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普通の会社員がフリーランスで稼ぐ #全文公開 #はじめに
5年前に本を書きました。エンジニアやデザイナーのようなクリエイティブ職種以外の「普通の会社員」(例えば広報とかマーケティング、人事、経理などの職種の人たち)がフリーランスとして活躍するにはどうしたらいいか?そんなテーマの本です。ここ数年、副業・兼業解禁の流れもあり、フリーランスとして働きたい人はますます増えています。そんな今だからこそ、フリーランスを目指す非クリエイティブ系のみなさん(#文系フリーランス とか #ビジネス系フリーランス とも言いますね)に参考にしていただけたらと思い、noteで少しずつ内容を #全文公開 していきます。少しでもお役に立てたらうれしいです。
個人がキャリアのイニシアチブを取る時代
専門知識やスキルを生かして、組織にとらわれずに働く時間や場所、仕事量などを自由に選ぶ動きが広がっています。
私が共同経営する人材紹介会社Warisでは、「採用の時期だけ人事経験者に手伝ってほしい」「上場にあわせてIR(投資家向け広報)専門家を増やしたい」といった企業のニーズに対応し、専門知識を持ちながら家庭の事情で離職した女性を企業に紹介しています。週3日や1日6時間などの柔軟な働き方が中心です。
この事業の特徴は、派遣ではなく登録者が個人事業主となって紹介した企業と契約を結ぶ形が中心になっているということ。いわゆるフリーランスとして業務を請け負って仕事をしているのです。これまでは、フリーランスと言うとクリエイティブ系やITの業務がメインでしたが、私たちの会社の登録者の9割以上は、商品企画や広報、採用といったいわゆる「文系総合職」のキャリアを積んできた人々です。
会社に10年、15年勤めた文系総合職の女性たちは会社員時代に培った経験と専門性、人脈を武器に「雇われない生き方」を選び始めています。そして、この働き方はワーキングマザーだけに留まらず、独身女性や男性にも広がり始めています。文系総合職のフリーランス化は、今後の大きな流れになり、正社員、非正規社員と並ぶひとつの選択肢になるのではないかと感じています。
会社がキャリアを形成してくれる時代は終わった
今、働き方が大きく変わりつつあります。
「過渡期」「端境期」――さまざまな表現がされますが、いずれにしても大きな変化が生まれつつある。これだけは疑いようのない事実です。では、私たちの働き方に今、どんな「変化」が生まれつつあるのでしょうか。
その「変化」とは、本当の意味で「個人がキャリアのイニシアチブを取る時代がやってきた」ということです。
日本では長らく「会社」が個人のキャリア形成を主導する時代が続いてきました。キャリアを考えるうえで「終身雇用」が大前提でしたし、そのうえで転勤、異動、出向そのほかのキャリア上の様々な変化があくまで〝会社主導で〟引き起こされてきました。
極力、一社で長く働き続けることが「よし」とされてきましたし、個人側も特に疑問を持つこともありませんでした。会社主導で起きる様々なキャリア上の変化にうまく対応し、長く勤め続けた先に、会社側は安定した報酬、潤沢な退職金や企業年金によって個人の労力に報いてくれたわけです。
ところがこの大前提が大きく崩れつつあります。
金融機関の破たんや、誰もが知っている有名メーカーでのリストラ。
企業はグローバルな競争にさらされ、置かれている状況は激化しています。テクノロジーの進化で企業間の競争スピードも数年前とは比べ物にならないくらい速くなっています。
このような環境の中、文字通り企業は「個人のキャリアに責任を持てなく」なってきているのです。事実、大卒50代の男性社員で、部長や課長などの管理職についていない人は次第に増え、係長職などの役職も何もない“生涯ヒラ社員”の人は3割に迫ると話す識者もいるくらいです。
個人がキャリアの主導権を会社に預ける〝インセンティブ〟だった退職金制度や企業年金の在り方も変わってきています。退職金制度がそもそもない、あるいは廃止する会社が増加傾向にありますし、企業年金についても同様に支給額の減額や、制度の廃止に踏み切る会社が出てきています。
会社に自分のキャリアの主導権を数十年にわたり安心して預けることができた時代はすでに終わっています。先のことは文字通り「どうなるかわからない」のです。
このような時代において必要なことは「自分のキャリアを自分自身の手で構築する」ということです。会社が「絶対安定」とは言えない以上、5年後、10年後、自分がどうありたいのか。そのためにはキャリア上、何が必要で、今どんな経験をしておくべきなのか。自分自身の頭で考え、行動に移すことが重要です。
文系総合職にも、フリーランスの波がやってきた
とはいえ、フリーで働くということは、一般の会社員、いわゆる四年制大学を卒業して総合職として入社した人にとってはハードルの高いものでした。よほど専門性を極めた人でなければ、そもそもフリーという選択肢を考えることもなかった人がほとんどだと思います。
その理由のひとつは、職種の壁です。先ほども述べたように、これまでフリーランスで働く職種というと、デザイナーやイラストレーター、フォトグラファーなどのクリエイティブ系やシステムエンジニア、プログラマーなどのIT系がメインでした。企画を立てたり、調整したり…… がメインの文系の会社員はスキルや専門性が測りにくいため、スキルを軸にしたフリーランスには馴染みにくかったのです。
ところが、いま、文系総合職の経験やスキルを求めている企業がたくさん出てきています。詳しくは第2章で述べますが、新規事業の立ち上げや欠員補充など、期間限定、プロジェクト限定で働いてくれる、スキルのある人材を企業も止めているのです。
もうひとつの壁は、収入面や仕事の安定性など、待遇面での壁です。スキルはあっても、自分で営業して仕事をとってくることができないかもしれない。収入がぐんと減ってしまうかもしれない。そんな不安がありました。
しかし、いままで述べてきた通り、会社に勤めてさえいれば安定し、収入面も安心、という時代ではなくなりました。どんな大企業に勤務していても、明日には職を失う可能性があるのです。だったら、自分の経験を活かして……という動きが文系総合職にまで広がっているのが現状です。
「フリーエージェント宣言」する女性たち
いま、文系総合職でフリーランスとして働いている人の中には女性の活躍が目立ちます。私たちの会社の登録者も、100%女性です。そして、その多くが出産・育児と仕事を両立させるためにフリーランスを選んでいます。
では、このようなフリーランスの働き方は、ワーキングマザーが必要に迫られた結果なのでしょうか? もちろん、ここまで普及したいちばん大きな要因はそうだと思います。しかし、今まで述べてきたような組織に頼れない時代の中で、フリーランスという働き方は、今後女性だけでなく男性にも広がっていく大きな流れの1つなのだと私は思います。
Warisに登録している女性の大半は、大手メーカーやIT企業、商社での正社員としての勤務を辞め、フリーランスとして働いています。
ある人は、長時間の残業がベースとなった正社員の働き方に疑問を感じて、また、ある人は長時間労働をベースとした評価の在り方に疑問を感じて、またある人は、より自分の専門性と経験を活かしてキャリアを積むことを目指して、フリーランスとして生きる道を選びつつあります。
日経BPビジョナリー経営研究所と日経BPイノベーションICT研究所が2013年に行った調査によれば、「今から5年後に〝日本における人と仕事のつながりの総数〟は現在のほぼ2倍、1億2700万に増え、つながりの増加が日本経済に刺激を与える」という結果が出ています。つまり、一人の個人が一つの組織だけではなく、複数の企業やチームに参加して仕事をするようになり組織間の壁を越えた新しい取り組みが進むということです。
フリーエージェント宣言した文系総合職フリーランスたちが、一つの組織にとどまらず複数の組織・プロジェクトに参画してその能力や経験を発揮することになったら日本の経済・社会全体にどれほどの活気が生まれることでしょう。今まさにそんな働き方が生まれつつあります。
こうしたお話をすると「怖いですね」という方がいます。
おそらく、キャリアの組み立て方、仕事の進め方、そのすべてに個人が自己責任を負う状態を「怖い」と表現されるのでしょう。そうかもしれません。しかし、同時にいまだかつてないほど個人が自由に個々の能力を発揮して生きられる時代がきています。それはワクワクするような働き方の始まりではないでしょうか。
もちろん、フリーランスはすべての方におすすめする働き方ではありません。会社勤めが合っている人も多いと思います。まずは12ページのマインドチェックリストであなたのフリーランス適正度をチェックしてみましょう。
働くことは生きることと同意義です。
いかに働くかは、いかに生きるかということにつながります。
私たちは、自分の力でキャリアを描き、選び取れる自由を手に入れました。
あなたは、どんなふうに働きますか?
育児や介護のため、自分の時間をもっと充実させるため、家族との時間を大切にするため、働く場所や時間にとらわれず働きたい。本書では、そんなすべての方へ、現在の労働市場の状況や必要なスキルなどをお伝えしていきたいと思います。
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