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広告コピーをABテスト結果から最適解に寄せていく|遺伝的アルゴリズム×ChatGPT
はじめに
リスティング広告では、たった20文字程度の文章のみで消費者の心を動かします。また、バナー画像に挿入する1文・動画広告の第一声・LPのキラーフレーズなど、コピーは広告成果を大きく変えます。
この「広告のコピーを考える」という行為は、コピーライターの行う属人的なスキルですが、ChatGPTの活用でかなり近いところまで "出来てしまう" のではないかと思い、試してみました。
結論
下記を問題なく行うことができたため、実用性があると感じました。
コピーの初期案(初期集団)を作成する
コピーの組み合わせ(交叉・組み替え)を作成する
全過程をロジカルに遺伝的アルゴリズムを導入するわけではなく、人間の手を加えて実用性を担保しようとしているため、正確には「遺伝的アルゴリズムにインスパイアされた最適化方法」となっています。
コンセプトについて
遺伝的アルゴリズムを説明したいのですが、Wikipediaの解説は難しかったので、簡単にイメージをお伝えします。
『データ同士を競わせて強い弱いを評価し、最適なデータを導き出す手法』
強いデータ:他のデータと掛け合わせ、次の世代に特徴が引き継がれる
弱いデータ:掛け合わせは行わず、淘汰される(特徴を放棄する)
つまり、「広告のコピーがどれだけ成果を出したか(ABテスト)で良し悪しを比べ、良かったコピーの掛け合わせで更なる最適化を目指そう」というのがコンセプトです。
GPT4に、「遺伝的アルゴリズムで広告コピーを最適化できそう?」と聞いてみた
結論、できそうです。
全文は以下にありますので、興味があれば読んでみてください。
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ChatGPT(LLM/大規模言語モデル)と広告コピー作成は相性がいい
ChatGPTの仕組みは以下のようになっています。
大量のテキストを学習する
特定の文章や文脈において、どんな単語やフレーズが続く確率が高いかを把握する
確率に基づき適切な単語やフレーズを並べて文を生成する
この手順を繰り返すことで、ChatGPTはまるで思考しているかのような振る舞いをしています。
この過程で大量のテキストを学習するため、膨大な量の広告コピーも学習しており、「あなたはプロの広告コピーライターです」とプロンプトを与えることで、広告コピーフレーズのあるあるに則って出力してくれそうです。
言語の特徴を掛け合わせるのも向いてそう
ChatGPTは同じ文章内での出現頻度などから、単語と単語の関係を「距離」として把握しています。
例えば、遺伝的アルゴリズムのようなアプローチで2つのフレーズを交叉させる際、ChatGPTは2つのフレーズの間に自然に入るであろう単語を用いて、スムーズに文を結びつける能力が期待できそうです。
その結果、比較的高精度な交叉が可能となると思われます。
やり方 / 実践
環境:ChatGPT Plus(GPT4)使用
題材:「新潟の米」を宣伝するコピーライティング(作成/最適化)
プロンプト:
あなたはプロの広告コピーライターで、人々の購買意欲をそそるコピーを書くことを得意としています。新潟のお米を宣伝するキャッチコピーを5つ考えてください。
ChatGPTの出力:
1. 新潟の恵み、一粒一粒に宿る絶品。
2. 食卓を彩る、新潟の自慢の逸品。
3. 新潟産、日本の心を感じる米の味。
4. 食べると、新潟の大地と風を感じる。
5. 一炊のもとで、新潟の風景が広がる。
すでに、かなり良さそうですね。
ここにCVRを評価値として与えてみます。
プロンプト:
ありがとうございます。では、この中の5つのコピーにそれぞれCVR実績を付与します。 計測期間は同一・その他の外的要因によるCVRのブレは前処理により出来る限り低減させています。
「新潟の恵み、一粒一粒に宿る絶品。」:2.1%
「食卓を彩る、新潟の自慢の逸品。」:1.3%
「新潟産、日本の心を感じる米の味。」:0.6%
「食べると、新潟の大地と風を感じる。」:0.0%
「一炊のもとで、新潟の風景が広がる。」:1.7%
上記を考慮して、遺伝的アルゴリズムでキャッチコピーの交叉を行います。 相対的に効果が良かったコピーをかけ合わせ、1つの掛け合わせにつき5つのコピーを作成してください。 つまり、作成して頂くコピーの総数は、[組み合わせの数(採用コピー数の階乗個)*5]になります。
その中から、採用するものをこちらで選ぶので、これを次世代の集団としてコピーを最適化させていきましょう。
ChatGPTの出力:
CVRが2.1%、1.7%、および1.3%のコピーを元に新しいコピーを生成します。
以下のように、交叉の組み合わせを考えます:
2.1%のコピー x 1.7%のコピー
2.1%のコピー x 1.3%のコピー
1.7%のコピー x 1.3%のコピー
それぞれの組み合わせに対して、5つの新しいコピーを提案します。
1. 2.1%のコピー x 1.7%のコピー
・ 新潟の恵みと風景、一粒に宿る。
・ 新潟の恵みで、風景が広がる一炊。
・ 一粒一粒の恵み、新潟の風景を炊き上げる。
・ 新潟の恵み、一炊のもとで宿る。
・ 一粒の米に、新潟の絶品と風景を。
2. 2.1%のコピー x 1.3%のコピー
・ 新潟の恵み、食卓を彩る絶品。
・ 一粒一粒に宿る、新潟の自慢。
・ 新潟の絶品、食卓を一粒で彩る。
・ 新潟の恵み、自慢の食卓を。
・ 一粒で、新潟の自慢と絶品を宿す。
3. 1.7%のコピー x 1.3%のコピー
・ 一炊のもと、新潟の自慢を感じる。
・ 食卓を彩る、新潟の風景と恵み。
・ 新潟の風景で、自慢の一粒を。
・ 一炊で、新潟の自慢の風景が広がる。
・ 新潟の一炊、食卓の自慢となる風景。
これで、次世代として効果検証するコピーの候補が出揃いました。候補の中から「人間の感性」で検証に進めるデータを選びましょう。
理由は、先ほどGPTに答えてもらった「遺伝的アルゴリズムで広告コピーを最適化できそう?」の回答の部分にあります。
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使いたいコピーを選べたら、ChatGPTの役割は1サイクル終了です。
プロンプト:
ありがとうございます。気に入ったコピーを挙げます。
1.「一粒一粒の恵み、新潟の風景を炊き上げる。」「新潟の恵み、一炊のもとで宿る。」
2.「新潟の恵み、食卓を彩る絶品。」「新潟の恵み、自慢の食卓を。」
3.「一炊で、新潟の自慢の風景が広がる。」
このコピーを用いて再びCVR検証を行いますので、こちらの準備が出来ましたら、引き続きキャッチコピーの最適化にご協力をお願いします。
ChatGPTの出力:
もちろん、ご指定いただいたコピーでのCVR検証後、最適化のためのサポートを継続させていただきます。新たなCVRデータが得られた際には、それをお知らせください。それに基づき、さらに効果的なコピーの提案や最適化のアプローチを考えて参ります。よろしくお願い申し上げます。
選んだコピーを使って、再びCVRを測定しましょう。測定が完了したら結果をGPTに伝えて、さらに次世代のフレーズを作成していきましょう。
実践したときの全文オリジナル
以下に、遺伝的アルゴリズムを意識してキャッチフレーズを掛け合わせた際のスクリーンショットを載せておきます。
内容は上の段落と同じです。
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突然変異させてみよう
遺伝的アルゴリズムでは、定期的に突然変異と呼ばれるランダムなデータを混入させることで、遺伝子の多様性を保ちます。
「こんなアイデアを入れてみたら面白いのでは」と思えるアイデアを含めてみると、既存のフレーズが持つ特徴からは生まれない優れたコピーに化ける可能性があります。
とはいえ、広告予算は無限ではないと思いますので、実用性を担保するためランダムではなく、それなりに確信持って入れてみるのが良さそうですね笑
最適化完了のタイミング
どこまで試したら最適なコピーが作成できたか、明確な基準はありません。遺伝的アルゴリズムでは十分に世代交代を繰り返した「現世代」の中で最も強いデータを最終的な解とするようです。
結局のところ、広告運用観点ではROASを最大化することが求められますので、tROAS(達成目標)をクリアできる状態まで辿り着けば、一旦ゴールとできると思います。
まとめ
コピーライティングの手間がChatGPTで軽減し、フレームワークに基づいた最適化も運用として活用できるようになると、広告運用の業務負担が減りそうでいいですね。
しかし、これで全然効果が変わらないなんてことが、実際の運用ではよくあるんだろうな〜などとも思います。市場の動向や消費者の反応、広告の配置や設計など、さまざまな要因が影響するので…。
以上です!
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
スキを頂けると大変嬉しいです!
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