ブレストは「頭脳の嵐」ではなく「頭脳で…」後編

ブレストの進め方 参加人数は12名

ブレインストーミングという企画会議の参加人数を、開発者のオズボーン氏は12名と想定していたようで、

“Osborn envisioned groups of around 12 participants, including both
experts and novices.”

(以下、筆者意訳)
“オズボーンは、専門家と、初心者の両方を含む、約12人の参加者グループを想定していました。(引用ここまで)


一方、ウィキペディア日本語版に書き込まれたブレストの解説によると、まったく話が喰い違う様子。

(以下、ウィキペディア日本語版より引用)

“人数に制限はない。

5 - 7名、場合によっては10名程度が好ましいというやり方もある(中略)

3人ごとの班構成にして、それぞれの班での成果を持ち寄るという方法もある”

(引用ここまで)

ということです。なるほど、日本で、10人以上のブレストは少ないと思いますし、
(全社員で10人に満たない中小零細の広告代理店やマーケティング系の会社が多く)

10人以上でアイデアフラッシュする会議は混乱を極めます(書記しきれません)ので、現実的には、10人以下で行われているにしても、

ウィキペディアのような、知名度が高くて、検索されやすい辞書サイトに書き込むならば、

around 12 participants(約12名の参加者)

と“ブレスト開発者のオズボーンさんは想定していた”と注釈をいれたほうが
訪問者に親切だと思いませんか?

とはいえ、諸事、こうして、伝言ゲームが始まりますので、致し方ありませんが(苦笑)

ブレストの進め方 参加者の役割は三種類

参加者が揃ったら、ブレストを始めます。参加者は以下1~3いずれかの役割を担います。

1.責任者。発議者のこと。オズボーン氏は“クライアント”と呼んでいた模様。

2.司会進行役(英語で表現するとしたら、モデレーター、ファシリテーター、ディスカッションリーダー、MC、どれも似たり寄ったりの意味)

3.メンバーとゲスト。メンバーは、アイデアを出す当事者。ゲストは、傍聴者(議決権のないオブザーバー)

1.2.の責任者と進行役は基本的に一人ずつなので、他の参加者全員がメンバー、あるいは、ゲストになります。

書記役について、オズボーン氏は触れていませんが、メモして当たり前 ※ が前提なのでしょう(下記『メモの余話』にて詳しく)


現実には、メモしないブレスト、すなわち、井戸端会議は多いようですが(笑)、

それだけ、会議の地位が低い職場なのか(だいたい、想像つきませんか?)

アイデアの価値に、重きを置かないのか(だいたい、想像つきますよね?)

列席の顔ぶれに敬意を払っていないのか(後述)

メモ慣れしていないのか、メモしない理由は、十人十色でしょう。

その気持ち、わかります。同じ職場の人間ばかりでは狎れて、飽きて、敬意もへったくれもありゃしません。

なぜなら、身近な相手ほど、軽んじやすく(良く言い換えれば、親しみやすく)、

遠い存在の、会いたくても会えない相手ほど、重んじるのが人間心理。

だからというわけではありませんが、マーケティング畑の人たちのブレストは、身内で固めず、

狎れ合いを排斥するために、外部の人間を招致し、心地よい緊張感を保とうとするのかも知れません。


しかしながら、業界という縦軸の知人は豊富であっても、業界外という横軸の
知人が少ないと、

どこの社外の、誰をブレストに招けばいいのか見当つかず、せいぜい、出入りの〇〇業者さんに声をかけるのが関の山でしょう。

〇〇の具体名は業界批判に受け取られかねませんので絶対に明かしません(笑)が、
これぞ、前々号 No.583 ブレスト + グルイン = 肯定会議 [前編]にて既述
の通り

“ご自分の経験に照らし合わせて、小さくまとめる方向へ持っていく思考”

の弊害の一つです。

近いから無料で来社してくれるという安直な理由で招く、経験が浅い、知識も少ない業者からは、

それなりの意見しか出てこないことを、体験なさった方々は、少なくないはず。

プロの名刺を持ったシロウトです。

むろん、オズボーン氏が言うところのnovices(初心者)から意見を聞くのは
構いませんが、

チームの一員として勘違いされると危険です。チームと業者は、いずれも他社といえ、区別するほうが安全。

ビジネスの場合、80%の人脈は、百害あって一利ありませんので(20%は取引)

今の業界から離れても付き合いが続く「人脈」と呼べる存在は1%未満でしょう。

余話 

ここまでの余談になりますが、かれこれ20年ほど前、無形財を商う会社の常務さんから、

「うちのブレストを見てほしい。アドバイスや意見があったら聞かせてほしい」
と要請があり、

誰一人としてメモしない7~8人規模のブレストに、社外のオブザーバーとして参加した時のこと。

閉会直後に、顔見知りの進行役が、

「では、あと、小笠原さん、宜しく、お願いします」

と、そんなの聞いてないよ~的なことを(笑)言い出したので、

「聞こえませんな。何のコトでっか?こちとら、NOギャラの傍観者でっせ?」

とは波風立てず(う~ん♪大人ぁ~)

「わかりました」
と、落書きよろしく真っ黒に重ね書きされたホワイトボードを指さし、

「どなたか、この会議のメモを、コピーして頂けますか?」

と呼びかけた瞬間、座の空気が凍りつき、気まずくなったことがあります。

皆さん、わかっているんですよね、メモしなくちゃ…って。

しかし、盛り上がっている井戸端会議が楽しくて、つい、お座なりになって、メモせずに終わらせがち。

散会した瞬間、すべてが水泡に帰したことさえ気づかない。そんなものです。

こうした細部に、ブレスト慣れしていないメンバーの、落とし穴があります。

メモは、議事録と同様、リアルタイムだからこそ、記録できるというもの。

そのメモを清書しておけば、これまた議事録と同様の、公的な文書になります。

なるほど、盛り上がるのは、素晴らしい議事進行ですが、メモ不要の理由にはなりませんよね?

情報が無ければマーケティングは失敗しますので。やま勘でも当たらない限り。

メモは時空(会議という時間と空間)の記録。ブレストの価値はメモにあり。


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