【花の秘密】の秘密 ーゲームマーケット2023春ー
こんにちは。王手、毘沙門天と申します。
先週のゲムマ2023春の土曜日に参加をしました。
生産した個数全て完売となり、たいへん嬉しく思っています。
このnoteは、花の秘密の「ゲームシステム、コンポーネントデザイン、プロモーション」の秘密について製作過程や思考のプロセスを紹介しようと思います。
ゲームシステム
シードで構成されたダイスを振って、出た目のシードに穴の開いているカードを重ね、手札が無くなったプレイヤーの勝利。
これが花の秘密のゲームシステムになります。
さらに、出せるカードの枚数だったり、シードの効果によって戦況が変わるUNOに似たゲームになっています。
なぜこのようなゲームシステムなったかといいますと、コンポーネントデザインから考える帰納的な思考で考えたからです。
コンポーネントデザイン
穴の開いたカード
ボードゲームやカードゲームを作る上で、私たちはコンポーネントの形状からデザインします。
理由はコンポーネントの形状を限定することでその制約の中、いかに魅力的なルールや体験を作れるか、考えるほうがゲームシステムを導きやすいからです。
例えば「〇〇なカタチをした駒を使いたい」とか「〇〇な状態のカードが良い」など、このゲームのコンポーネントとしての目玉を決めることで、いきあたりばったりなゲームシステムにならないよう線引をし、それを引き立たせることに重点を置けるからです。
そして今回は、、、「穴の開いたカードを使いたい」というのがスタートでした。穴の開いたカードを使ったボードゲームをやったことがない、見てみたいと言うのが発端です。
どんな穴の形状にするのか。
穴の開いたカードを活かすためには、どのような形がいいのかを考えます。
複雑なカタチは加工に費用がかかってしまうので、シンプルなカタチから検討し、円形、三角形、四角形とモックを作りながら考えました。
結果、四角形のカタチで落ち着きました。
四角形にしたのは、カードの天地や向きに意味を持たせれるかもしれないと考えたためです。しかしそれだけでは、穴を開ける必要がないので必然性を考えます。
このとき開いてる穴にピッタリはまるようなコンポーネント(ユニット)があれば気持ちがいいだろうなと直感的に思っていました。
そして「コンポーネント(ユニット)の側面の色に合わせてカードをはめる」というゲームシステムにしたら一貫性があるのではないかと思い、四角形の穴が空いたカードで考えることにしました。
このようにコンポーネントから逆算してゲームシステムを考えていきます。
カスタムできるダイス
この段階で穴の開いたカードとカードにはまるユニットの2つの要素があります。
ユニットは、穴の開いたカードを成立させるために存在しているわけですがゲームをプレイするにあたってただ闇雲に存在し、カードを当てはめていくだけでは芸がないので、どのように場に存在させるかを考えます。
候補として、福引きのように無作為に選ぶか、プレイヤーごとにユニットを所持し任意のタイミングで場に出すなどを考えていました。
それぞれの候補を試しつつ、仮のゲームシステムを構築しましたがどこか既視感のあるものになっていきました。
迷走している中、、、ユニットを触っていたら箱のようなカタチが作れることに気付き、ユニットをダイスにする案を思いつきました (唐突)
分解しやすく再構築することもでき、且つダイスとしても機能するコンポーネントの設計は、想像以上に難しく困難を極めました、、、。
分解し易いということは、ダイスを振った時にユニットが取れやすいということなので、ユニットを分解しやすいが振った時には壊れないという矛盾を解消する必要があったのです。
おもちゃメーカーさんは毎日こういう壁にぶつかって、アイデアを考え解決しているのだろうなと思うと尊敬します。
この段階くらいからボードゲームを作ってるのかおもちゃを作ってるのか分からなくなってきて、「ぜんまい仕掛けのコマとか作りたいな」とか思うくらい朦朧としていました。
そして数ヶ月の試行錯誤の末、ユニットを分解しやすいが振った時には壊れないという矛盾を解消したダイスが完成しました。
CADソフト(Fusion 360)や光学3Dプリンター(ELEGOO Saturn 2)など初めて使うものばかりで、途方もない気持ちになりましたが、裸一貫! つづ井さんを読みながらなんとか頑張れました。
テストプレイ
コンポーネントの形状もゲームシステムも概ね決まってきたので、モックを作ってサークル内でプレイします。
確かこの時はユニットの色に合うカードを出して、カードにある得点を稼ぐみたいなルールだったと思います。
テストプレイしながら細かいルールを詰めていきイラスト等のデザインも考えようと思っていたのですが、サークル内のボスが
「カードを重ねたい」
さらにビッグボスが
「重ねたら花みたいに見える」
、、、、、。
この時点でゲムマまで2ヶ月を切っていました。
脳内でシミュレーションすると、、、重ねるということは、ユニットの高さの範囲で重ねれるように穴の大きさを設計して、さらにカードの厚みを考慮して、、、と頭がパンクしそうだったのでやんわり話をそらしていたのですが
「こ、、、これだ、、、」
天は自ら助くる者を助くとはこのことでしょうか。
天命を知る者は、必ずや天命に従うべしとはこのことでしょうか。
矢木に電流走るとはこのことでしょうか。
なんとなく頭の片隅で「穴の開いたカードの必然性が弱い、開いている意味があるのか、目新しさだけじゃないか」と思っていたので、憑き物が取れたような感覚でした。
完成
ボスたちも納得していたので急いで細かいところを詰めて納品データを作り、入稿しました。
正直、現物が届くまで不安でした。
穴の内径にミスがあれば重ならない。花のようにならない。不安の波が襲ってくるたびに、佐藤究さんのテスカトリポカを読んだり、スパイスからカレーを作ったり、オーバーザサンを聴いたりして正気を保っていました。
商品が届き、確認してみたらバッチリ!!!
本当に萬印堂さんに感謝です。
プロモーション
3Dモデルを応用
商品が届くまでデジタルデータを駆使してプロモーションを行いました。
ユニットの設計をCADソフト(Fusion 360)を使っていたので、3DデータをそのままBlenderで使うことができました。
3Dソフトが使えると説明書等にも応用できるので今後も併用していこう思います。
おまけ
花の秘密の秘密
実は、花の秘密には物語があります。
「遠い未来、恒星が消滅して人類は滅亡した。
唯一生き残ったのは、フューチュリアと呼ばれる人工生命体。
滅びゆく人類は、地球文明の存続を彼らに託したのだった。
荒れ果てた大地で彼らは、種をまき始めた。種はやがて花を
咲かせる。ぎこちなく、美しく.....」
これが花の秘密の世界観になります。
「太陽の光が無くても成長する花」をイメージして無機質なデザインを意識しています。
前回、製作・販売を行ったCabCellはアブストラクトゲームだったので世界観を意識していませんでした。今回はカードゲームということで、少しでもコンポーネントやゲームシステムに絡んだ世界観を考えても良いのかなと思い作品にストーリー性をもたせました。
カードの裏の秘密
こういった世界観をもとにカードの裏面のイラストを書いています。
終わり
花の秘密の製作期間は半年です。本業と並行しながら製作したので苦しい場面も多々ありましたが、あらゆる技術と体験ができたので嬉しく思っています。次回作もユニークなゲームを作っていきたいです。
花の秘密の印刷用の型も作ったので、このコンポーネントをベースにして他のボドゲも作れそうだなと思っています。
最後まで読んできただきありがとうございました。