味方が増える戦略を布く-1
4P's(ふぉーぴー)
マーケティングといえば、ご存じ、4P's。
製品(Product) 価格(Price) 流通(Place) 推進(Promotion)
の4つの頭文字Pのことで、経済学者のマッカシー教授が1960年に唱えました。
この4P'sは見事で、どんな切り口からでも、マーケティングの体系をひも解くことができます。
4P'sを理解していると、たとえば、営業と販売の違いを、たった一行、30文字、
マーケティング > プロモーション > 広告+広報+販促+営業 > 販売
で説明できます。この式の中には、マーケティングとプロモーションの違いも含まれています。凄いものです、4P's。
しかも、モレなく、ダブリなく、4P は分離できず、単立できず、複合効果が
あります。マーケティングMIXというやつです。
見事というよりも、凄まじい理論とさえいえるでしょう。
しかーし!
「自分に持論があるなら、それを使えば?」という懐疑が生じて当然。
そこで、筆者が唱える“付加価値(プラスα)マーケティング”とは何ぞや?について、
前号の顧客七階層を皮切りに、断続的に取り上げましょう。
名付けて「味方が増える戦略を布く」シリーズ(意味は第二回以降にて)
断続的になるのは、他にも書きたいテーマが沢山あるためで、ちなみに、
・次号No.467は、営業とかけてサービス業と解く物語の第1話
・今年最後となる次々号No.468は、やみつきになるラーメンの開発
これらは、マーケティングを応用した創作ですので、マーケティングに造詣が深い読者さんには、楽しく読める反面、
わかりやすい基礎編をお望みの読者さんには、わかりにくいというか、面白くないかも。
得を売って得すべし
マーケティングが、4Pから4Cへ進化したように、
14年前に発表した付加価値(プラスα)マーケティングも、進化してきました。
当初は、師マッカシーの教えに忠実に4P'sをベースにしていましたが、
売る(企業)側の使い勝手が良い4P'sに疑問を抱き(50年以上も経ちました)
師であるマッカシー教授の教えを破って、経営戦略を取り入れ(守破離の破)
買う側の、顧客を軸にした理論へ進化してきました(守破離の離)
一言でいうと『お客さんの得を売れ』ということです。
一見、当たり前のように思えますが、あなたのもとへ売り込んできた営業マンを思い出してみて下さい。
得(ベネフィット)を売らずに、商品(プロダクト)のみ売る申し出が、殆どではありませんでしたか?
近頃は、メールでの売り込みが多く(だいたいIT系)、その全てが売り込みで、
「あなたの得は、これです」
というオファーを見たことがありません。あったとしても、理解不能な日本語の羅列だったりして。「バジェットをグロスでプレゼンします」とか。
ひどい例になると、
「先日お電話しました○○です」(電話で会話した事実なし)
「お問い合わせ、ありがとうございます」(問い合わせた事実なし)
なんてウソも。のっけから嘘つく人(企業)が、信用されるワキャありませんよね。
このように、自分の得には敏感なれど、他人(お客さん)の得には鈍感。
これが、マーケティングの最終段階を担う重要な(一部の)営業活動の実状ではありませんか?
そんな営業と一線を画すマーケティングは「自分の得を売れ」じゃありません、
『得を売って 得すべし』
です。お客さんの得(便益)が、自分の得(利益)となって返ってきます。
軸は顧客
お客さんの得を分析するために、付加価値マーケティングでは、ナインセルや
バリューBOX(という独自ツール)を使いますが、詳しくは、話が逸れるので、またの機会に。
さて、儲けるべく、誰に?何を?どうやって売る?という商売の基本を説いているサイトは沢山あり、
それだけ、誰に?何を?どうやって売る?は、商売のイロハとして、広く認知されているようです。
戦略(考え方)の基軸は、
1)誰に?
2)何を?
3)どうやって?
の三つ。三つで充分です。10も20も覚える必要ありません(覚えられません)
しかーし!誰に売る?何を売る?どうやって売る?という、売りの考察は盛んであっても、
1)誰が買う?
2)何を買う?
3)どうやって買う?
と、お客さんの立場で論じているサイトを見たことがありません。唯一、付加価値マーケティングのみ(検索してみて下さい)
顧客の立場で、お客さんは、売るんじゃないですよね?買うんですよね?
自分の得(売上)のために売ろうとすると、値札の付いた商品に意識が集中し、お客さんの得を見誤ってしまいます。
「お客さんの得はコレです」って、それ、お客さんから聞いたんですか?勝手に決めたんじゃありませんか?って話です。
一方、お客さんの得を売るには、お客さんを軸に考えなければなりませんから、お客さんから訊かないことには始まりません。
軸は顧客(他人)ですので、付加価値マーケティングは、調査に始まり、調査に終わります。
顧客を知れば百戦あやうからず。これぞ『戦略の軸は 顧客』ということです。
接触は無形財
付加価値マーケティングでは、
1)誰が買う?
2)何を買う?
3)どうやって買う?
三つの商売のイロハが戦略化され、一つの体系になっています。
1)誰が買う?=『軸は 顧客』= 相対的顧客戦略
2)何を買う?=『顧客は得を買う』= 付加価値戦略
3)どうやって買う?=『接触は無形財』= 長期接触営業戦略
3の『接触は無形財』は、すべてのコンタクト ポイント(お客様と接する職種)は、サービス業であるという定義。営業職も、です。
配達も、工事も、役者さんも、お客様と接する職種ですから、接触そのものが無形かつ無償の商品です。
たとえば、千葉ネズミーランドという遊園地へ行ったとしましょう。
そこで目撃!
マスクオフのミッキー○ウスの着ぐるみが、建物の陰でタバコを吸っていたら、どう思います?
魔法の国もヘッタクレもあったモンじゃありませんよね。
このネズミ役者さんの場合ですと、勤務中に、タバコを吸うという個人の嗜好(価値観)よりも、
魔法の国を演出する企業の考え方(価値観)のほうが優先されますから、
プライベートではヘビースモーカーであっても、勤務中なら、禁煙しなければ、勤務先の利益を損ねてしまいます。
お客さんとの接触そのものが、無形で、無償の商品ですからね。
それを律するのが行動規範や行動基準、行動指針といった企業理念なのですが、その詳細は、追々。
戦法まで落とし込む
以上が、付加価値マーケティングの概略です。
これら、戦略の下に戦術があり、戦術の下に戦法があります。
戦略
↓
戦術
↓
戦法
と、なぜ、戦法まで落とし込むか?というと、できるだけ具体化するためです。
・戦略戦術は、考え方
で
・戦法は、やり方
ですから、戦法化することにより、現場の誰でも使える戦略戦術になります。
たとえば、たかだかクリスマスカードにしても、
・無地のハガキを買ってね
・ハガキは横書きにしてね
・冬のグリーティング切手を貼るか、別納印をクリスマス風にデザインしてね
:
というように、やり方まで詳らかにするか?それとも、
「いついつまでにクリスマスカードを送りましょう」
と、戦術のみ指示するか? 現場が動きやすいのは(戦略が実現しやすいのは)どちらか?容易に想像できるでしょう。
戦法まで落とし込むことにより、
長期接触営業 戦 略
↓
クリスマスカード 戦 術
↓
実戦(作り込み。発送)
が、誰でも出来るようになります。ハガキを送るのは、誰でも出来ますからね。
少なくとも、
「細かい部分なんて、教えなくても、誰でも出来る」
「自分は出来る。だから、部下も出来る」という論法は、成り立ちません。
このメルマガを読んでいるということは日本語を読み書きできるはずですから改めて意識するまでもなく日常的に日本語を駆使しているはずです。
ところが、日本語ができない外国人にとっては、どうでしょう?
ひらがな、カタカナ、漢字、和製英語がゴチャ混ぜになった日本語ほど難しい言語はありません。
とうぜん「自分は出来る。だから、あんたも出来る」という論法は、成り立ちませんよね?
外国人との比較が突飛でしたら、同じ言語を操る日本人の、同じ社会人として、
「御方」を「みかた」と読めずに「おかた」や「おんかた」と読んじゃうのは、恥ずかしいことでしょうか?
「おかた」は、他人の敬称ですし、「おんかた」は、貴人の敬称か、あるいは、場所を指し示しますので、
恥ずかしくないどころか、それはそれで大正解。
ただ単に「みかた」と読めないだけです(味方のほうが常識化していますので)
読めなければ、読めるようになればよく、それには知ればいいだけのことです。
そんなことで、
「自分は読める。なんで読めないんだ?」
と糾弾するほうが大~間違いでしょ?
同じように、
「自分は出来る。だから、部下も出来る」
というレトリックは成り立ちましぇん。
できるように教えられない指導力の無さを自白しているようなものです。
仕事でも、スポーツでも、できる人に限って、できない人へ、
「なぜ、こんな簡単なことが、出来ないんだ?」
と、ある人は怒鳴ったり、ある人は「気合いが足りない」と根性論を叫んだり、
ある人は暴力をふるったり、ある人は「こいつにゃ才能がない」と見限ったり、
まるで、どこかの営業課長のように負の感情を剥き出しにしがちですが、
できる人には出来ても、初心者や、発展途上の人には出来ないことがあります。
教わる段階では、できないほうが当たり前です(やらないのとは違います)
できるように指導するには?
戦法まで落とし込むことです。それ(戦法)を、テクニックやコツと言います。
なにもかも自分でやるならともかく、初心者や、発展途上の部下にもやらせるとしたら、
(抽象的かつ長期的な)戦略を、(具体的かつ短期的な)戦術へと落とし込み、
更に噛み砕いたなテクニック(技術)へ落とし込むことです。
試しに、今年、クリスマスカードを送ったら、その工程を、マニュアル化しておくと良いでしょう。
それ(マニュアル)が、会社の資産となって受け継がれ、来年の新人も使える営業活動として、定着することでしょう。