水滴のすべて chapter four
18.もしあなたが雨ならば
死んだあと幽霊になったひかるの父は、そういえば生きていた頃、自分の名前は水星(みずほし)だったことを思い出した。
水星の意識は今は月の裏全体に広がり、そこからなぜか感じてしまう地球の妻と息子の息遣いに身を委ねていた。
そのふたりの息遣いは、時として絶望になることがあった。長く看護していた患者が死んだ時、妻の感情は黒くなり、息も重くなった。そんな時妻は、死んだ自分(水星)を思い出しているようだった。
息子のひかるも、時々、絶望に落ちることがあ