『星を詠む人 ~真夜中と蠍の日~ 10/24-11/22』
うーむ・・・
こんな時間に起きちゃうなんて。
夜は朝に向けて更に深さを増していて、
辺りにはすっかりと冷えた空気が漂っている
昔から寒さが苦手な私だから、
それはもう鎧のように上着を着込む。
窓から差し込む月の光が静かに陰を創り、
まるで真夜中の砂漠を旅する蠍さんみたいに、
ノロノロと私はキッチンへと向かう。
ふふ・・・なんだか本当に旅をしているみたい。
たまにはこんな夜更かしをしてみようかな。
コーヒーポットをコンロに掛けて、
お湯がゆっくりと沸く音に耳を傾ける。
蠍の鎧はいろんな物事からその身を守る。
今まで感じた自分の大切な宝物を、
手放さないように、
汚してしまわないように。
誰にも見えない程にしっかりと鎧で包む。
それは周りからしたら秘密ばっかりの不思議な事で、
それに鋭い針なんかあるもんだから余計に周りは近付けない。
そうやって蠍さんは砂漠を一人で歩くのだ。
トボトボと・・・サラサラと・・・
でもそれは・・・蠍さんが誰よりも信頼出来るという事で、
それこそが蠍さんの神秘的な魅力でもある。
意思を形にした尻尾の針は、
絶えず自身の向かう方向を指し示していて、
それは鋭くいつだって物事の本質を見据えている。
そしてその強い意思で、
蠍さんは重い鎧のままでも長い旅路を我慢強く進む事が出来るのだ。
さすがに私には真似出来ないなぁ・・・
でもね。
蠍さんだって長い旅路の中で、いろんな出会いを経験すると思う。
旅とはそういうものだから。
そんな時に蠍さんは、
初めは固い鎧をさらに硬くして、
鋭い針を向けてしまうかもしれない。
でもそれは蠍さんが、相手に真剣に向き合っているからで、
固い鎧の中では、実はとっても嬉しかったりするのだ。
誰にでもまっすぐな想いを向けられる蠍さんは、
いつか自分を変えられる。
硬い藍色の鎧は、いつか柔らかく色鮮やかになり、
鋭い尻尾の針は、誰かを守る為の剣にもなるのだ。
人は見掛けによらないけれど、
それは蠍さんだって同じだなぁ。
私はコンロの火を落とし、コーヒーを淹れる。
それはどこか冬の匂いがした。
星が綺麗に見える季節がまた来るね。
そうして私は星を詠む。
星を読んで、人を想うのだ。
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【星を詠む人】
読み手:深文
脚本・演出;tanakan
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