炎上マーケティングってマーケティング?
“炎上”の二文字がWeb用語化したマーケティング
マーケティングの和訳に“商法”の二文字が当てられがちです。
たとえば、WEBマーケティングを、インターネット商法へ言い換えるぶんには問題ありませんが、
・マルチ商法を、マルチレベル・マーケティング
・やらせ商法を、ステルス・マーケティング
・品薄商法を、ハングリー・マーケティング
と、犯罪すれすれの商法を、マーケティング手法のように言い換えてしまうのは問題。
そして、とうとう、英語 + Marketingのみならず、日本語と合体し、
炎上商法を、炎上マーケティング
と呼ばれようになりました。
こうなると、もう、Marketingを付けてしまえば、なんでもアリの様相を呈してきます。
炎上商法の起源は定かではありませんが、舌禍を招く危険を承知で批判し、米塩を稼ぐ評論家業は、炎上 もとより覚悟の 炎上商法でしょう。
同じように、過激な発言で注目を集め、知名度を高め、世に出た著名人は(実名の公開は控えるにしても)沢山いますし、
自ら火を点け、炎上させ、周囲を巻き込んで、騒ぎを大きくし、自ら鎮火る
(解決策を売り込む)マッチポンプ商法は、インターネットがない頃からありますし、
炎上どころか、裁判沙汰になった例など枚挙に暇がないセンセーショナルな記事と、見出しで耳目を集めて売る商法は、週刊誌の常套手段です。
それが何故、今になって、
炎上 + Marketing
で、炎上マーケティングなる奇怪なマーケティング手法(?)が話題にのぼるようになったのか推測するに、インターネット(特にSNS)の発達によって、
・ブログが炎上
・掲示板が炎上
・コメント欄が炎上
のように“炎上”の二文字が、燃え盛る炎ではなく、バッシングやディスカウ
ントの意味で使われるようになった(Web用語化した)からでしょう。
(もし、炎上商法の起源をご存知でしたら教えて下さい)
ちなみに、ウィキペディアでは炎上マーケティングを、
「類義語に炎上商法がある」
と解説していますが、何が類義なのか?までは解説されていませんので、代わりに解説しますと、
・炎上マーケティング = 炎上がWeb用語化したインターネットに限定
・炎上商法 = インターネットを含む全て
のように(ちょっと強引にしろ)分類できなくもありません。
さはさりながら、炎上マーケティングも、炎上商法も、類義ではなく、同義
でしょうね。
それから、炎上マーケティングのテーマ曲は “燃え上がれ ガンダム” だそ
うです(ウソです:笑)
では、その炎上商法は、マーケティングとして成り立つのでしょうか?
炎上商法は、マーケティングとして成り立つか?
著書のある著者として、対岸の火事ではなく、身の毛もよだつ(笑)先例として、
「炎上マーケティングと噂された本」
を取り上げて、検証してみましょう。
TOKIOの5人で究極のラーメンを作るテレビ番組を見た作家が、ツイッターに、
「TOKIO。究極のラーメンて、福島の小麦から作った麺なのかよ。人殺し」
「未だに「食べて応援」している馬鹿がいて頭が痛くなる」
と書き込んだとたん、大炎上。
その炎上っぷりは、上記二行のツイートを手掛かりに検索してもらえば、すぐに見つかるはずです。
燃え上がった燎原の炎は、アマゾンの作品レビューへ延焼。
星☆ひとつのオンパレードは理解できるにしても、瞠目すべきは、レビューの日時。
2000年の出版にもかかわらず、
・2015年まで、15年間も(!)レビューがなく、
・70件以上のレビューすべて、
・15年後の炎上 後 の書き込み日時
です。アマゾンのレビューは、購入者のみ書き込める仕組みになっているはずですので、
炎上マーケティングで、読者が増えたことに他なりません。
これが、本当に、仕組まれた炎上マーケティングだったかどうか、確証はありませんが、
(仕組んだとしたら、プライバシーが暴かれやすい本名ではなく、ペンネームを使うはずですが)
もし、著者の本が、15年間、売れていなかったとしたら、たとえ、売れない本であっても、
炎上させると、本は売れる
ことが立証されました。
非難ごうごうのレビューを見てもらえれば分かるように、社会の求めに応じていない作品であっても、売れる事実。
さらに、今年、上梓された、最新刊のレビュー数は、300人強まで膨れ上がり、
「3,301人のお客様がこれが役に立ったと考えています」
と、ミリオンセラー並のコメント数がありますので、良し悪しは別にして、
注目度の高さ
が窺えます。炎上マーケティングによって、少なくとも300人強が、アマゾンで最新刊を購入し、3,000人強が意思表示しました。
その代わり、失ったものは大きく、すべての販路を含め、仮に3,000部は売れ
たとしても、たかだか印税100万円と引き換えに、
著者の名声は、アマゾンがインターネットから撤退するまで、地に落ちたままですケドね。
しかしながら、
売れたのは事実
です。そこで問われるのが
「カネさえ儲かりゃ何してもいいのか?」
「本を売るために、本とは無関係の何かにイチャモンつけて炎上させるのか?」
「何のために金もうけするのか?」
という理念です(キッパリ)
10円の仕入れ値を隠して、100円で売る商売は、元来、だまし・だまされやすい性格を帯びていますので、
商売するには、経営理念にしても、社是にしても、行動規範にしても、理念が必要不可欠です。
そう考えると、炎上マーケティングは、確かに、あざといプロモーション手法ではあるものの、
社会の求めに応じた価値を届けるのが、正しいマーケティングであるとすれば、
炎上マーケティングなんぞ、マーケティングに非(あら)ず
というのが筆者の結論です。
炎上覚悟の成功例
炎上を狙ったわけではありませんが、失敗する覚悟で取り組み、結果的に、成功した(Web以外の)例も挙げましょう。
ある個人経営の企業から、マーケティングの指南を依頼されたとき、顧客へ向けて、手紙を書いてもらったことがあります。
社長お一人の会社で、営業活動していなかったため、業績は、ゆるやかに落下し、気づいた時にはドン底。
作文が苦手な理系の社長さんでしたので、筆者と二人三脚で文章を考え、再生の決意を記し、送ったところ、読んだ顧客から、
「感動した」
「涙が出た」
「熱い想いが伝わってきた」
「お願いする時があったら、ぜひ頼みたい」
「また次があったら依頼する」
「紹介できる人がいたら、そちらを紹介する」
という絶賛の雨嵐で、それ以降、少しづつ、業績は回復し始めました(もちろん、手紙の他にも、接触営業してもらいましたが)
その中で一件だけ、
「仕事の用でもないのに、こんな手紙を送ってくるんじゃねえ」
というお叱りの電話があり、怒鳴られたそうです。
そんな出来事があった次の月の面談で、社長いわく、
「おとなしく波風立てずに、座して死を待つくらいなら、怒鳴られてもいいから、伝えるべきことは伝え、仕事が来て、存続していけるほうがマシだと思いました」
と、おっしゃっていました。「怒鳴られるのは、精神的にキツかったケド……」
と苦笑いしつつ。
これを炎上商法と捉えるかどうかは、あなた次第ですが、炎上は、狙って火を点けるものではなく、
「炎上しようと何だろうと、これだけは伝えておかなければ、悔いを残す」
くらいの
背水の陣を布く
覚悟が必要なのは確かなようです。