プッシュ戦略とプル戦略[後編]
前編おさらい
プロモーションは、マーケティングに含まれますので、
マーケティング = プロモーション
ではなく、
マーケティング > プロモーション
の構図であることは、前編で、充分ご理解なさいましたね?正確には、
マーケティング = プロモーション + プロダクト + プライス + プレイス
です。この、マッカシー教授が唱えた4P'sとは別に、
・プッシュ(チャネルの川下へ、購入を働きかける)戦略
と
・プル(マスメディアで、顧客の需要を喚起する)戦略
も、
代表的なマーケティング戦略として紹介されます。
マーケティング = プッシュ戦略 + プル戦略
です。
プル戦略の意味を調べると、長々難しそうな解説を見かけますが、プル戦略は、
マス・コミュニケーション
のことです(キッパリ)
プル戦略は、マスコミを使って、メーカーからエンドユーザー(や消費者へ「買ってね~」と働きかけます。
道~理で、TVCMのスポンサーには、メーカーが多いわけです。
1)加工メーカー(広告)← スポンサー
↑ ↓
2)卸 売 ↓
↑ ↓
3)小 売 ↓
↑ ↓
4)お客さん←←←
たとえば、日清カップヌードルは、氷をいれて食べるアイスカップヌードルをテレビCMで提案しました。
そのように、メーカーの日清食品が、消費者へ向けて「氷をいれて食べてね~」と提案することで、
「氷を入れて食べるのか!」
と気づいた消費者が、コンビニやスーパー等の小売店でカップヌードルを買い、
小売店は卸から、卸はメーカーからカップヌードルを仕入れる流通の仕組み。
マーケティング4P'sでいうところのプレイス(チャネル)です。
このように、メーカーが、プル戦略を布く限り、巨額の広告費が動きますから、マスコミは無くなりませんし、
マスコミある限り、マーケティング=プロモーションのように勘違いされがちです(巻末の余談へ続く)
日清カップヌードルの例
プッシュ戦略とプル戦略の理解には、引き続き、日清カップヌードルの実例がぴったりでしょう。
デビュー当初、袋麺が25円のご時世に、100円の小売価格でしたから、卸売も、小売も、取り扱ってくれず、
1)日清食品
↓
2)卸 売
↓
3)小 売
↓
4)お客さん
という、プッシュ戦略が通じませんでした。卸が買いませんから、お客さんは買えません。
プッシュ戦略が通じないということはプル戦略で広告を出すこともできません。
広告を見たお客さんが、買いたくても、売っていないからです。
1)日清食品(広告)
× ↓
2)卸 売 ↓
× ↓
3)小 売 ↓
↑ ↓
4)お客さん←←
このように、プッシュ戦略と、プル戦略は、表裏一体です。そこで日清は、
・消防、警察、警備会社等、夜勤の多い職場へ、夜食として売り込んだり、
・カップヌードル自販機を設置したり(コカコーラに次ぐ自販機の設置数)
・人々が集まる遊園地やスタジアム等で直販したり、
・銀座の歩行者天国で直販したり、
お客さんへ直接、販売しました。最初のお客さんは、自衛隊だったそうです。これは、
1)売れるのか?というリサーチ
と
2)販路開拓
と
3)カップ麺という新しい食の(最終的に代金を払う消費者への)提案
だったとのこと。
銀座の歩行者天国では、4時間で2万食も売れました(熱湯を、どうやって調達したのでしょう?自衛隊の1トン水タンクトレーラー60台分になる計算ですが)
このテスト・マーケティングにより「売れる!」との手応えは得たようですが、
発売初年の1971年に、全国販売されることは(流通に乗ることは)ありませんでした。
翌年2月、幸か不幸か、期せずして、奇跡のプル戦略が奏功します。
(以下ウィキペディアより引用)--------------------
あさま山荘事件が起きた際に、機動隊員たちがカップヌードルを食べる場面が全国に生中継された。
当時、事件の現場はマイナス15度前後の寒さで、隊員たちに配給される弁当も凍ってしまうため、
熱湯を注ぐだけですぐに食べられるカップヌードルが非常食として導入されたものであった。
これをきっかけにカップヌードルの認知度は飛躍的に高まり、各地域から販売希望が多数寄せられ、その要望にこたえて、全国発売となった。
(引用ここまで)----------------------------------
自衛隊や警察へ営業活動したプッシュ戦略が、プル戦略によって、功を奏したわけです。
もしも、日清の営業マンによる地道なプッシュ戦略がなかったら、
・カップヌードルの存在
も、
・カップヌードルの用途
も、
・カップヌードルの購入先
も、
自衛隊や機動隊(警察)は、知る由もありませんから、プッシュ戦略あっての奇跡的なプル戦略であったことが、おわかりになるでしょう。
切り離せないプッシュ戦略(アウトバウンド)とプル戦略(インバウンド)
よく,
マーケティング = プッシュ戦略 or プル戦略「あなたは、どっちを選ぶ?」
という語りかけに遭遇しますが、どちら?という選択は非現実的で、
店舗であってもチラシを配るように、どちらも組み合わせるのが現実解です。
ここまでで、プッシュ戦略とプル戦略、二つあわせてのマーケティング戦略であることが、おわかりになったでしょう。
インバウンドマーケティングと、アウドバウンドマーケティングも、同様に、
切り離せるものではありません
から、
インバウンド = プル戦略 = マスコミ
or
アウドバウンド = プッシュ戦略 = マーケティング4P'sのプレイス(SCM)
どっちを選ぶ?ではなく、
インバウンドと、アウドバウンドは不可分、二つ併せてのマーケティングです。
この、マーケティング = 4P'sでワンセットというところに、マッカシー教授が唱えた理論の凄味があります。
4P'sは不可分で、切り離せません。
インバウンドマーケティング = プル戦略のみ切り離せば、プロモーションになってしまいますからね。
(切り離して考えると、マーケティング = プロモーション のように勘違い
してしまいます)
インターネットも、広義には、マスコミですので、広告や広報の代りに、検索やリンクへの置き換えが成り立つわけです。
l
1)加工メーカー(検索/被リンク)
↑ ↑ ↓
2)卸 売 ↑ ↓
↑ ↑ ↓
3)小 売 ↑ ↓
↑ ↑ ↓
4)お客さん←←←
インバウンド = プル戦略 = マスコミ = Web(コンテンツ)マーケティング
以下、余談。
インバウンドもマーケティングですし、アウドバウンドもマーケティングですが、
なまじ、マーケティングを付けるから、ワケわからなくなってしまいます。
とはいえ、現実には、パーミッションマーケティングも、バズマーケティングも、ステルスマーケティングも、メールマーケティングも、Webマーケティングも、ソーシャルマーケティングも、バイラルマーケティングも、
すべて、プロモーションをマーケティングへ置き換えているネーミングが多いのは確か。
それはそれで構いませんが、プロモーションではなく、マーケティングというと、それらしく聞こえてしまうから、不思議です。
もしかしたら、それ(置き換え)を狙って『故きを温ねて 新しきを知る』で、
インバウンドマーケティング自体、
古き(プル戦略)を改名して、新しきを作った『最先端』マーケティングかも知れませんね。
これ(温故知新)を応用すれば、他にナンボでも最先端マーケティングが誕生しそう(笑)ですよ?