ちばてつや「あしたのジョー」マンガ感想文
実はよく知らないマンガだった。
よく見ると、55年前のマンガになる。
読んだことがないのに、読んだつもりになっている。
矢吹丈、力石徹、丹下段平という名前も、泪橋という交差点が明治通りにあることも、名言だってラストシーンだって知ってはいるのに、あらすじはよく知らない。
改めて読んでみた感想としては、全12巻のうち5巻終盤までの第一部がおもしろい。
矢吹丈と力石徹との対戦となる
力石のストイックさ、減量のすさまじさ。
その死で第一部が終わる。
どうしてボクシングのマンガというのは、結末が予想ついたとしてもおもしろいのだろう。
第二部は、5巻の終わりからはじまる。
高森朝雄こと、梶原一騎の世界が爆発していく。
異次元の怪奇ボクサーも登場。
ジョーと段平がセレブレティーに。
「あれ、なんかちがうな」という中弛みがあるうちに、完結の12巻のラストでザワザワした感動がある。
マンガ感想文は難しい
“ マンガ感想文 “ は書くのが難しいと知った。
本だと、ある程度は目線は整理されて固定している。
が、マンガだと目線や場面が入り乱れる。
慣れてないだけかもしれないけど、一文があちこち飛んでしまってしっくりこない。
簡単なあらすじにすれば5行ほどで終わる。
「ちょっと物足りないな」と付け足すと、今度は長くなる。
本当は全12巻を、5000文字程度の “ マンガ感想文 “ としてまとめたかったけど、どうやっても5巻の終わりの第二部までしか収まらなかった。
あしたのジョー ネタバレあらすじ
1巻
■ 矢吹丈と丹下段平の出会い
“ 泪橋 ” という橋がかかる東京の片隅の街、としか描かれてない。
川の向こうとこちらでは人々の生活がちがう。
矢吹丈は、肩にバッグひとつ抱えて、泪橋を渡ってきた。
ドヤ街と呼ばれるこの地域で、すぐに地元の不良とケンカをはじまる。
それを目にした丹下段平は、ボクシングの才能があると見込む。
元ボクサーの、無職の酔っ払いの太っちょだ。
少し見込みがあると誰にもボクシングをすすめるので「拳キチ」とあだ名されている。
しかし今回は本気のようだ。
ジョーを養い、ボクシングの練習に専念させるため、道路の工事現場で日雇いもやった。
一方のジョーは、ボクシングなど興味を持たない。
手下にした街の不良連中と盗品を売りさばき、その金を元手にパチンコのゴトをする。
新聞記者に嘘の取材させて、読者からの寄付金の100万円を集めて金勘定をしている。
それが詐欺事件となり警察に逮捕。
取調べの際には、孤児の15歳らしいとも明かされもする。
■ 力石徹の登場
家庭裁判所の判決は、東光特等少年院に送致。
期間は最低1年1ヶ月。
鉄条網に囲まれた少年院では「キヒヒイッ」と笑う不気味な連中がいた。
さっそく房内で乱闘となり、周囲は敵となる。
農場作業へ出ると、養豚場で素手で堆肥拾いをさせられた。
すると豚は暴れて柵を破り、集団で猛進をはじめる。
ここから脱走しようと、ジョーが殴りつけたのだ。
豚の集団で院の入り口を突破しようと、1頭にまたがり、威勢よく声を出す。
その前方に、不敵な笑みで現れたのが力石徹だ。
力石徹の詳細は不明。
なぜ少年院にいるのかも不明。
年齢も不明だが、ジョーよりも大人びていて、年上のようでもある。
とにかくも力石は、突進してくる豚の群れにフットワークで素早く入り込み、1頭1頭を交わしながらストレートを放った。
豚とジョーは空中に舞った。
■ 打倒力石
すでに、力石は実力あるボクサーだったのだ。
模範の収容者と評価される行為でもあった。
「 自由を奪われるのは我慢ならねえが・・・
負けるってことは、もっと我慢がならねぇ・・・ 」
懲罰の独房の中でジョーはつぶやく。
手元にはハガキが何枚かある。
ボクシングの練習を促す段平からだった。
「 あしたに向かって、打つべし! 」
ハガキの文言を口にしながら、ジョーは拳を打ち出した。
段平には文才がある気がする。
小太りでハゲて腹巻などしているくせに、いちいち文言が渋い。
2巻
■ 白木葉子がすべてを動かす
「 そのなんとか葉子って女がよう・・・、とんだミスキャストだ 」
白木葉子が、さらにジョーと力石が揉めた発端だった。
白木財閥の令嬢で、白木ボクシングジムのオーナーが祖父でもある彼女が、学生慰問団のリーダーとして少年院に訪れたときだった。
お嬢様気質で、なにかと命令口調だったので、ジョーが悪態をついたのだ。
それを咎めたのが、力石だった。
白木ボクシングジムに所属しており、有望なボクサーとして、全面的に後援もされている。
白木葉子が、2人の決着をボクシングでつけようと差配した。
少年院に多額の寄付もしている白木財閥の力学をつかい、更生を名目にして、院長も教官たちも動かしたのだ。
騒ぎにまぎれるようにして、段平もボクシングのトレーナーとして少年院へ出入りする。
■ クロスカウンターの炸裂
少年院には野外リングが特設された。
ゴングが鳴る。
炎天下のリング。
ジョー、劣勢。
2ラウンドには、力石からは、とどめを刺すストレートが放たれた。
が、クロスカウンターが決まった。
両者の腕が交差して、ミシ・・・という音とともにグローブが頬に食い込む。
クロスカウンターなど教わってもないのに、天性の感覚で放たれたのだ。
ダブルノックダウンのドローとなる。
この試合のあと、院内ではボクシング熱が高まる。
トーナメント試合が開催されるに至るが、すべては白木葉子の手の平の上で事が運んでいるようでもある。
3巻
■ 力石はボクシング界に復帰する
ジョーの弱点は防御だった。
「 平凡なコーチでも10人のファイター(攻撃型選手)をつくれるが、よほど有能でなければ1人のテクニシャン(防御型選手)はつくれない 」
防御を基本とするボクシングを教えようと焦る段平だったが、まったく覚えようとしない。
それでも見よう見まねで防御をして、トーナメント戦を勝利していく。
力石との再度の対戦が決まるかに見えた。
が、力石は先に出所。
ほどなくして、復帰初戦をKO勝利。
その活躍を院内で知るジョーは、さらにボクシングの練習に打ち込む。
■ 泪橋に『丹下拳闘クラブ』が誕生した
やがて、ジョーも出所。
身元引受人の段平と、ドヤ街に戻ったジョーは驚く。
泪橋の下には『丹下拳闘クラブ』が設立されていた。
バラックではあるが、看板は立派だ。
段平はおもむろにいう。
「 なぁ、ジョーよ・・・
2人で苦しみ、2人で歯を食いしばって
この泪橋を逆に渡っていこう・・・ 」
その晩からは『丹下拳闘クラブ』で寝起きして、昼は働いて夜は練習する日々がはじまる。
■ 丹下段平の失態
間もなく『丹下拳闘クラブ』は暗礁に乗り上げる。
日本ボクシングコミッショナーからのライセンスが『丹下拳闘クラブ』に交付されない。
試合が組めないのだった。
また段平だ。
今までの素行がわるすぎたのだ。
ショックを受けた段平は酒を飲み、もともとが酒癖がわるいので、そのうちに暴れて警察に逮捕されて留置というダメっぷりを披露する。
ジョーが警察に駆けつけたとき。
ハイヒールをコツッとさせて、また白木葉子が現れた。
しょんぼりしている小汚い段平を連れている。
身元引受人となったという白木葉子は、当然のようにして、ジョーの白木ボクシングジムへの移籍を提案する。
『丹下拳闘クラブ』は消滅するが、段平も専属コーチとして移る。
即、断るジョーだった。
同じジムの力石とは戦えなくなるからだった。
泪橋に帰ってからは、これからどうすればいいのか頭を抱える情けない段平の姿があった。
「 橋がなければ 橋をかければいいんだ!俺たちの手でよ! 」
ジョーは打つ手があると、単身で水道橋の後楽園ホールに向かう。
4巻
■ 矢吹丈、ウルフ金串と対立する
後楽園ホールでは、試合を終えたウルフ金串を挑発しているジョーがいた。
ライセンス交付を強く反対しているのは『アジア拳闘クラブ』の大高会長。
そこに所属しているのがウルフ金串だった。
殴りかかるウルフ金串だったが、ジョーが放ったクロスカウンターで相打ちとなる。
ミシッ・・・と拳が頬に食い込んだ。
居合わせた記者たちは写真を撮り、翌日のスポーツ新聞に大きく載った。
ジョーの作戦は成功した。
『丹下拳闘クラブ』にライセンス交付がされないのは、大高会長の私利私欲が発端だという記事になったのだ。
コミッショナーからはライセンス交付がされた。
このとき。
目をキラキラ輝かせている段平が、妙に気持ちわるい。
■ 矢吹丈、プロテストに不合格
しかしジョーは。
プロテストに不合格になる。
豪邸の居間にいる白木葉子は、スポーツ新聞でおもしろおかしく書かれたプロテスト不合格を知り、その素質を疑う。
が、ソファーに座る力石は静かにいう。
「 テストなどという、枠からはみ出してしまう八方破りなとこに戦慄を感じるんです 」
復帰初戦から勝利を重ねる力石は、日本フェザー級ランキング入りが目前ではある。
「 もう、目と鼻の先のところに迫ってきてるんですよ、彼は・・・ 」
深刻な表情だ。
飛び出すようにしてジムに向かったのだった。
■ 無敵のクロスカウンター
なんのかんのジョーはプロテストに合格。
デビュー戦となる。
「 やるぜよ、おっちゃん! 」
そう、つぶやいてリングに上がると、観客席からは思いがけない声援が飛ぶ。
スポーツ紙では話題となっていたのだ。
ブサイクな段平は立ちすくむが、ジョーは愛嬌よく手を振って応える。
結果は1ラウンドKO勝ち。
またクロスカウンターが放たれた。
相変わらず防御は弱いが、驚異的に打たれ強い。
顔面血だらけになりながらも、リングの上から声援に応えている。
観客席では、それらをカッカしながらウルフ金串が見ている。
静かに見ている力石もいる。
それからも、ジョーのクロスカウンターはとまらない。
5連勝したころ、ウルフ金串から試合の申し入れをされた。
「 た、ただごとじゃねぇ・・・、やっぱり、あのウルフの青白く燃えていた目は、ただごとではねえんだ・・・ 」
段平はガタガタと震える。
この前にも後にも、なにかあるたびに段平は震えている。
■ 矢吹丈 vs. ウルフ金串
とにかく試合当日になった。
後楽園ホールでゴングが鳴る。
緒戦では、打ち合わずに探り合う2人。
観戦席の力石がつぶやく。
「 なにかある・・・
やっぱりなにかある・・・ 」
2ラウンドでは、お互いに近づいて連打したとき。
ウルフ金串の目が、クワッと見開いた。
その瞬間、秘密特訓していた “ クロスカウンターやぶり ” が決まったのだ。
ミシッ・・・とグローブが頬に食い込んだ。
ダウンしたジョーは、カウントをとられている。
力石はリングサイドまで駆け寄り怒鳴る。
「 ジョー!立て!この力石徹と決着をしないうちに、このまま消える気かぁ~! 」
かじろうをしてというようにカウントナイン立ち上がったが、さらにジャブ、ストレートと打たれ続けて出血。
ウルフ金串、優勢。
3ラウンドには、ウルフ金串は勝負をつけようと、距離を縮めて連打を浴びせる。
追い詰められたジョーだったが、クロスカウンターやぶりをさらにやぶる、つまりは “ トリプルクロスカウンター ” を放ったのだ。
肉を切らせて骨を絶つ。
逆転KO勝利だ。
「 本物だった・・・
本物だった、本物だったぁっっっ! 」
力石は狂ったように叫んだ。
リングから降りたジョーに駆け寄った。
「 おれの姿が見えるか!
おれの声が聞こえるか!
ジョー!
次は・・・、いよいよ次は、おれの番だ!」
両者は堅く握手をする。
観客席には、白木葉子とオーナーも同席していたが、そんな力石の姿を見つめているだけだった。
■ 力石の減量
フェザー級の体格の力石だった。
ジョーがいるバンタム級までウエイトを落とすために、トレーニングをしながらの減量をはじめた。
痩せ細り、目が落ちくぼんでいく。
白木葉子は戦う意義を問いただす。
多少、ヒステリック気味に。
力石は静かに答えた。
「 ふふふ・・、どだい我ながら馬鹿げたことだと思っているんだから、言い分なんてありませんや・・・、あまりそう、詰め寄らんでください・・・ 」
力石が居住している白木邸の大きなテーブルには、豪華な食事が並ぶ。
が、それらの皿に手をつけずに、リンゴ1つにかぶりつく。
オーナーは食事の手を止めて、対戦をやめるように説得する。
「 おれは・・・、近代設備で日本一を誇る白木ジムの誘いを蹴り、橋の下のオンボロジムで旗をあげて、のし上がってきた男と戦うのですよ、これぐらいのことが苦になるようでは負けたも同然です 」
その晩から白木邸を出て、ジムの物置で寝泊まりする。
ジムに居残っていた練習生には、物置の鍵が渡された。
「 空腹よりもかわきのほうが耐えがたい・・・、夜中に誘惑に負けて部屋を飛び出し、水道の蛇口にかじりつかんようにするためだ。たのむぞ、鍵を! 」
目だけはランランと輝いている。
練習生は震え上がったが、鍵はガチャリとかけられた。
5巻 第1部完まで
■ 力石、バンタム級転向初戦
後楽園ホールのリングに上がった力石は、以前とは一転して不気味になっている。
頬がこけていて、落ち窪んだ目だけがギラギラしている。
ガウンを脱ぐとアバラ骨が浮き出している。
リングサイドの白木葉子は顔を背けた。
少し離れた観客席のジョーはつぶやく。
「 がんばれよ、力石・・・、非常識だろうが、大人げないだろうが、こいつは、おれたちの世界のこった 」
ゴングが鳴った。
減量による体力不足から、早々にぜいぜいと息をつく力石。
ひたすらアッパーのみを繰り出して空振りする。
ジョーのクロスカウンターに対抗するために、今から戦法を変えているのだ。
打たれてよろけて、観客からはヤジが飛ぶ。
力石、劣勢。
さらに打たれてよろよろになりながらも、ついにアッパーがヒット。
逆転KO勝利したのだ。
ジョーとの対戦も決まる。
■ 力石の決意
力石は、息を切らせながらサンドバッグを打つ。
危険な減量をしながらのトレーニングは、医師付き添いとなっていた。
医師がトレーニング終了を告げた。
力石は暗い物置へ戻り、ベッドの上にじっと座る。
鍵がかけられて、練習生が見張りについた。
その様子を取材していた記者たちは、白木ジムの皆の気が狂っている言い合う。
するとその晩。
物置の力石が暴れだしてドアが激しく叩かれた。
「 開けろ!水をくれ!水! 」
練習生がドアを押さえたが、内側から壊された。
あまりの暴挙に練習生は逃げる。
「 もう、減量はやめだ!水をくれ! 」
力石は発狂して叫んで走り、流し場に駆け込む。
が、すべての蛇口は、針金で固定されていた。
シャワー室に駆け込んだ。
が、どの蛇口も針金が巻かれていた。
立ちすくむ力石の背後には、ゆっくりと白木葉子が現れた。
手にしているトレーには、ポットとコップが乗っている。
「 いきなりの冷たい水は、体を壊すと医師にいわれたの・・・ 」
ポットの白湯をコップに注ぐ。
こうなることを予想していたように落ち着いている。
「 あなたが、ほんの少しでも人間らしい要素を持っていてくれた、ということがとても嬉しいの・・・ 」
涙を浮かべながらコップは差し出された。
力石は黙ったまま固まっている。
やがてコップを受け取った力石だったが、一口もつけずに白湯は床にあけられた。
「 こんどは、鍵も見張りもいりません 」
周りが止めるのも聞かずに、暗い物置に戻った。
目には決意が宿っている。
■ 力石徹 vs. 矢吹丈
試合当日。
力石はアッパーのみ繰り出して空振りするばかり。
ラウンドを重ねても、アッパーは空振りを続けて、ひとつもヒットしない。
打たれ続けている。
解説者はジョーの優勢を伝えるまま、インターバルとなった。
「 竹槍を持って 大砲に突っかかっていく心境だぜ・・・ 」
ジョーは弱音を吐く。
段平は叱咤したが、あのアッパーを一発でもくらえば命取りになるのは悟っていた。
6ラウンドまでには、力石のアッパーはヒット。
ダウンから立ち上がったジョーに、ヒットを重ねていく。
力石、優勢。
ジョーは出血し、顔が腫れあがるほど打たれ続ける。
「 不死身だ・・・ 」
観客席はざわめく。
段平にもレフェリーにもヤジが飛ぶ。
「 もうタオルを投げろ! 」
「 やめさせろ! 」
さらにダウンして立ち上がったジョーは、両腕をダラリと下げて、顔を突き出したままとなる。
“ ノーカード戦法 ” だ。
■ 力石は勝利した
流れが変わった。
両者ともノーガードのまま、中央で向かい合ったまま。
「 下手に動いたほうが命取りになるのです! 」
解説者は実況する。
「 ファイト! 」
レフェリーが呼びかける。
が、両者はノーガードで向かい合ったまま、7ラウンドがすぎ、8ラウンドに。
あまりの展開に観客からのヤジが飛んで、気を揉んでいる段平と乱闘にもなっている。
そのとき。
先に動いたのジョーだった。
が、力石に1日の長があった。
放たれたカウンターがヒット。
ダウンをとり、カウントがはじまった。
そのままテンカウント。
力石は勝利した。
■ 力石の死
両陣営がリングに飛び出してから、立ち上がったジョーは握手を求めた。
「 さすが力石だ・・・、まいったぜ・・・ 」
かすかに笑みを浮かべた力石だったが、手を差し出したまま前に倒れていく。
控室まで担ぎ込まれた力石は、脳出血で死亡した。
「 うああああ、ああ・・・ 」
同じく控え室で知らせを聞いたジョーは叫ぶ。
段平はすぐさま駆けつけて、床に手をついた。
「 わしゃ・・・、こんなときになんていえばいいのか・・・、どういうてお詫びしていいものか・・・ 」
白木葉子は、涙して責任を感じている。
オーナーは、これは誰のせいでもないとつぶやく。
やがてジョーが姿を見せて、黙って力石の死顔を見ていた。
■ 第1部ラスト
力石の葬儀の日。
ジョーは参列することなく、街の悪ガキ連中と遊んでいる。
それも「1人になりたい」と公園のベンチに座っている。
「 おれは物心がついてから、世の中のやつらは、一歩はなれたところからしか接しようとはしなかった・・・、力石だけがありったけを叩きつけてきた。そうよ、友達だったんだあいつは・・・ 」
心配して様子を見にきた皆を振り切り、雪のちらつく街をうろつく。
「 力石を殺してしまった・・・、もうボクシングはやれない・・・ 」
鬱々と街を歩き、目についたぼったくりのおでん屋のオヤジと喧嘩をはじめる。
「 世のため刑務所に入った方がいい、へへ・・・、ちょうどいい幕切れだぜ・・・ 」
しかし逆に殴り倒されて、蹴りを入れられる。
気を失い、路上にうつ伏したまま雪に埋もれていく。
第1部 完・・・と終わる。