数字は 未来への道しるべ【フェルミ推定】後編
数字は 未来への道しるべ【フェルミ推定】前編
から続く
https://note.com/tanaka4040/n/n877fb56d3020
既知数とは?既に知られている数字のこと。対義語は未知数
フェルミ推定に限らず、推定は、既知数や、近似式を元に、桁が少ない有効数を用いて、概数を求める脳作業(造語)ですが、
文系には、わかりにくいですよね(筆者も文系ですので)
要するに、当たらずも遠くない数字を、ヒントを元に、当てましょう~という「正解のない」クイズです。
地球上にいる蟻の数のように、誰も正解を知らないタメ、推定するわけですな。
さらに詳しくは、3つの用語を知ると分かりやすくなります。ご安心めされ。
まず、既知数
既知数とは、これから調べたり、計算しなければ不明な数字ではなく、
「日本の人口は、一億二千万人」
のように、既に知られている数字のこと。対義語は、未知数。
ほら、中学生の頃、数学の授業で、「 x = a + b 」のような数式を見ません
でしたか?
a が 1 で、b が 6 の場合、x =1 + 6 で、 x(えっくす。未知数)は 7 です
よね。
この a の 1 と b の 6 が、 既に分っている数字なので、既知の定数(係数)、すなわち、既知数です。
この既知数(1と6)をヒントにして未知数 x(えっくす=解答)を求めるわけです。
ね?カンタンでしょう?
既知数が、もし、定まった数字ではなく『 b = 6または7 』のように変わる
場合、
bは 6か 7の変数(変わる数字)ですので、x= 7 または x= 8 になります)
この定数と変数が、既知の数字(既にわかっている数字)、既知数です。
この『 a が 1で、b が 6 ならば、x は 7 』という方程式が、フェルミ推定
を含む、推定のやり方で、要するに、
「こう仮定すれば、こういう数字になるよね~」
という推計が、(フェルミ)推定です。
なんのこっちゃありません、名探偵コナンが、数字教師になったみたいなものです。「真実は、いつも、ひとつッ!」
近似式とは?近似値(=正解に近い数字)を求めるのに適した計算式
近似式とは、高速化するために、複雑な計算式を簡略化し、近似値(=正解に近い数字)を求めるのに適した計算式のこと。
たとえば、ブレーキをかけた車が、停車するまでの距離を求めるとしたら?
正確に計算するには、空走距離と、制動距離から先に算出する複雑な計算式になり、
湿ったアスファルト(摩擦係数0.5)で、反応時間を平均値の0.75秒とすると、停止距離の測定値は、
30km/h = 13.34m(時速30kmで制動した場合、停止までに、13mちょっと進む)
40km/h = 20.93m
50km/h = 30.11m
60km/h = 40.85m
70km/h = 53.16m
80km/h = 67.06m
ですが、近似値(約。だいたい)で構わないので、すぐに答えを求めたければ、
時速(km/h) -15(ただし、60km/h以下に限る)
で求められます。要するに、スピード(km/h)から15を引けばいいという
こと。
これ(スピード - 15)を、近似式Aとしましょう。たとえば、
30km/h = 30-15 = 15m(誤差1.66メートル = 15m - 13.34m)
40km/h = 40-15 = 25m
50km/h = 50-15 = 35m
60km/h = 60-15 = 45m
ん~、15ではなく マイナス 20 でも成り立ちそうですね(新発見かも?)
さらなる近似値(もっともっと正解に近い数字)を求めるには、
(時速/10)×(時速/10+1)+2
の近似式Bを覚えておけば、近似式Aよりも正解に近い近似値を導き出せます。
30km/h = 3x4+2 = 14m(誤差0.66メートル = 14m - 13.34m)
40km/h = 4x5+2 = 22m
50km/h = 5x6+2 = 32m
60km/h = 6x7+2 = 44m
70km/h = 7x8+2 = 58m
80km/h = 8x9+2 = 74m
このように、近似式Aも近似式Bも、正解に、当たらずも遠からず、だいたいナンボという近似値を導き出す、近似式であることが分かります。
有効数字とは?端数を処理して、わかりやすくした数字のこと
最後に、有効数字とは、端数を処理して、わかりやすくした数字のこと。
たとえば、日本の人口は、直近の国勢調査によると、126,706,210人ですが、
国勢調査した時点でも、結果発表の時点でも、末位3ケタが210人であるはずがなく、必ずや、誤差があります。
なぜなら、一日に3,000人弱が誕生し、3,000人強が亡くなっていますので、秒単位で、人口は変動しています。
そこで、調査のたびに変動や誤差が生じやすく、変わりやすい桁数(たとえば百万人台)までを丸めて(※3)
・ざっくり、120,000,000人とし、
・120,000,000人のゼロを無視して、
・1億と2千万だけ残し、
・わかりやすく、一億二千万人
とし、ゼロ以外に残った「1」と「2」の2桁が有効数になります。
(※3)数字を丸める端数処理のこと。端数を切り上げたり、切り捨てたり、桁数を指定して、数字を見やすくすること(例:126,706,210人 → 12,000万人)
桁数が多いと(126,706,21=8ケタ)わかりづらいので、できるだけ少ない桁数にするために、
・変動しにくい桁数の千万人台以上を残し(有効桁数は8ケタ以上)
・百万人台以下を0にして(下7ケタは切り捨て)
・12×10の7乗(12の上2ケタが有効数字で、あとはゼロ)=120,000,000
にするわけです。
いかがです?
国が発表している正確な126,706,210人よりも、概数値の1億2千万人のほうが、わかりやすくて、規模をつかみやすくて、覚えやすくいでしょう?この、
・既知の数字や、近似式を元に、
・桁数が少ない有効数を用い、
・概数を求める
というのが、推定です。フェルミ推定に限らず。
リサーチは定量調査と定性調査の一対になっている(推定は定量)
本稿の目的は、決して、フェルミ推定を否定するものではなく、フェルミ推定が、
・凡才は真似できようはずのない天才・フェルミ教授が得意にしていた計算法
であり、それを知ったからといって、教授よろしく、
・落としたティッシュペーパーの動きから爆風を推計できるようになるか?
というと、はなはだ(笑)怪しく
(フェルミ推定と呼ばれる奇問を質問する立場の面接担当者でさえ、おそらく、爆風を推計できませんよね?)
・フェルミ推定の他にも、推定法は、沢山ある
ことは事実。きわめつけは、Wikipediaに書かれてある通り、フェルミ推定は、20年前の日本には無かったけれども、
「このような考え方自体は(中略)ビジネスシーンではきわめて当たり前のように用いられていた」
https://tinyurl.com/ybeq9r6e
より引用
それもそのはず、ビジネスの先達は、推定法など知らなくても、やる気と才覚で、難局を克服してきました。
つまり(言わんとしているところは)フェルミ推定を覚えるのが目的ではなく、
難しい局面や、投げ出したくなる状況に遭遇したとき(仕事していると必ずや遭遇します)
挑むまえから、逃げるよりなら、跳んで眺めてみたら如何ですか?ということです。
たとえ、八方ふさがりでも、上が開いていることに気づくかも知れませんのでね。
結びになりますが、定量調査の数字は、過去を語るもので、未来は語りません。
(定量調査の分析結果 = 数字 = 未来への道しるべ = ヒントになります)
一方の定性調査は、人が、未来を語ります。
未来とは、夢、希望、目標、明日、将来、予想、行く先のこと。これらは数字に表れません。
マーケティング・リサーチは、定量調査と定性調査の一対になっていることを、努々お忘れなきよう。(推定は、定量の数字のみ)
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