![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/143879895/rectangle_large_type_2_b7f0e027f9cb2b621680f596fa32393d.jpg?width=1200)
執行役
すれ違う人が歩きタバコをしていて、病気になって死ねと思った。
体にまとわりついた煙と、まとわりついた嫌なもの。
早く払い落としたくて、全力で走って帰る。
片手にぶら下げているのは、塩化ビニールの袋に入った魂。誰かしらの魂。いや、ただの魚の魂。
その横をクラクションを鳴らしながら走っていく車あり。
猛スピードで走るその車に、轢かれたのは轢かれて当然の人だ。
そう、僕だと見間違う人。
今夜も食べたくもないご飯を奮発した。
まぁ、そのまま捨ててもいいさ別に。
明日から休日だというのに金もなく、安価な添加物料理で脳みそを満足させて終わる。
添加物にまみれた暮らし。
顔のシワは増え、脳のシワは伸びていく。
横断歩道を渡る途中で、右折車に轢かれて終わった人生。
おい、さっきの車かよ。俺は轢かれて当然の人間だったのか。
滅んでしまった絶滅危惧種。
淘汰された自分。
まぁ、どうやら手違いでレッドリストに載っていなかったようなので、私は最初から保護対象ではなかったようです。残念としか言いようはありません。
情報にまみれた暮らしで、脚は細くなるが頭はでかくなる一方。
暗闇の中で何を踏んでしまったのかもわからずに、そのまま歩いている。
ぺたぺた、ぺたぺた。
つまり裸足か。という事はこの暗闇は自室かもしれない。
足の裏は出血しているようだ。
糞尿の臭いも立ち上がってくる。
なぜかはわからない。
そのまま、行列に並んだまま、そのままで移動する。
リタイヤしたくなった人はどうぞご自由に、どうぞ。はい、ご自由にどうぞ。
横入りする人には圧力をかけましょう。
それが、この島国に生まれ育ってきた日本人のマナーというものです。
あなた達の国ではこのような光景はあまり見ないでしょう。
「なあ、いいから早くしろよ」
我先に向かいたい場所は、汚物にまみれた僕という人間の臭い。
ここは今日という日を悔やむ為の部屋であり、断末魔が響き渡る部屋。
今朝生まれた僕を、夜に殺める為の処刑場。
業務執行取締役を担ってくれたのは、20年前に笑っていた自分だった。
可愛い顔をして笑っている。
若い。
さて、私はここまでのようです。
後はよろしく頼みました。