ことばが遅れる原因を探したくなる人へ
ほぼ100%聞かれる質問
よくことばの遅れについてご相談をいただく立場なのですが、
ほぼ全員から聞かれるご質問があります。
それは、ことばが遅れた原因は何か特定しようとするご質問です。たとえば…
これらはほんの一例ですが、こういった親御さん自身がことばの遅れの原因を作ったのではないかと懸念されるご質問がとても多いです。
あと、チラホラあるのが
という、ご自身ではなくて身内が原因なのではないかというご質問です。
原因を追究することの意味
私自身は困った行動への対処法として応用行動分析学(ABA ; Applied Behavior Analysis)を用いたアプローチをすることがあります。
その場合用いるのがABC分析です。これは
という3つの段階に分けて行動を理解する方法です。
ABC分析とは、行動を起こすに至ったきっかけが何かをはっきりさせることにより、その結果に至った原因・理由を客観的に分析するためのツールになります。
何か行動が生じたときにその行動が生じるきっかけが何かあるはずだと考えると、ことばが遅いということにも、何か生じるきっかけがあったのではないかと考えるのは当然だと言えます。
つまり、何かしらのきっかけ(A;行動前のできごと)があってことばが遅れている(B;行動)ので、発達に関して悩んでいる(C;結果)という流れになります。
ABC分析をすることが当たり前になっていると特に、きっかけを知りたくなる気持ちは理解できます。
わたしからのアンサー
このような「ことばが遅いのは〇〇のせいですか?」というご質問に対して
答えを求めている方にはガッカリなお答えにはなりますが、
「分からない」
というのが私からのアンサーです。
これ以上でもこれ以下でもありません。
なぜかというと、ことばが遅れる原因は1つに絞れるほど単純ではないからです。
「ことばが遅い」と一言で言っても
「ことばが遅い」ということは、同じ年齢・年代のお子さんに比べてことばの発達がゆっくりであることを指しますが
ゆっくりの程度には幅がありますし、特に1~3歳の頃は身体的にも精神的にも発達に個人差が大きな時期です。
ですから、その時期のお子さんが本当に「ことばが遅い」かどうかはしっかりと確かめる必要があります。
中には一時的にことばのゆっくりさが目立つだけで後からキャッチアップするお子さんもいます。
一時点だけのことばの出方を見るのではなく、定期的に継続して発達を追跡することで
単なる一時的なものか、それとも長期に渡ってゆっくりさが続いているのかを見極める必要があります。
ことばが遅れる理由
次に、ことばが遅れる理由を考えると
運動機能の発達の遅れ
聴力障害の可能性
口腔機能の発達の遅れ
知的障害の可能性
コミュニケーション面の発達の遅れ
などが考えられます。
このいずれかが原因である場合もありますが、多くは複数の要因が絡み合ってことばの遅れを生み出します。
そのどこに原因があるのかを理解するために検査を行うことで分かる部分もありますが、検査は万能ではないので「調べれば全てが分かる」というわけではありません。
結論:原因追究に時間を使いすぎない
支援者として大切なことは、お子さんの未来に目を向けることです。
親御さんは原因を追究したい思いで支援者を頼るかもしれません。
確かに原因が明らかになることで支援の方針が立てやすくなることももちろんあります。
特に運動面の障害や聴覚障害など早期からの介入が効果的な場合もあります。
しかし、原因を追究している間にも、お子さんはどんどん成長していきますので、
原因を探りながらもどのようにな対処法があるのかを保護者とともに考え、対応していくことが支援者には求められています。
保護者の気持ちに寄り添いながらも、今分かっていることと分からないことをはっきりと伝え、未来への見通しを伝えられる支援者でありたいと思っています。