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ナンプラー・ロマンス~ペテンの香り~


 思い立ったがなんとやら──書きたいときに書いておくのがマストだなと思い、今こうやって久々に綴っている。

 私がPS業界からスッと離れ、1年以上経ちます。それと共に、現職に就いて1年を迎えるワケで。「あぁあれからそんな経ってしまったのかァ」なんて1年前がとてもとても昔に感じる日々。まぁ、単純に歳食ってるだけだと思うけどもな、私もうアラフォーだし、カルビも胃もたれしちゃうお年頃だしさ。

 まぁまぁそんな駄弁はさておき、ドコの誰かさんのお話をちょっと聞いてほしいなと思う。ちょっと、っていうかガッツリ、なんだけどね。私の友人知り合いらが読んで「もしやアイツ……!?」ってなったとしてもそれはショナイでお願いしたい所存。

酒のつまみの恋バナがキッカケに。

最近瓶ビールばかりの私。この日も瓶ビールで……。

 ──まだまだ暑いとある日、友人とビールKPイェーイしていたわけですよ。その友人は以下『A君』と呼びましょうか。

 そのA君が「実は結構前から彼女がいてさぁ──」なんて語り始めて、おぉ! 恋バナキタコレ! って盛り上がるわけですよ、私女子だし、女子はこういう話が大好きでしょう? ジョッキ5杯目以降の恋バナなんて下衆になりがちだけど。

 A君「もう5年くらい付き合ってて……相手は10個上のタイの人でさぁ──」
 私「お~ん、異文化コミュニケーション! ええなぁ!」
 A君「旦那さんを亡くして今、母国に戻って自分のお母さんを介護しているんだよね──」
 私「お~ん、未亡人! 大変だなぁ介護は」
 A君「瑛美(私)と一緒で、子どもがいてさ。もう成人しているし瑛美より大きい子なんだけども。そして彼女はマッサージ教室をやっていて。最初は結婚求められていたけど結婚願望は無いから断ってて──」
 私「お~ん?」
 A君「ずっと支援しててさ、俺しか頼る人がいないからってさ──」
 私「……おん? 支援!」

 A君「そう、○○○万円貸していt
 私「──なぁごめん、ちょっともう1回言って?」

 話の流れを簡潔に言うと。

〇彼女はタイ人、東新宿のタイ古式マッサージで出会った。その店の施術者(オーナー)であった。年齢は還暦間近。

〇コロナ禍などでお店の経営と収入が不安定に。そこから国保や自身の生活費などに充てる為のお金を"支援"している。

〇"貸した"わけではなく"マッサージチケットの前払い"として、付箋に『○万円チケット』という記載をしてそれと引き換えにお金を渡した。と言っても、当人同士では口頭で貸借している認識だと。

〇日本にあったお店は他の人に譲り、現在は自国にあるマッサージ教室経営に専念&母親の介護をするため、拠点をタイにしている=帰国中。

〇彼女とはなんかよく分からないけどレス。自分の中●れが原因(=悩み)。
軽いキスはするって言ってた(超余談過ぎる)。

〇彼女の好きなところは、愛情表現が強くて愛してくれるところ。


 ──とのこと。最後の2つはすこぶるどうでも良い話だけどね。まぁ中●れ部分は2回聞き直したけどな?

 パッと聞けば、なんとなぁく良い話もあるし幸せそうだな~なんてフワフワと半分酔っている頭で話を聞いていたけど、解散して帰り道の南北線で頭冷やしながら気づいたんよ。

 ──なんか、なんかヘンというか、なんか引っかかるなぁって(遅)。

A君は脳筋のジャパニーズです。

ちょっとこいつに似てる
(我が家では「A君」って呼んで玄関に飾られてる)。


 さて、このA君の紹介をしますが「ユニクロが着れなくなるのが本物のマッチョだ」という迷言を言い放つ、正真正銘の『脳筋』です。

 辛いことがあれば「ジムに行けばいい」、痩せるなら「ジムに行けばいい」、そして時間があれば「ジムに行けばいい」。とりあえず「ジムに行けばいい」とマジで思い込んでいる40代の日本男児。

 とにかくA君は良くも悪くも素直、馬鹿正直で、考えることが苦手ですぐジムに行っちゃう子なんですよね。ちなみに好きなモノはベルセルクとドラゴンボールとグラタンと肉って言ってた。
目の保養になるレベルの筋肉質、小難しいことはわからない猪突猛進タイプ。まー普通にしていればモテると思いますが、ジムばかり行って何かバッジでも集めてんのかな。

 そんなA君は、幼少期からお母さんひとりしかおらず、大人の諍いにトラウマを抱えたり……なんて、ちょびっと暗い過去もありつつ。元プロの格闘家であり、下積み時代はバイトを一生懸命こなしながら、エアコンの無いクソ狭アパートに暮らしつつ超節約して、でもトレーニング中に金玉を打ってバカ腫れて全く動けなくなった時も、お金がマジで無いから病院にも行けなくて──なんて、人として苦労してきた人間でもあるわけで。

 なんかエピソードはアレなんだけどさ、下を見ている人間っつーのはさ、もうそれ以上落ちる事もねぇからさ、本当に優しい人だと思うんだよな。私はね。

 その日から色んな意味で気になってしまい、日々ちょっとづつ情報を聞いておりました。それと同時に頭によぎる懸念点──ただ大切な人が信じる相手を否定するだなんて、私もしたくないわけですよ。

我がフレンズに気付かされ……


私には心が通じあう友が居ることが自慢。

 フとこの話を他の友人らにポロっと漏らした時に。

 友人「──なぁそれ、ジャパゆきさんだぞ」と。

 私らの世代では聞きなれないワードを思わず検索し、即時に理解。この呼称はあまりよくない意味合いだろうな~なんて思いながら、調べれば調べるほど、当てはまっていく内容の数々。正に足りなかったパズルのピースがスッ、と頭ん中でハマっていくかのような……。

 わからない人に超カンタンに説明すると、つまり『日本へ"出稼ぎ"をしてきているアジア圏の女性たち』。もう死語ではあるが、80年代上旬に流行語になったので、知っている方は知っているだろうし、もうお察しの方もいるであろうね。彼女の世代的にもビンゴだしね。

 個人的にはあまり良い意味合いとして受け取れなかったし、人を差別するかのような言い方に対し拒否反応が出てしまう私としては差別用語に等しい感覚。なのでこのワードはここ限りにしたいと思う。

追加情報で腹いっぱい、偏見もいっぱい。


マジこんな顔になるよな、皆。
私もだよ。


 さて、ここまでの話に至るまで追加で分かった彼女の情報は以下。すまんな読んでいる皆、情報量が多くて。

〇コロナ禍で結局お店をたたむ(他の人に譲る)事となり、それからお店にある荷物(施術用ベッドやクリームや資料等)をA君の自宅(会社の寮)に置いている。

〇会社の寮に住まわせていた事もあるので、彼女の私物も多数ある。生活費はもちろんA君持ち。

〇貸した金は百数十万円。送金したものもあれば直接手渡しした金額もある。

〇貸した理由は毎回、特に深く聞かず「オカネ カシテホシイ ●●万円──」という内容(電話)に対し、できるだけすぐゆうちょ銀行から同銀行へ送金している。


お金が必要な理由は覚えている限り「日本の保険料や税金を支払わなくてはならない」、「母親の介護費用が足りない」、「教室の運営資金が足りない」、「旦那様の葬儀費用がなく自分の喪服すら買えない」等。
話を聞く限りは数十万を都度、タイトなスケジュール(数日以内)で送金するイメージ。

=A君の感覚としては「彼女がやりたい事に対してお金を貸してあげている」「自分しか助けられる人がいない!」という認識の模様。

〇彼女は母親の介護と自国で経営しているマッサージ教室の立て直しを行うため、拠点はタイ。日本には時々来ており、その都度会っている。

ちなみに母親は80代前半、介護施設に入居していたこともあったが、当人が施設の滞在を強く拒否したなどあった為、自宅介護している。
(お国柄もあるだろうね、これは)

なお介護と言ってもかなり軽度のアルツハイマー(年相応のボケ)であり、普段スマホなどの操作や身の回りのことは自身難なく行えるとのこと。

ただ、この当時"転んで頭蓋骨を骨折して包帯を巻かなきゃなのに、嫌がってほどいてしまう"という、子どもっぽいことはあった模様。
(頭蓋骨……を骨折して……包帯? というコトバを飲み込みつつ)

〇彼女はとにかくお金や生活面で昔から苦労をしており、日本に来てからお見合い結婚にて半ば強引に日本人の旦那様と結婚。

3人のお子さんに恵まれたが、女としての喜びもなく、旦那様との関係もうまくいかず。
タイでは離婚したことになっているが、日本では婚姻関係があるまま別居をしたものの、最終的には旦那様は病気でお亡くなりに。

亡くなる寸前は献身的に介護をしていたが、年金および旦那様の資産は旦那様の親戚たちで分けられてしまい彼女は無一文。葬式代も自身で捻出したとのこと。

〇タイでは頼れる人は誰一人おらず、彼女独りが母親の介護含め金銭面含めすべて独りでやり繰りしている。

「アナタ シカ タヨレルヒトガ イナイ」とA君に強く強くなんでも頼るとのこと。

〇出会った東新宿のお店では、健全なタイ古式マッサージの施術を受けていたが(彼女も「真面目に施術している」旨を強く言っていた模様)、通ううちにエッティーな雰囲気となりエッティーしちゃった。

〇『彼女』と呼んでいるが「付き合って欲しい」等というくだりは一切なく、初期のころは「ケッコン シタイデス」と言い寄られており、結婚願望皆無で独り身を突き通したいA君はそれを丁重に拒否。

その後から「アナタハ カレシデス」にランクダウンし、そこから「あぁ俺、この人の彼女なんだ」という認識になった。
(↑なんかそれはそれで、この話だけだと微笑ましいよね?「俺ら付き合ってんだろ?」みたいな……?)

〇彼女は日本語がほぼカタコトであり、難しいやり取りはLINEや電話上ではできないため、会う時は辞書やスマホの翻訳を使いながら話すようにしている。

ちなみにA君の家には"あいうえお表"と簡単な日本の漢字の表が貼られている。尚成人してるお子さんは日本にもいる(日本語しゃべれる)。

〇彼女はビザが取れず、本人曰く「旅行ビザでしか日本にいれない」と。
この辺の話はA君に理解することができず)
毎回日本に来る際は滞在期間やどこの空港から来るかなどの話を聞かず、基本受け身で連絡を待っている。

皆さんはどう思いますか? 私は──。


思わず顔のパーツも垂れ下がるハナシ、よな?

 ……上記さ、なんかおかしいな、って思うじゃん? 多分10人中9人はハァ? ってなる話だと思うの。矛盾点があってさ。わかるかな?

でも当時の私は「相手のことを信じ、相手のために身を削り、痛みを分かち合うことは素晴らしいことだね」なんて良いこと言っちゃった手前、なんかそれおかしくない? なんて言えなかったわけですよ。ね、わかるでしょ?

 ただ前述したとおりの友人から聞いた呼称がずーっと頭に響いててさ。

 友人「ほっとけよ。A君は40半ばのいいオトナだしさ、捨て猫に餌をやるような感覚で金やってんだよ。な? 百数十万なんて、その歳にもなると端金だからな」
 
 「うん──そうだよね」なんていろんな言葉と気持ちを飲み込みながら、私はA君の幸せを心から祈ることにして、見守ることにしました。

──あの日が来るまでは。


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