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【パリ五輪】話題の「無課金おじさん」ことトルコ射撃選手がなぜ凄いのか!?【アクション考察】

 今夏開催パリオリンピック、10mエアピストル混合(射撃)で銀メダリストを獲得したトルコのユスフ・ディケチ選手(51歳)がネット上で話題だ。
 ゴーグルやイヤーマフを装備しないラフなTシャツ姿に日本のSNSでは「無課金おじさん」と呼ばれている。
 また、左手をポケットに入れたまま撃つリラックスした姿勢や退役軍人という経歴も注目されている。

 本記事は普段アニメ・映画のアクション考察を語る筆者が試合動画を視聴し、スポーツから気付いた「武」の側面について解説・考察する。

【参考動画・10mエアピストル混合(射撃)】


1.達人級の所作に注目

 3位決定戦、決勝戦を見て、ユスフ・ディケチ選手の姿勢の良さに気付く。彼は両肩がほぼ垂直に近く、他選手は両肩の傾きが大きい。あまり肩に力を入れていないことが分かる。さらに上半身に注目していくと胸のラインも綺麗に整ており、肩甲骨を下げつつ中央に寄せているからと推測できる。
 ただ肩甲骨を中央に寄せるだけでは腰が反りやすくなり骨盤が後ろに引いてしまい滑稽な立ち姿になるが、彼は真っ直ぐに立ち、姿勢を保っている。このことから骨盤を前に押す動きも加えている。一般人でも意識して短時間であれば似た姿勢を保てるが、自然体で姿勢を維持するにはかなりの年数の鍛錬を要しているはずだ。

 多くの選手が主に「筋肉」を固定して力を入れた姿勢で射撃を行っていることに対し、ユスフ・ディケチ選手は主に「骨」を固定した上で筋肉を添え自然体な姿勢で射撃を行っており、これが大きな違いであり精密な射撃で上位となった要因と考える。
 また、自然体かつ姿勢の良い様は武の達人と呼ばれる方々の所作と似ている点が興味深い。

2.「骨」を意識した動きの利点

 武の達人と呼ばれる方々は「骨」を意識し動かすことが人の最適化された所作と考え、鍛錬を重ねて目指す。これには3つの利点があると言われる。

 1つは、余計な力を必要とせず疲れにくい身体を得るため。2つは、肉体が衰えても長年の「武(所作)」を維持し、武術を修めることを目指すため。3つ目には、疲労で体調を崩していたとしても本来に近いパフォーマンスを発揮できるよう安定感を得るため。

 「骨」を意識して動かすことは動作を最適化するだけでなく利点が多い。ただ、ふとした「力み」が生じることで動作に悪影響を及ぼす。そのため、いかなる状況でも「自然体」でいることを求め長年の鍛錬を積み重ねる。そうして「骨」を意識して動き、常に「自然体」でいるよう身に付けることで「達人」となり、人々からそう呼ばれていく。

3.自然体な姿の裏側

 ユスフ・ディケチ選手の射撃姿勢は余裕あっての行動ではなく「力み」が悪影響となるための対策であるとも見える。左手をポケットに入れて落ち着いたように見える仕草や肩をすくませて一呼吸つく仕草は自然体でいるためのルーティンかもしれない。

 NHKでは彼が帰国して地元メディアの取材に応じインタビューの一部を紹介している。
【参考記事】 NHK NEWSWEB「“軽装で銀” トルコの射撃選手 SNSなどで話題に パリ五輪」2024年8月2日記事

 「ほかの選手のような装備は自分には向いていない。楽に競技しているように見えるかもしれないが、実際には心臓が飛び出しそうなぐらいどきどきしている。」(記事内インタビューコメントの一部を引用)
 インタビューは彼の素直な気持ちであり、楽に競技しているように見える自然体な姿の裏側は、彼なりの対策だった面もうかがえる。

 ただ根本的には彼がいかなる状況でも「自然体」でいることを求め長年の鍛錬を積み重ねた結果であり、若者が中心となる世界大会で50歳を超えても結果を出した精密な射撃は達人級の所作といえよう。

 話題となったスポーツ世界大会の1シーンを見ることで、アクションを考察し「武」としての側面の面白さに気付く良い機会となった。また、スポーツにせよ武にせよ最適化を目指して鍛錬された人の所作というものは美しい。


 今回は話題への即時性として概略的な記事として作成したが、反響や感想などがあれば鍛錬に伴ったことの推測や元軍人故の所作等さらに踏み込み深堀りしたnote記事を作成したい。 
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