好き≠信頼

同じ敷地内にあるシェアハウス別棟から笑い声が聞こえる。話し声、食器の音、複数人で夕食を食べているようだ。

シェアハウスで一緒に暮らすのは、まだわかる。
一緒に住んでいても、出ていくこともあれば、新しい人が入ることもあって、それぞれがそれぞれに生きている時間の中で、今このときを一緒に過ごしているって感じ。線と線が交わって、またそれぞれに散っていく。

それでいいじゃないか、と思う。
なのに人は結婚する。
結婚ってなに？
一緒に暮らすのには、結婚は必要ない。
好きなのには、結婚は必要ない。
だけど結婚する人たちがいる。

約束と言った人もいた。
じゃあ、約束でいいじゃないかと思うのに、約束じゃダメなようだ。約束にわざわざ「結婚」という名前をつけて、特別な約束に仕立て上げる。
なぜ？
結婚は特別なことなのか？

好き、までは理解できる。好き自体は理解できていないけれど、人は人を好きになるのだということはわかる。いや、正確には人を好きになる人たちがいる。好きにならない人たちもいるから。
好きだから一緒にいたい。ここから理解が怪しくなる。
好き、と、一緒にいる、を＝で結ぶのはなぜ？　好きは好き、一緒にいたいはいたい、じゃないの？　好きじゃなければ一緒にいたいとは思わないの？

私なりの「好き」な人よりも、嫌いじゃないけど信頼できる人の方がまだ一緒にいたい。
好きだから信頼できるわけじゃない。好きと信頼は＝じゃない。
信頼できるけれど、大大大大大大大好きではない人の方が、好きな人よりは一緒にいたい。
私の最優先事項は「信頼できる人」だから。「好きな人」ではない。

他の人たちは、好きだから信頼できる、もしくは信頼できるから好きになる、のだろうか。
好き、と、信頼、は別物。
果てしない信頼をおいた人のことは大好きだったけれど、好き度でいえば最上級に好きな人は別にいた。でも、最上級に好きな人のことは信頼したいと思ったけれど信頼できるとは思えなかった。ちなみに、このふたりは同時期に存在している。
この経験から、好きと信頼は別であり、私にとってなにより最も重要なのは信頼できるかどうかであると気づいた。

信頼と好きが同時に存在する人物と出会ったから、人は結婚をするのだろうか。
でもよく聞く。好きだけど、結婚してくれないなら別れる、って。
好きで信頼もしているのに、結婚できない人とは一緒にいたくない。いや、好きで信頼していて一緒にいたい人だけど、結婚という約束をしてくれない人のことは好きじゃなくなるし、信頼できないし、一緒にもいたくない、ってこと？

わお、結婚は好きよりも、信頼よりも、一緒にいることよりも、最重要事項ということなんだ。
じゃあ、結婚は好きな人としなくてもよくない？　信頼できる人じゃなくても、一緒にいたい人じゃなくても、ただ結婚してくれる人とすればいいのでは？
結婚をした同士が出会うお見合いやお見合いパーティーで相手を探せばいい。というか、結婚をしたいのであれば、結婚をしたいと言う人なら誰でもいいのでは？

好きな人とずっとお互いを好きで、信頼して、一緒にいようね、が求める結婚なのだろう。ずっとずっと好きでいて、ずっとずっと信頼させて、ずっとずっと一緒にいて。その願いを「守るよ」と約束するのが結婚。
ずっと、っていつまで？
10年、20年、同じ人を好きでいられる？信頼できる？一緒にいたいと思う？約束を守れると思う？

今このときと同じ状況が続くのであれば、可能性は無きにしもあらず。
だけど、状況は秒単位で変わる。明日のことはわからない。なのに、ずっと変わらないと約束するのは無謀じゃないのか？
そして、たとえ好きや信頼が続いたとしても、より好きだったり、より信頼できるだったりする人と出会うかもしれない。それを「出会わないです」って言い切れるの？

言い切れるから、これだけ多くの人が結婚してるのだろう。
すごい。
好きで信頼できると思える人と出会い、向こうも同じように好きで信頼できると思ってくれて、一緒にいたいと思い、向こうも一緒にいたいと思ってくれて、それをずっと変わらないと約束して欲しいと思ったら、向こうも約束するから約束して、って言ってした人たちが120万人（60万組）いたってか。（2019年の婚姻数）
すごいとしか言いようがない。

だけど、やっぱりわからない。
なぜ結婚という選択をしたのか。結婚じゃないとダメな理由がなんなのか。
そして、好きと信頼と一緒にいたいを同梱できる人がいるとは思えない。そんな人に出会えるとは思えない。ずっと変わらないと約束はできない。
いやまず、誰かと一緒にいたいとは思わない。
そっか。
だから私は結婚してないし、10歳のときから人生の選択肢に結婚はなかったのだ。今は結婚したいけれど。まあ一般的な結婚とは意味が違うが。

好きは難しい。結婚も難しい。
理解できないことがたくさんある。