パーミッション・マーケティング

パーミッションとは

情報を届けたい相手の許可が得られてからプロモーションするパーミッションマーケティングは、米Yahoo!のセス・ゴーディン氏が唱えた概念。

具体例は、たった今あなたが読んでいる最中のブログである。

「このブログを読みたい。配信されたら知らせてほしい」」

とパーミッション(許可)した先に連絡が入る仕組みになっているため、わずらわしさや押し付けがましさといった心理的抵抗が少なくて済む。

これをセールスに応用すれば、メールやDMの受け取りを許可した顧客へのみ勧誘や販売活動が行われるため、高い反応率を期待でき、コストも抑えられ、円滑で良好なCRMを実現できる。

セス氏が提唱するマーケティングは、どれもこれも、ゲリラ・マーケティングっぽくて私は好感をもてない(著書『マーケティングは嘘を語れ』などが典型的である)が、あおりや演出が控えめでは売れにくいことを、氏は米Yahoo!の副社長を経て体得したのかも知れない。

インターナルのパーミッション

パーミッション・マーケティングについては、氏の著書を読むか、検索すれば知り得る。

そこで、我流のパーミッション・マーケティングを開陳しよう。

まず第一に、セス氏が唱えたパーミッション・マーケティングが、外へ向けたエクスターナルのパーミッション・マーケティングであるということは、内へ向けたインターナルのパーミッション・マーケティングも有り得るということだ。

それは、たとえば、神代から続く針供養である。

鉄が珍しかった頃の縫い針は、高価で貴重な代物だった。とはいえ、針が使い古されると、どうしても新しい針に買い換えなければならない。

しかし、高価で貴重なだけに「もったいない」という心理が働く。また、安易に捨てると危険でもあった。

そこで、針を捨てるのではなく、供養に置き換えることで、心おきなく古い針を捨てられる=新しい針を購入できる儀式を創造した(と私は推察してみた)


それが針供養である。捨てる行為を、弔う儀式へ変換したのである。

儀式となれば、古い針を供養することで、捨てる罪悪感から解き放たれ、

自分を許すことができる。

新しい針を買っても良い許可(バーミッション)を、自分で自分へ与えられるのだ。
これによって、新しい針の購買が促進される。

あわよくば、数多のマーケティング関係者が頭を抱えている難題(ブランド・スイッチ)も促せる。

供養

現代における縫い針は、さほど貴重では無くなったので、別の例を求めよう。

この、捨てる仕組みを取り入れたのが財布供養である

新しい財布の購入を考えると、どうしても、古い財布をどうしようか気になるもので、中には、捨てる行為に気が咎める人もいる

そこで「古い財布を引き取って供養します」という引換サービスがあったら、どうだろう?

「新しい財布に買い換えようかな?どうしよう?」と、迷っている背中をポンと押すのではないだろうか?


「捨てる」を「捨てない」に逆説し、捨てずに「燃やす」、つまり供養するに置き換えて心理的な抵抗を減らし、新しい商品を買いやすい環境にする。

これは、服にも靴にもあてはまる。思い出がつまっていれば、なお捨てにくいであろう。特に女性は衣服をためこむ傾向にある。捨てたいが、捨てられない。

ならば「古い服をお持ち下さい。無料で供養します」と捨てる機会を提供し、心理的抵抗を減らす。

供養という語彙に抵抗があるなら、ミサやメモリアルといった英語に替えれば
いい。
その効果は、マーケティングを学んでいるあなたなら、想像に難くなかろう。

不思議なもので、捨てれば、新しい服を買いたくなるものらしく、自然な成り行きで新しい服を買う(=売れる)。売り込まずに売るのである。

自分を許すプラスのストローク

供養は、日本古来から続く宗教行事であり、儀式であり、慣習であり、伝統である。「供養って何?」と疑問に思う人は少なかろう。説明が要らないということは浸透しやすい=受け入れられやすい。

供養の儀式には、針供養の他にも、人形供養や数珠供養がある。ユニークなところでは、パソコン供養というものまで現れた模様。

日記、写真、神棚、注連縄、達磨、仏像、遺品など、捨てにくいものを捨てる=供養する専門の会社もある。料金は¥500からと安い。

お炊き上げをご存知の方々は、「そんなの、寺社へ持ちこめばタダじゃん」と思われるかもしれないが、無料を有料にするのが付加価値であり、商売の基本。


そうしたサービスを事業化するのも付加価値だが、ここでは、商品を売りたい時に、使い古した物を捨てられないが故に買い替えが阻まれているとしたら、買い替えを促すサービスを付加してはどうかということである。

ヒントは、針供養のように、身近なところにある。

許可する機会を提供する

人は、自分で自分を許したい時、許すきっかけがなければ、なかなか許せないものではないだろうか?

ならば、許せる条件を与えてあげればよい。たった、それだけのことである。

捨てるのが忍びない物は、捨てる行為を許せる機会を提供すればよいのである。

これぞ、お客さん自身が自分を許すことで買い替えを促進するインターナルのパーミッション・マーケティングである。人は、許されたいのだ。

あなたが売った製品を、顧客が捨てても許される機会を作ってあげよう。


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