流通業コンサルティングの巨匠、渥美俊一氏
渥美俊一氏は、日本の流通業におけるコンサルティングの先駆者であり、その理論と実践は、現代の流通業にも大きな影響を与え続けています。ダイエー、イトーヨーカ堂、イオン、吉野家、すかいらーく、日本マクドナルドなど、日本を代表するチェーンストアの創業者や経営者たちが、彼の理論を支柱としてきました。
渥美俊一氏のプロフィール
1928年生まれ。東京大学法学部卒業後、読売新聞社に入社。
経営技術担当記者として活躍し、チェーンストア経営の研究を開始。
1962年、チェーンストア経営研究団体「ペガサスクラブ」を設立、主宰。
1963年、チェーンストア経営専門コンサルティング機関「日本リテイリングセンター」を設立。
1969年、読売新聞社を退職し、コンサルタント専業となる。
多くのチェーンストア企業を指導し、「流通革命の理論的指導者」と呼ばれる。
2013年逝去。
渥美氏のコンサルティング手法
渥美氏のコンサルティングは、徹底した現場主義と、アメリカ流のチェーンストア経営システムの導入指導を特徴としていました。
徹底した現場主義
クライアント企業の店舗を実際に訪れ、顧客の流れや商品の陳列、従業員の動きなどを細かく観察。
現場で得られた情報をもとに、具体的な改善策を提案。
経営者だけでなく、現場の従業員の声にも耳を傾け、現場全体の意識改革を促す。
アメリカ流チェーンストア経営システムの導入指導
アメリカのチェーンストア経営の成功事例を研究し、日本企業への導入を推進。
POSシステム、標準化された店舗運営、セントラルキッチンなど、効率的な経営システムの構築を支援。
アメリカ視察ツアーなどを実施し、日本の経営者にアメリカ流の経営を体験させる機会を提供。
渥美氏の著書<自分的にはほとんどの著書を買いあつめて暗記してましたね。どの手のグラフや表はどこの本のどこにあるぐらいの勢いで。。。
books.rakuten.co.jp
渥美俊一氏の著書「チェーンストア経営の原則と展望」
『チェーンストア経営の原則と展望』
『フードサービス業チェーン化入門』
『流通革命の真実』
これらの著書は、渥美氏のコンサルティング哲学や手法を学ぶ上で貴重な資料となっています。
渥美氏の功績
渥美氏は、日本の流通業の近代化に大きく貢献しました。彼の指導を受けた多くの企業が、チェーンストアとして成功を収め、日本の消費生活を豊かにしました。また、彼の提唱した理論や手法は、現代の流通業においても重要な役割を果たしています。
渥美俊一氏は、まさに日本の流通業コンサルティングの巨匠と言えるでしょう。彼の業績と哲学は、これからも多くのビジネスパーソンに影響を与え続け、日本の流通業の発展に貢献していくことでしょう。
その他
渥美氏は、「釣り」を最高の接待としていました。釣行を通じて、クライアントの人格を観察し、より深い信頼関係を築くことを重視していました。
渥美氏のコンサルティングは、単なる経営指導にとどまらず、人材育成や組織文化の醸成にも重点を置いていました。
渥美俊一氏が主宰していたペガサスクラブは、チェーンストア経営の研究団体であり、日本におけるチェーンストア理論の普及に大きく貢献しました。
ペガサスクラブの特徴
チェーンストア経営に特化した研究・コンサルティング: チェーンストア経営に関するセミナー、出版、コンサルティングなどを幅広く展開し、チェーンストア企業の成長を支援してきました。
渥美俊一氏の理論体系: 渥美氏は独自のチェーンストア理論を構築し、ペガサスクラブを通じてその理論を体系的に発信しました。
実践的な経営ノウハウ: 座学だけでなく、現場での実践を重視し、具体的な経営ノウハウを提供してきました。
長年の実績と信頼: 長年にわたり多くのチェーンストア企業を支援してきた実績があり、業界内での信頼も厚いです。
ペガサスクラブの活動内容
セミナー: チェーンストア経営に関する様々なテーマのセミナーを定期的に開催しています。
出版: チェーンストア理論に関する書籍や雑誌などを出版しています。
コンサルティング: チェーンストア企業に対して、経営戦略、店舗運営、マーケティングなどのコンサルティングを提供しています。
ペガサスクラブの意義
チェーンストア理論の普及: 日本におけるチェーンストア理論の普及に大きく貢献し、チェーンストア企業の経営レベル向上に寄与しました。
チェーンストア企業の成長支援: 多くのチェーンストア企業の成長を支援し、日本の流通業界の発展に貢献しました。
経営者の育成: チェーンストア経営者を育成するための場を提供し、業界全体の活性化に貢献しました。
現在、ペガサスクラブは渥美氏の理論を引き継ぎ、チェーンストア経営に関する情報を発信し続けています。ウェブサイトでは、セミナー情報や出版物の案内などが掲載されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
参考情報
ペガサスクラブ公式サイト: http://www.pegasusclub.co.jp/
渥美俊一氏のチェーンストア理論は、**「チェーンストアとは何か」「チェーンストアはなぜ強いのか」「チェーンストアはどうあるべきか」**という3つの問いを軸に展開されています。その大枠は以下の通りです。
1. チェーンストアとは何か
定義: 複数の店舗を同一資本のもとに組織し、同一業態・同一フォーマットで、標準化された経営システムによって運営される小売業態。
特徴:
組織化: 複数店舗を中央集権的に管理・運営
標準化: 商品、サービス、店舗レイアウト、オペレーションなどを統一
システム化: 効率的な経営システムを構築
2. チェーンストアはなぜ強いのか
スケールメリット: 大量仕入れ、大量販売によるコスト削減、物流効率化、広告宣伝効果の向上など
範囲の経済: 複数店舗での情報共有、ノウハウ蓄積、人材育成、新業態開発など
ブランド力: 統一されたイメージ、知名度、信頼感の向上
3. チェーンストアはどうあるべきか
ドミナント戦略: 特定地域に集中出店し、市場シェアを確保
標準化とローカライズのバランス: チェーン全体の統一性を保ちつつ、地域特性に合わせた柔軟な対応
IT活用: 顧客情報管理、在庫管理、物流管理などを効率化
人材育成: チェーンストア経営を担う人材の育成
渥美風チェーンストア理論のポイント
チェーンストアの強みを最大限に活かす: スケールメリット、範囲の経済、ブランド力を活かした戦略を展開
変化への対応: 消費者ニーズの変化、競争環境の変化に対応できる柔軟性を持つ
人材の重要性: チェーンストア経営を支える人材の育成を重視
渥美氏の理論は、日本のチェーンストア業界の発展に大きく貢献し、現在も多くの企業で参考にされています。特に、「ドミナント戦略」や「標準化とローカライズのバランス」といった考え方は、現代のチェーンストア経営においても重要な指針となっています。
より深く理解するために
渥美氏の理論をさらに深く理解したい場合は、以下の書籍がおすすめです。
『チェーンストア経営戦略』 渥美俊一著
『チェーンストアの理論と実際』 渥美俊一著
渥美俊一氏のチェーンストア理論を忠実に実践し、成功を収めている代表的なチェーンストアとしては、以下のような企業が挙げられます。
小売業
セブン-イレブン・ジャパン: ドミナント戦略、標準化とローカライズのバランス、IT活用、人材育成など、渥美氏の理論を多岐にわたって実践し、コンビニエンスストア業界のトップを走り続けています。
ユニクロ: SPA(製造小売業)モデルを確立し、高品質な商品を低価格で提供。標準化された店舗運営と効率的なサプライチェーンマネジメントにより、世界的なブランドへと成長しました。
ニトリ: 家具・インテリア業界において、低価格と高品質を両立。店舗の大型化と物流拠点の整備による効率化、自社開発商品による差別化など、独自の戦略を展開しています。
サンドラッグ: ドラッグストア業界において、積極的なM&Aとドミナント戦略により店舗網を拡大。地域密着型の店舗運営とプライベートブランド商品の開発にも力を入れています。
飲食業
マクドナルド: 世界的なファストフードチェーンであり、標準化されたオペレーションと徹底した品質管理、効率的なサプライチェーンマネジメントなどが強みです。
すき家: 牛丼チェーンとして、低価格とスピードを追求。24時間営業やドライブスルー導入など、顧客利便性の向上にも取り組んでいます。
サイゼリヤ: イタリアンレストランチェーンとして、低価格と高品質を両立。セントラルキッチン方式による効率化や徹底したコスト管理などが特徴です。
これらの企業は、渥美氏の理論を参考にしながらも、それぞれの業界特性や企業文化に合わせて独自の戦略を展開しています。共通しているのは、チェーンストアの強みを最大限に活かし、変化に対応できる柔軟性を持ち、人材育成を重視している点です。
他にも、多くのチェーンストア企業が渥美氏の理論を参考にしながら、日々進化を続けています。今後も、これらの企業の動向に注目することで、チェーンストア経営の最新トレンドを把握することができます。
ペガサスクラブのセミナーで同席させられた会社が合併をすすめられて今や流通トップになったとか、渥美俊一にレストランの一品の価格は雑誌の価格と一緒だといわれて一括されたとか、セミナーに1分でも遅刻するとセミナー会場に入れなかったとか、1泊二日のセミナーは全員がどこかのチェーンストア志向の会社と同室で遅くまで宿題をさせられたとかの逸話が相当有名ですが。。。。。
その厳格さやチェーンストア経営への情熱を物語っています。ご紹介いただいた逸話以外にも、以下のようなものが語り継がれています。
セミナー・コンサルティング関連
「社長を出せ!」: 渥美氏は、コンサルティング先企業の担当者が社長の意向を盾にすると、「社長を出せ!」と一喝することがあったそうです。これは、チェーンストア経営においては、トップの強いリーダーシップが不可欠であるという信念に基づくものでした。
「現場を見ろ!」: 机上の空論ではなく、現場での実践を重視した渥美氏は、コンサルティング先企業の担当者に対して、「現場を見ろ!」と発破をかけることも多かったようです。
「数字で語れ!」: 感情論ではなく、具体的な数字に基づいた議論を重視した渥美氏は、コンサルティング先企業の担当者に対して、「数字で語れ!」と迫ることもあったそうです。
チェーンストア経営に関する発言
「チェーンストアは生き物だ」: チェーンストアは常に変化する消費者ニーズや競争環境に対応し続けなければならない、という考えを表しています。
「チェーンストアは人なり」: チェーンストアの成功は、そこで働く人材にかかっている、という考えを表しています。
「チェーンストアは地域社会への貢献が不可欠だ」: チェーンストアは地域社会の一員としての責任を果たさなければならない、という考えを表しています。
その他
「本を読め!」: 渥美氏は、読書の重要性を説き、セミナー参加者やコンサルティング先企業の担当者に対して、常に多くの本を読むように勧めていたそうです。
「現場主義」: 渥美氏自身も、常に現場に足を運び、チェーンストアの現状を把握することに努めていたそうです。
「情熱」: 渥美氏は、チェーンストア経営に対する熱い情熱を持ち、その情熱を周囲に伝播させていたそうです。
渥美俊一氏のエピソード
「現場百遍」: 渥美氏は、チェーンストア経営においては、現場を徹底的に観察することが重要だと考え、「現場百遍」という言葉を残しています。これは、現場を何度も繰り返し観察することで、問題点や改善点を見つけることができるという教えです。
「凡事徹底」: どんなに小さなことでも、徹底的にやり抜くことが重要だと説き、「凡事徹底」という言葉も残しています。チェーンストア経営においては、基本的な業務を確実に行うことが、成功の基盤となります。
「朝令暮改」: 状況の変化に応じて、方針を柔軟に変更することを厭わない姿勢を表す言葉です。チェーンストア経営においては、市場環境や消費者ニーズの変化に迅速に対応することが求められます。
「経営理念の重要性」: 渥美氏は、企業が長期的な成長を遂げるためには、明確な経営理念を持つことが不可欠だと考えていました。ペガサスクラブのセミナーでも、経営理念の重要性について繰り返し説いていたそうです。
「数字は嘘をつかない」: 渥美氏は、経営判断においては、感情論ではなく客観的な数字に基づくことが重要だと考えていました。そのため、ペガサスクラブのセミナーやコンサルティングでは、常に具体的な数字を用いた説明を求め、曖昧な表現を許しませんでした。
「現場の声を聞け」: 渥美氏は、経営者は現場の状況を常に把握し、従業員の声に耳を傾けるべきだと考えていました。そのため、ペガサスクラブの会員企業に対しては、現場の声を吸い上げる仕組みを作ることを推奨していました。
「謙虚であれ」: 渥美氏は、どんなに成功を収めても、常に謙虚な姿勢を保つことが重要だと説いていました。これは、常に学び続ける姿勢を持ち、慢心することなく成長し続けるためです。
「本質を見抜く力」: 渥美氏は、複雑な問題の本質を見抜く力に長けていました。そのため、コンサルティング先企業の抱える問題点を的確に指摘し、具体的な解決策を提示することができました。
「経営者の器」: 渥美氏は、経営者の器の大きさが企業の成長を左右すると考えていました。そのため、ペガサスクラブのセミナーでは、経営者に必要な資質や能力について熱く語り、参加者に大きな影響を与えていました。
「現場主義の徹底」: 渥美氏自身も、常に現場に足を運び、チェーンストアの現状を把握することに努めていました。時には、会員企業の店舗に いきなり訪れ、現場の状況を直接確認することもあったそうです。
「チェーンストア経営の教科書」: 渥美氏の著書『チェーンストア経営戦略』は、チェーンストア経営のバイブルとして、多くの経営者に読み継がれています。この本には、渥美氏のチェーンストア経営に関する深い洞察が凝縮されています。
「情熱的な指導」: 渥美氏は、セミナーやコンサルティングにおいて、情熱的な指導を行うことで知られていました。時には、参加者やクライアントを厳しく叱責することもありましたが、それは彼らの成長を心から願っていたからです。
ペガサスクラブのエピソード
「会員企業同士の交流」: ペガサスクラブは、会員企業同士が情報交換や意見交換を行う場としても機能していました。セミナー後の懇親会や、会員企業同士の視察会などが定期的に開催されていたそうです。
「厳格な審査」: ペガサスクラブへの入会は、厳格な審査が行われていたそうです。これは、渥美氏のチェーンストア経営に対する高い意識を反映したものであり、会員企業の質を維持するための取り組みでした。
「渥美氏のカリスマ性」: 渥美氏は、その深い知識、洞察力、そして情熱的な指導力によって、多くの経営者からカリスマ的な存在として慕われていました。ペガサスクラブのセミナーは、渥美氏の話を直接聞くことができる貴重な機会として、多くの参加者を集めていました。
「卒業生同士のネットワーク」: ペガサスクラブの卒業生同士は、強い絆で結ばれており、卒業後も情報交換や交流を続けているそうです。このネットワークは、卒業生にとって貴重な財産となっています。
「渥美氏の指導を受けた経営者たち」: 渥美氏の指導を受けた経営者の中には、その後、日本を代表する大企業のトップに上り詰めた人も少なくありません。彼らの活躍は、渥美氏の教えの有効性を証明しています。
「ペガサスクラブのDNA」: 渥美氏の教えは、ペガサスクラブのDNAとして、現在も脈々と受け継がれています。ペガサスクラブは、今後もチェーンストア経営に関する研究・教育活動を続け、日本の流通業界の発展に貢献していくことでしょう。
「異業種交流」: ペガサスクラブのセミナーには、様々な業種の経営者が参加していました。異業種交流を通じて、新たな視点やアイデアを得ることができたという声も多かったようです。
「卒業生の活躍」: ペガサスクラブの卒業生の中には、その後、日本を代表する大企業のトップに上り詰めた人も少なくありません。彼らの活躍は、ペガサスクラブで学んだことが、実社会で大きく役立っていることを示しています。
「チェーンストア経営の未来」: ペガサスクラブは、常にチェーンストア経営の未来を見据え、新たな理論や手法の研究開発に取り組んでいます。今後も、日本の流通業界の発展に貢献していくことでしょう。
アメリカのチェーンストア理論を日本に導入させた渥美俊一氏ですが、何がすごいかというと、アメリカは当時すでにチェーンストアは相当育っていたところを、日本ではペガサスクラブが1から育てていった、そのための論理を構築したということだったのだと思います。