フリートライアルオファー
Free Trial Offer(FTO)
エアメールを開封すると、4つ折のレターと、CDが一枚入っていた。
レターを広げてみると、大きな文字で『おめでとうございます!』とあった。
そして『 15 万 円 が 当 り ま し た 』と続く。
ワケの分らないまま読み進めていくと、どうやら、オンラインカジノからのDMらしい。
15万円ぶんオンラインカジノで遊べるフリートライアルオファーである。
フリートライアルオファーとは、無料お試し提案のこと。
このオファーはフリー(無料)どころか15万円を差し上げますというのだから、無料どころの騒ぎではない。もっと凄い。インパクトがある。太っ腹。
さすがはダイレクトマーケティング先進国のアメリカ。
但し、真に受けてはいけない。正確には、15万円ではなく、15万円分のチップである。
レターのフロー
レターには、射幸心を煽る煌く文字が続いている。要約すると、
・おめでとうございます!/ヘッドライン
・この幸運をお受け取りになったShojiOgasawara様/パーソナライズ
・あなたに15万円が当りました/サブタイトル
・このラッキーな15万円分のチップを使って、遊んで楽しんで大金をゲットして下さい/ボディコピー
・金銭的なリスクはゼロ!失うものは何もありません/サブタイトル
・勝てるだけ勝って下さい。みんなあなたのものです/ボディーコピー
・あなたも5億円を手にできるかも/サブタイトル
・アメリカのジョン氏は5億円を獲得しました/ボディーコピー
・さあ、次は、あなたが大金をつかむ番です/サブタイトル
・CDをパソコンに入れるだけで15万円があなたのものに/ボディーコピー
・支配人サイン&メッセージ「15万円の権利は期間限定です。お急ぎ下さい。簡単に遊べるリアルなゲームが揃っています。どうぞお楽しみ下さい」
・追伸 もしも、ご不安なことや、お分かりにならないことがありましたら、365日24時間サポートのコールセンターまで。フリーダイヤル1-2345-678-900
レターのメリハリ
いかがだろう?うまいと思わないだろうか?
使ってあるフォントは2種類(明朝とゴシック)。文字級数は、
・ヘッドライン 36ポイント
・サブタイトル 24ポイント
・ボディコピー 12ポイント
文字色はスミ一色。装飾は、たったこれだけ。それでも読ませることができるという見本といえよう。
リストの使い方といい、レターの文面といい、CDを差し込むだけの導線といい、よく出来たDMである。
紙はレター1枚と封筒。それにCDだけなのだから、郵代も最小限に抑えられているに違いない。
しかし筆者は遊んでいない。仕事柄かも知れないが、どうしても、細かい文字まで読んでしまう。読むと、
・60分間プレイ可能
・獲得限度額2万円
とあった。つまり、60分間で時間切れ。もっと遊びたかったら登録して下さいということであり、60分の間にどれだけ勝っても、2万円しか払い戻さないということである。
異業種に学ぶギミック
もちろん、日本にカジノは無い。オンラインカジノは賭博が合法な国のサイトにつき、その国の法律が適用される。日本で遊んでも問題はない。
DMの作り方や、ギミックの仕込み方の上手さについて、マーケティング大国アメリカのDMから学ぼうとしている。
※gimmick(ギミック)=巧妙な仕掛け、トリック、からくり
ユニークなのは「15万円」というオファー。これで胴元が15万円を損するかというと一円も損しない。一円も損せず「15万円プレゼント」といえる。
日本のパチンコやゲームセンターは風営法の取締りが厳しいため、この手法をトレースすることは難しいと思うが、たとえばケーキ屋さんが、
「○○○ちゃん、誕生日おめでとうございます!お店からのプレゼントを用意して待っていますよ。このハガキを持って来て下さいね」
との来店促進に応用できよう。
小さな子供には親が付いてくる。親は、来店ついでに自分の分のケーキを買うかも知れない。
何にしても来店してもらわないことには商品が売れない。ということは、来店動機を与えることが最優先。そのためのギミックを考えよう。
ヒントは身の回りに転がっている。DMにしてもチラシにしても、出せば良いというものではない。
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