母:ほんとに臭いしない?あんなに臭いするのに。 線香って作られたいい匂いじゃん。そうじゃない、骨とさ、なんていえばいいの、日常の中で臭う臭いじゃないから、表現の仕様がない。肉が腐った臭いじゃないし、果物が腐った臭いでもなくて…。 私:生ごみの臭いでもないんでしょ? 母:違う。まったく違う。でも臭い。墓の臭いは骨の臭いじゃないかな。常に墓は臭いするよ。当たり前だと思ってるから。 私:感じたことないな。 母:墓は骨いっぱいあるじゃん。骨だらけだから、骨の臭いじゃないかなと
20代の頃のこと。 夜、眠くなって寝た、はずだ。 気が付くと、私は自分自身を見ていた。何が起きたのか分からなかった。 (もしかして、死んだ?寝たんじゃなかったっけ?) 多少なりともパニックになったが、よーく自分を見た。呼吸をしている。あれ? なぜ、自分が自分を見ている? この時、幽体離脱という言葉が頭をよぎった。怖くなり、身体の側を離れることができなかった。自分の身体に触れた気がする。その後のことは覚えていない。朝、起きたときはいつも通りだった。でも、昨日の夜の出来事はクリ
20代半ばのことだ。 寝ていたら、嫌な予感がした。近くに悪霊がいる。 たいていの霊はスルーするので、今回もそうかもしれないと思い、油断した。 足元からゆっくりと登ってきた。かすかな重さと、ただならぬ霊気を放っていた。若い男。例えるならば、映画『シャイニング』で主演を務めたジャック・ニコルソンの怪演がかわいく見えるくらい、そのくらい真に迫る様子だった。 その悪霊が私の顔の前あたりまで来たとき、ニヤッと笑いながら、その手は私の首を絞めた。思わず、布団ごと投げ飛ばした。「いい加減
全ての始まりは3歳のときに見た黒マントの男だ。園庭から、保育園の建物を見ていた。 なぜこんな人が園庭にいるのだろうと思い、先生に知らせた。先生が慌てて園庭を見に行ったが、誰もいない。そんな日が2日も続くと先生はいぶかしがった。「この子、変だわ」などと言われ、ショックを受けた。 でも、私は、なぜ?見えない?? フード付きの黒いマントに身を包んだ長身の男。顔がはっきり見えたが、不気味だと思ったことを覚えている。 この出来事は両親にも伝えたが、「変なことは言うな」と言われ、益々
【霊魂譚】はじめに 私の家では、日常的に非日常な話をする。通常、我々生きている人間から隠されているものが身近な存在として扱われ、ネタの一つとして会話に登場している。 内容は、幽霊や未来、過去について。 家のリビングで、くつろいでいるとき。「あ、今そこにおじさん(幽霊)がいたよ。こっち見てたけど、通りすがりだから~」 温泉に入っているとき。「さっきあがった目の前にいたおばさん、透けてたから、あと半年くらいで亡くなる。」 車を運転しているとき。「さっき通り過ぎたところ、事故の現