ぐでっとしていたり、もりもり食べているところにふいに現れるので気まずい。無視をすることもできず、しているのかしていないのかわからない程度の会釈を差し上げた。
爆食の夜のはじまり
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17時になり、待ってましたとばかりに焚き火をはじめる。薪を持参していたが、松林には松の枝や松の葉が落ちており、砂浜には流木がたくさん流れ着いている。これらを薪代わりにする。拾った薪のほうが雰囲気が出るのだ。
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このロケーションだから否応なしに海向きにテントを立てるしかないのだが、海風により、煙をすべて顔面で受ける。予想以上に直撃だったので怯んだが、しばらくすれば風は収まるだろうと気を取り直し、料理を進める。
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もはや明確な切れ目なく食事が続いているが、ここからが一応夕食だ。一品目はなすのチーズ田楽。フタなどは持ってきていないので、マルチグリドルでじっくり火を通す。
箸で持つとふにゃりとひょうたん型にひしゃげるくらいまでとろとろになったら田楽みそを塗り、スライスチーズをのせる。田楽みそは家を出る前に仕込んでおいた。自家製の発酵生姜をたっぷり入れたので、ピリリと爽やかさもある。こんなんはうまいに決まっている。
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ジンのソーダ割りを飲み終えたので、ワインに移行する。チーズをのせたから洋風感もあり、ワインとの相性も悪くない。出かける直前に思い立ったようにクーラーボックスにチーズを投函したが、良い判断だった。
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続けて焼き鳥である。もうここのところはキャンプといえば焼き鳥になっている。なんとなくノーカトラリーで食べられる料理の方がワイルドでいい。焼くのに結構時間がかかるのも、時間を持て余しているキャンプにはぴったりだ。セリアのミニ鉄板で焼き鳥を数本ずつ焼いて酒をちびちび飲んでいたら1〜2時間はあっという間である。
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キャンプに来るたびに思うが、欲張り過ぎは疲れる。冷凍の皮と豚バラの2種の串を用意したが、各5本の計10本ある。持ってくるのは5本くらいでよかった。しかも気づいたら両方脂ギッシュ系だったので、片方はあっさりにした方がよかったな。どうせまた同じ過ちを繰り返すのだが。
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ランタンにも火を灯す。誕生日祝いに今の自分にぴったりだと思って買った1,000円くらいの安ランタン。ちゃんと雰囲気がある。
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最後はホルモンうどんを作る。タレに漬け込まれた冷凍ホルモンを買ったが、タレ過多だと感じたので、カット野菜とうどんも買ってぶち込むことにしたのだ。これまた脂ギッシュだがうまい。
食べ終えてゆっくりしていたが、U-NEXTでレンタルした「PERFECT DAYS」の視聴期間が今日の22時までだと気づき、観ることにする。2日前に観たが、もう一度役所広司の顔を拝みたい。デジタルデトックスをしたいと思っていたが、まぁ役所広司は特別枠だ。別に何が起こるでもない映画だから、邪魔にならないだろう。「PERFECT DAYS」は1月に京都で観た。
役所広司と一緒に笑っていたら、ライトの明かりが近づいてくるのが見える。近くの旅館のスタッフで、その中の1人の女性が退職するのでお別れ会にバーベキューに来たというのだ。
しかし、アウトドア初心者で火がつけられないと。仕方ないなぁと役所顔で彼らのサイトに行き、火をつけてやった。お礼に缶ビールをもらう。BBQをするのに火バサミすら持っていないとは。火バサミを渡して自分のサイトに戻ると役所広司が固まっていた。
彼らは砂浜でBBQをしていた。砂浜でBBQで送別会っていいじゃないかと思ったが、漂着ごみが酷すぎて、もうちょっときれいなところの方がよいのでは…と思ってしまう。
火バサミを貸すのは全然いいのだが、自分の繊細さを考慮していなかった。そのあとはいつ彼らが返しにくるのかそわそわしてしまう。たくさん食べているのを見られたくないし、役所広司と笑い合っているところも見られたくない。
結局19時くらいに貸して、彼らが帰る23時ころまでそわそわしきりであった。自分の城を見られたくないので、遠くにライトが見えたとき、自分から近づいて火バサミを受け取った。テントに戻るまでのストロークで見上げた夜空は、予想以上に星まみれだった。
ゲートボールモーニング
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小鳥のちゅんちゅんという囀りや葉が擦れる音ではなく、「入れ!」という大声で目を覚ます。もぞもぞテントを抜け出すと松林を挟んだ向こう側、私のテントから5mほどの場所はゲートボール場だった。老男女が20人くらいいる。いるなぁと思う。
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焚き火をつけ、湯を沸かす。定番のカレーヌードルとキウイを食べていると日差しが強くなってきたので、車のラゲッジスペースに移動し、腰掛ける。駐車している向き的に海はまったく見えず、代わりにゲートボーラーがよく見える。「入れ!」と叫んで思った以上にキャッキャと楽しんでいる老男女を見ながら啜るのも悪くない。
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スティックのコーヒーを入れ、ホットサンドメーカーでチーズバーガーを焼く。昨夜はビールをもらったこともあり、いつもより結構飲んでしまった。もういらないと思っていたバーガーも表面がカリカリだから食べ始めると全然必要だったと感じた。
テントやマットを乾かしている間、やはりゲートボーラーを眺めながら本を読んだ。「入れ!」「入った!」「出た!」の3単語だけで楽しい時間を過ごせる彼らが羨ましい。ゲートボールっていいもんだな。
城崎へ
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寒くなるかもと予想していたが、全然暑かったので汗をかいている。ネチネチとした肌面が気持ち悪く、早く風呂に入りたい。
キャンプ後に観光地を訪れるのは結構しんどいのだが、まわりにスーパー銭湯的なものもないので、せっかくだし城崎温泉へ。キャンプ場からすぐなのだ。
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欲張ると疲れることをキャンプで学んだはずなのに、しっかり外湯めぐりぐるりんパス的なやつを買ってしまう。地蔵湯で炭臭い体を洗い、あっつい湯でふやかす。生き返ると同時に疲労感がどっと押し寄せてくる。でもまだぐるりんしなければ。
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どこかで休憩したい…と歩くが、ジャージーな自分でも入っていいと思える店がなかなか見つからず、とぼとぼ彷徨う。
結局、どこにも寄らずにもう1湯。御所の湯は露天風呂があるからか、外国人観光客がたくさんいた。私は風呂に浸からず、ひたすら岩に腰掛けた。湯があるのに入らないという侘び寂びを見せつけたのち、ちょっともったいないと思い、1分ほどだけ湯に浸かり、出る。ちょっと湯に失礼なので、またゆっくりと訪れたい。
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昼食を食べてもいい時間だったが、観光地で食べるにはくたびれすぎていた。とはいえ少し休憩したく、混み合っていないカフェへ。アイスカフェラテで一服する。
カツ丼とラーメン
そそくさと観光地をあとにし、自分の落ち着けるスポット、大衆食堂を目指す。「食堂ふるさと」である。もうふるさとって言っちゃってるもの。落ち着くに決まっている。
何週間か心のどこかに「カツ丼を食べたい」という静かな情熱があったので、カツ丼とラーメンのセットにする。また食べ過ぎてしまうけれど、旅やキャンプ中はそんなのは気にしていない。
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隣に座った現場作業員的な人のペアは、メニューを見ることもなく日替わりを注文。今日は焼き魚だったぞ。そんなので本当に足りるのか?なんの現場作業もせず、湯でふやけただけの私はドカンと食べるのに。
ストレートなカツ丼。カツは薄めだけれど、ちょうどいいなぁ。大衆食堂欲が満たされていく。20代前半の頃にはきっとわからなかったであろうおいしすぎないおいしさをもう私は知っている。
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ラーメンも食堂のラーメン然としていていい。しかしれんげでスープを掬って飲むと、味わったことのない深み。魚介系というか、節系が効いている。ふるさとから飛び立って帰ろう。
途中道の駅に立ち寄って鳥取産の梨を買った。
カフェでコーヒー
あとはもう帰るだけだが、本を読みきれなかったので、1カフェ行っておこう。家近くのカフェを久しぶりに訪れる。車止めと車止めの間をタイヤが通過し、バックし過ぎて普通に側溝にハマる。幸い側溝幅が狭くて乗っかった程度だったので、すぐに抜けられたが、開放的な窓がウリの店内からハマっているところが見えたに違いない。
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ハマった男が入ってきたと思われたかもしれないが、本と手帳を持って、只者ではない雰囲気を撒き散らす。コーヒーとロールケーキを注文し、本を読み終えたあと、手帳を開く。意味のある何かを執筆する然とした表情を作り、「側溝にハマったあと速攻でケーキを食べた」とだけ書いた。