自主企画、終了
短いようで長い1週間だった。くたびれた。歳をとると時間は早く進んでいくけれど、やることいっぱいだと長く感じるのだな。
今年のRENEWが終わった。毎秋開催される、福井県のものづくりを主要産業とする鯖江市、越前市、越前町を舞台とした産業観光イベントである。
越前漆器、越前和紙、越前焼、越前打刃物、越前箪笥、眼鏡、繊維。福井県は越前国で、その名を冠した伝統工芸と古くから福井を支えた眼鏡と繊維、それらの工房や工場の見学ができる。
毎年数万人が訪れる、一大イベントだ。
うちのシェアハウスの住人にはその事務局で働いたり、ボランティアスタッフだったりがいる。過去にスタッフをしていた人やRENEWきっかけで移住してきた人も何人もいる。
その中で誰よりも熱量も興味関心もないのが私である。みんながなぜあんなに熱狂しているのか、さっぱりわからない。挙句の果てには、疑問さえ抱いている。
その疑問が突き動かしたのかもしれない。今回、RENEW乗っかりちゃっかり自主企画を打ってみた。
題して「福祉 × 伝統工芸 光道園のぞみ焼工房 展示&販売」。障害者施設で伝統工芸である越前焼をつくっている工房の作品を展示販売をしてみた。
昨年12月、当時バイトをしていた編集プロダクションでおつかいに出された。1月号に掲載する干支の置物を取りに行った。それが光道園だった。
受け取りだけだと思っていたら、先方は取材だと勘違いしたのだろう、施設内を話しながら案内してくれた。
そのときの施設の人のもっと知ってもらいたいという熱意が記憶に焼き付いた。
2週間くらい前、RENEWのメイン会場近くにあるカフェで間借りしないかという話が、シェアハウスのグループLINEに流れてきた。お惣菜屋としてタコライス出したい、とも思ったのだが、自分の中のルールに縛られて断念。
そしてまったく知り合いでもない、あれ以来何のつながりもない光道園に連絡を入れた。
軒先に長テーブルを出し、30個ほどの作品を並べる。型にシチューくらいの粘度にした土を入れ、乾燥させてから型を外し焼成。この鋳込みという手法で、年間約15,000個を生産しているという。
越前焼は六古窯のひとつ。そう呼ばれるようになる以前には、陶器だけでなく磁器も生産していたそうだ。
光道園では、細工の細かい干支の置物などは磁器の粘土、それ以外の食器や花びんなどは陶器の粘土を使用している。
工房を担当する人は、陶芸家として活動していた人。外部スタッフとしてかかわるうち、いつのまにか職員になっていたそうた。今も個人での創作活動をやめてないものの、忙しくてなかなか手が回らないと言う。
作家としての活動をセーブするくらいに、のぞみ焼工房にかける思いは強い。
たった2週間、実質10日ほどの準備期間で展示販売を行うことになった。
職員の方は「ひとりでも多くの方に知ってもらいたい」と言う。それを実現させるためにどうしたらいいのか。
きっかけになればと思って声はかけたものの、本当に足を止める人がいるのか不安だった。悩んだ私は、いつものバーで気持ちを吐露した。
「どっちつかずだとよくない。販売するならするで、どんなでもいいからKPIを決めてやった方がいい」
けちょんけちょんに腐されると思いきや、背中を押してくれた。目標決めて、やれるだけやろう。
少しでも目を引くようにとアイキャッチ画像と、活動の内容を簡単にまとめた写真付きの記事を作成。家のプリンターではきれいに印刷できないので、コンビニプリントを利用し、くっきりはっきりした印刷物をつくった。
事前打ち合わせでは軒先と室内、2か所で展示と販売をさせてもらうはずだったのに、前日に室内展示は却下された。そして当日、現地へ着くと使用できるはずだった長テーブルとテントが使用できなかったりと、トラブルの連続。歯噛みし、心が折れそうになった。
でもイベント出店に慣れた職員の方は、自前の長テーブルを持参。雨予報の中、テントがなくてもいやな顔をせずに、小さな軒先で展示販売をしてくれた。
私のつくったアイキャッチや記事は、はたしてどれだけの効果があっただろうか。見てくれる人もいたけれど、それよりも職員の方の丁寧な接客が人を引き留めた。
ただ「かわいい」というだけで買ってくれる人たち、日本語など読めないであろう外国人が複数買いしてくれる。
障害者がつくったものだから。そんな冠を外して、ただの越前焼として、ただのものとして買ってもらいたい。私と職員の人の共通の願いが叶った瞬間。
今日は雨で途中で終えるしかなかったけれど、2日通して足を止めてくれた人は30組くらい。売れたのは16〜7個、約1万円。
私が定めたKPIは2日で10個、5,000円だった。時間を短縮したけれど、目標は超えた。
結局は自己満足にすぎなかったのかもしれない。数字的にも、私のKPIは超えたけれど職員の方はもっと見込んでいたかもしれない。
もっと何かできたのではないか。私の宣伝で訪れた人はひとりもおらず、自分の人望のなさを思い知らされた。日頃の行い、ここに極まれり。
それでも、やってよかったと思う。
誰ひとり足を止めてくれない可能性もあった。自分の力でお客は呼べなかったけれど、通りすぎる人に声をかけ、足を止めてもらえた。
それもこれも目標を決めたから。数字を達成するためには、人見知りだ対人恐怖症だは封印し、必死に声をかけた。
小さな数字だけれど、それを実現することの難しさたるや。それを達成した安堵感たるや。ありがとう、いつもアドバイスしてくれて。大好きな友だちに感謝。
この先、また同じことをするかと問われたら、わからない。でも何かかかわれることがあればいいなと思う。
今度はもっとよい方法を見つけたい。そのためにも自分の力をもっとつけたい。
でもまずはちょっと休もう。疲れちゃった。
圧倒的に熱量が足りてない私の、初めての自分発企画が終わった。