死の恐怖
生後1か月くらいで、お腹が空いているわけでも、おむつが汚れているわけでもなく、眠たいのに眠れないような様子で、泣き止まなくなる時期が来ます。親からすると、何が起こっているのかわからない。赤ちゃんによっては、便秘になったり、ミルクを飲まなくなったりすることもあります。
眠たいのに眠れない、これの根底にあるのは、死への恐怖です。肉体を得て間もなく、眠ることに恐怖を抱き、眠りそうになると泣きます。なので、「きちんと起こしてあげるよ」「ちゃんと目覚めることができるよ」ということを、言葉にしてあげ、言葉にしなくても、そう理解してあげるだけで、眠れるようになります。
時間も空間もない世界には、死はありません。時間と空間のある世界で肉体を得ることで、死が生まれます。生まれたばかりの肉体に慣れない赤ちゃんは、はじめて「死」を意識します。
死に近づいていくとき、このときの恐怖を思い出します。肉体に慣れることで、すっかり忘れていた恐怖です。少しずつ眠ることに慣れ、眠ることの意味を思い出し、永遠の側に向かうことによって、死の恐怖は薄れます。死期の近い人に、周囲の人ができることがあるとするなら、親がただ理解してあげるだけで赤ちゃんが眠れるようになるように、死を深く理解する人が、ただ空間を同じにすることかもしれません。