AIDA 対 4P'sのプロモーション
『利』マーケティングでいうところのベネフィット(便益)
マーケティングの4P'sのひとつであるプロモーションには、
1)広告
2)広報
3)販促
4)販売
の4つがあり、(2)の広報は、人の心を動かす『義』で、
その他の (1)広告(3)販促(4)販売は、人の行動を促す『利』ですよ~と述べました。
ご存じの通り、
広告は、商品やサービスを告知して、知ってもらうこと(注意を引くこと)
広報は、商品を含めた企業活動全般の理解を深めること(関心を高めること)
販促は、お得な情報を示し、買いたくなるように勧める(欲しがらせる)こと
販売は、売ること(お客さまにとっては、買うこと)
ですので(1)広告(3)販促(4)販売には、基本的に、人の行動を促す『利』
が必要不可欠です。
利。マーケティングでいうところの、ベネフィット(便益)ですね。
基本的に…と断ったのは、広告のみ別で、利を目的としない意見広告や、広報目的の企業広告があるからです。
利とは無関係に、芸術の域へ達している広告があったり、受賞目的で作られる広告なんつーのもあります。
芸術作品としての広告で、昔から定評があるのは、パルコのTVCM。
受賞目的で作られる広告に興味がありましたら、こちらの映画を御覧ください。
余談ですが、この映画は、落ちこぼれ広告マンを演じる妻夫木聡さんが、世界一のTVCMを決める広告賞をめぐって繰り広げるドタバタコメディです。
いい加減で自分勝手な上司役を好演して笑わせてくれる豊川悦司さん等、映画向けにデフォルメされているとはいえ、監督は、サントリーや、ダイハツ工業のCMを作ったTVCMディレクター。
脚本も、トヨタ自動車や東京ガスのCMを作った業界人ですので、まるで、事実をもとに脚色したような、見事な出来栄えになっています。
エースコック等の実名も出てきます(が、プロダクトプレイスメントかどうかは不明)
ご興味がありましたら、この夏休みに、是非。
AIDA法則 & 4P'sのプロモーション。二つの公理は一致する
奇しくも、プロモーションの
1)広告
2)広報
3)販促
4)販売
は、AIDA(あいーだ)※ と対になっています。不思議なものですねえ
これについては、5年前に配信したバックナンバー『No.361 プロモーショナルサイクル』で触れました通り、
1)広告 = Attention(注意)
↓
2)広報 = Interest(関心)
↓
3)販促 = Desire(欲求)
↓
4)販売 = Action(行動)
の図式になります(順不同では成り立ちません。逆の流れも、あり得ません)
約100年前に、販売員のルイスさんが唱えたAIDAと、約50年前にマッカシー教授が唱えた4P'sのプロモーションが、
販売の現場と、学者の立場は異なれど、順序も、流れも、項目数も、まったく一致するなんて、奇跡か、偶然です(偶然でしょう)
この、奇跡的な偶然の、二つの公理の一致こそ、
1)誰に
2)何を
3)どうやって売る?
の(3)どうやって売る?です。戦略名に変えると、
1)顧客戦略
2)商品戦略
3)営業戦略
のうちの(3)営業戦略です。営業戦略は、
1)どうやって知らせる? = 広告 = Attention(注意)
↓
2)どうやって関心を高める? = 広報 = Interest(関心)
↓
3)どうやって勧める? = 販促 = Desire(欲求)
↓
4)どうやって代金と交換する? = 販売 = Action(行動)
の四段階が核になります。
プロモーションは、最終的には値引き行為になりますので、もちろん、これらの経費は、できるだけ抑えるに越したことはありません。
関与度の高い商品には広報 = Interest(関心)が欠かせない
話を前号へ戻して、暑中見舞いは、広報ですので、
2)広報 = Interest(関心)
に含まれます。これ(広報)を省くと、プロモーションにも、AIDA(あいーだ)にもなりません。
ただし、弁当や飲料といった、関与度※の低い商品ならば、お客さん自ら商品の価値を知っていますから、
1)知らせて = 広告 = Attention(注意)
↓
3)勧めて = 販促 = Desire(欲求)
↓
4)売る = 販売 = Action(行動)
だけで売れます。飲食が、好例ですね。
「太刀魚の天丼が出ましたよ~」
「旬の8月限定で販売していますよ~」
「1,000円ですよ~」
という具合。食事を選ぶのに10時間も迷う人はいません。
これが、関与度の高い商品となると、そうは問屋が卸しません。
特に、内容が解りにくい金融商品、生命保険、リフォーム、中小零細大学等は
1)知らせて = 広告 = Attention(注意)
↓
3)勧めて = 販促 = Desire(欲求)
↓
4)売る = 販売 = Action(行動)
三段階のみでは(お客さんは、商品の価値を知らないため)売れにくいことがお分かりになるでしょう。
関与度の高い商品には、
2)広報 = Interest(関心)
が欠かせません。暑中見舞いは(売るためではなく)思い出してもらうための広報です。
プロモーションは綿密に
暑中見舞いという広報 = Interest(関心)が、人の心を動かす『義』であることを理解しにくいがために、
暑中見舞い(残暑見舞い)を差し出す効果に、疑問を呈しているようでしたら、
AIDAの派生形であるAIDMA(あいどま)に照らし合わせてみると、分かりやすくなります。
どういうことか、二段階に分けて解説しましょう。
人の心を動かす暑中見舞いになるかどうかは、コンテンツ次第です。
コンテンツ。つまり、100×148mmの小さな紙に「何を書くか?」です。
それがプラスのストロークであることは、既に述べました。
逆に「暑中お見舞い申し上げます。このヤロー」は論外でしたね?
日本郵政が、かもめーるの用途として、販売促進を推しているのは、小売店や飲食店の商品は、関与度が低いからでしょう、たぶん。
このように、コンテンツ次第で、人の心を動かす一枚の紙にもなれば、逆効果にもなれば、社交辞令にもなれば、業務連絡にもなれば、DM(販促物)にもなります。
人の心を動かすコンテンツは5分や10分そこらで思いつくものではありません。
考え、探し、作りこむのに、相当の時間を要します。
その時間を割く意義については、エレベーターピッチを例に前号で述べましたね?
どうしても書けないようでしたら、外注する手段もありますよ。
創作物ですので、クオリティも価格も、ライターさんによりけりですが、原稿用紙一枚2,000円で作ってもらったことがあります@筆者
それも難しいようでしたら、一人で考えるよりも、暑中見舞い委員会を作って、何人かでブレインストーミングすると良いでしょう。
それくらい綿密に、戦術を、戦法化するのが、プロモーションに慣れた企業の実際です。
暑中見舞いを送る本質とは?
よしんば、人の心を動かすになるコンテンツにならなくても大丈夫。
暑中見舞いを、AIDMA(あいどま)に照らし合わせると、
Attention(注意)
↓
Interest(関心) ← 人の心を動かすかどうかはコンテンツ次第
↓
Desire(欲求)
↓
Memory(記憶) ← 差出人を覚える。思い出す
↓
Action(行動)
という効果があります。暑中見舞いが、リマインダー(思い出させるもの)になります。
しかも、挨拶状ですので、
「自分のことを、覚えてくれているんだ」
と喜ばれこそすれども、怪しまれる危険性は一切なし。季節の挨拶ですもん。
しかも、たった@52円(印刷費を含めても@100)で接触できます。
さらに、暑中見舞いが広報であることを知っているビジネスパーソンは少ないため、ライバルも少ない。
ライバルは、日本郵政の権威が正しいと思い込み、つい、暑中見舞いに商品を載せて、売り込んでしまう。
たとえ、売り込まなくても、定型文にありそうな社交辞令だったり、夏季休業の業務連絡だったり、そもそも、暑中見舞いを出すことさえ気づいていません。
そんなライバルを差し置いて、覚えてもらう(思い出してもらう)絶好の機会が、暑中見舞いです。
極めつけは、ご自分の行動を振り返ってみれば分かります。
あなたは、暑中見舞いのような挨拶状を、すぐに捨てますか?
捨てずに、しばらく、保管してあるんじゃありませんか?
ということは、あなたの連絡先を、送った相手が、自ら保管してくれるという、名刺に勝るとも劣らない効果を発揮します。
つまり、挨拶状の本質は、@52円で、名刺を送るのも同然。
年に何度も、さりげなく、連絡先を知らせるも同然です。
連絡、欲しいでしょう?発注という連絡が。
そのための戦術が、はがき戦術です。
それでも、暑中見舞いを差し出しませんか?
YES?
NO?
という判断です。
筆者が唱える長期接触営業戦略で、暑中見舞いを強く推すのは、こうした理由です。