人の中に影を見出す
子供の頃の体験で、道を歩いていると突然大人が、わざわざ目の前に立ちふさがって怒鳴ってくることがあって、その大人は、当時ヒステリーとか精神分裂症などと呼ばれるような精神病の人のようでしたが、子供の私は、何もしていなくても、私の何かが人を刺激するんだと考えていました。小学校に上がる前から、自分の中の悪みたいなものを感じていて、隠さなければいけない何かがあるような、影ある存在になったんだと漠然と感じていたので、そのせいで人を刺激していると考えたわけです。
勝手に相手の中に影を見出すのは、影を見出す人に影があるからで、見出された側は、むしろ影を明るみ出すような性質なことの方が多いです。この人といると、自分の嫌な所がさらけ出される、あるいは自分の嫌な所を自然と話せてしまう、というような感じで、否定的でも肯定的でも、隠したいもの、隠しているけれど本当は出したいものが明るみに出ます。自分の影が濃ければ濃いほど、大きければ大きいほど、他者に対して急に攻撃的になったり、這い上がれないほど地の底に落としてやる、みたいなことをしようとするわけですが、それは自分の影に心底怯えているからです。
わりと小さい頃にそういう体験をしているので、影響を与えないように生きようとする癖が私にはあります。妙に上手に存在を消すことがあります。