見出し画像

おすすめしたい、マイキッチンのヒーローたち

 わたしは料理研究家でもなければ家事代行者でもない。
 器用でもないし几帳面でもない。
 だけど、夕方6時半を過ぎると「今日の晩飯なに?もちろんおかーさんの料理はなんでも美味しいんだけど」と、たくさんの課題をわたしの振るうフライパンの中身を心の支えにしながら頑張る息子が、ふらふらとキッチンにやってくる。なので、毎晩ご飯を炊き特売のお肉を晩ごはんに加工している。

 そんなわたしがキッチンで「君がいてくれてよかった!」と毎度思っているヒーローたち、キッチングッズをご紹介します。いえ、ご紹介させてください。

 タジン鍋ってご存知ですか。何年か前に一度流行りましたね。モロッコの鍋、本場は陶製だったろうか。水の乏しい砂漠の地でも、食材から出る水蒸気を上手に再利用できる独特な円錐形で、旨味を閉じ込め美味しい蒸し料理ができるというもの。これが、シリコンでできている。タジン鍋の形をした、シリコンスチーマーだ。蓋はペタンコに畳め、シリコンだからレンジも食洗機もOK。レンジOKというか、むしろレンジ用です。レンジで使ってください!
 シリコンスチーマーも一時流行ってレシピ本付きのものも書店で平積みになったりしてましたよね。あっちの流行り物とこっちの流行り物の合体。これがええんですわ奥様。
 ほうれん草を茹でる、小松菜を茹でる、モロヘイヤを茹でる。青物のさっと茹でが、水無しで可能。湯を沸かさなくていい。おいしさとじこめて、時間もすぐ。ブロッコリーもいいよ。青々と仕上がりますよ。春菊は茶色くなっちゃうんだよなあ。なんでかなあ。
 根菜も得意よ。冬の間よくやったのが、かぶ、にんじん、だいこん、ブロッコリー、たまねぎ、青梗菜、などなど目に付く野菜を乱切りにしてこれに放り込み、レンチンしたものにごまだれかポン酢をかけて、薬味ネギ散らして。いただく蒸し野菜。手軽にして美味しい。野菜が甘い。
 アサリの酒蒸し、白身魚の酒蒸し、魚介の料理にもイケる。蒸し上がったところにお醤油ひと回し、そしてネギとミョウガとシソをちらして千切りの生姜をそっと乗せる。手作りシュウマイもかんたん。クッキングシートを敷いて、その上にしゅうまいを乗せて適宜レンチンしてください。
 そうそう、レンチンしたこの容器のまま食卓に出しても全然違和感無し。

   し あ わ せ

 ちなみに、このシリコンタジン鍋がどうして我が家にやってきたかと言うと、もう10年前になるのか、当時広島に単身赴任していた夫が「忘年会のビンゴで当てた」と正月休みに持って帰ってきたからです。これだけ妻を喜ばせたビンゴ賞品はかつてなく、これからもないと思われる。幹事様、ナイスセンス。夫、ナイスクジ運。

 もともとは、瓶の底にちょっぴり残ったジャムを「残さずかき集めたい」という主婦のさもしさから入手したヘラなんだけど、これがものすごく使い勝手がいい。
手に収まる長さなので、どろっとしたタネを型に流すとか、小鍋のソースをかき回しながら家族のお皿へ等分に注ぐとか、スクランブルエッグ(とろけるチーズ入り)とか、手早く何かをかき回したり、無駄なくこそげたりするのにとてもよい。「ああちょっと残ってる、もったいない」と悶々とすることが減った。地球にやさしいお料理。
 あと、ヘラの先端が斜めでなく真横にまっすぐ成形されているので、卵焼きを焼く時に卵を返しやすい。わたしは不器用さんで、卵焼きは苦手なのだけど(そして息子たちは大好物)、このヘラのおかげでストレスがなくなった。
 いままでレギュラーサイズのヘラでやっていた、「炒める、かき混ぜる」もこのヘラでやることが増えた。軽くて短くて丈夫で取り回しがいいのだもの。洗うのも簡単だし。
 そして、大変お安く、かつ丈夫。あつあつのフライパンの上、ぐつぐつの鍋の中、過酷な場所で働いていただいた上に、食洗機へ放り込まれる日常だというのに、このヘラはもう10年近くわたしの手元にいる。予備も買ってあるけど、「わしゃまだまだ現役、若いものになど変わるものか」という勢い。たのもしい。

 こちら、食器洗いブラシである。名品。ブラシの毛の腰がしっかりしていて、しかし針金のような強さではなくて、しなやかで、へたらない。わたしは圧力鍋でご飯を炊くので、毎度お鍋にこびりついた米のデンプンをこれでこそげ落としている。柄が適度に長い上に、ヘッドに力が十分伝わるので鍋が深くて大きいけれどストレスがない。きもちよい。

 実はこのブラシとの出会いは10年ほど前になる、スウェーデン人宣教師にして英語の先生、わたしが生まれる前からの家族ぐるみの付き合いをしてきたお友達のマリアンヌが、夏と冬に休暇で帰国するたび、これをたくさん買ってきてはみんなに「おみやげです」と一本ずつくれてたのですよ。彼女は日本にIKEAの一号店がオープンした日とても興奮して喜んでいた。もしわたしがスウェーデンに住んでいて、スウェーデンにニトリの1号店がオープンすると聞いた時あんなに喜べるだろうか。自信がない。マリアンヌはたいへん自国を愛していたし、IKEAは愛されるに足りるセンスの良いお店だ。キッチンでこのブラシを見るたびマリアンヌとIKEAが羨ましくなる。
 さて、ブラシに話を戻そう。色がかわいい。形もいい。使ってみたら良さが秒でわかる。みんなハートを射抜かれて、愛用者の輪はマリアンヌが帰国してしまったのちも大きく広がっていると聞く。手がかぶれやすい人も、ぜひ使うといいですよ。あと、水筒を洗うのにもいいですね。5本まとめてこのお値段。色によって使い道を分けるのもいい。なにより、色が可愛くて手に取るたび元気が出るよ。

 漏斗である。特に珍しいものではない。イマドキはシリコン製だったり、きゅきゅきゅと蛇腹状にたためて省スペースを売りにする発明品もある。しかし、わたしはあえて、この「カネの漏斗」をおすすめする。
 サイズがいい。持ち手を除くと計量カップくらいの大きさだ。巨大タンクから巨大な瓶にドクドクと油を注いだりするのでないなら、家庭のキッチンで使用するのに大きいものである必要はない。引き出しにも収まりよい、ありがたいサイズ感。
 取手がいい。さりげなく長めなのが、とてもいい。一升瓶で購入した醤油を、小分け用のボトルに詰め替える時片手をそっと添えておける。安心する。
 材質がいい。タフなステンレス、しかもこれは一枚板を打ち出して成形したものらしく、継ぎ目がないのだ。洗った後水が溜まったりサビが浮いたりしそうにない。安心。嬉しい。「畳めるシリコン」に憧れたこともあるが、たたみジワのところがびしょびしょするのが嫌い。醤油とかあぶらとかこびりつくのも嫌い。揚げ物鍋に残った油を、当地域では「天ぷら廃油」としてペットボトルに詰めて市に回収してもらってるのだけど、この油をペットボトルに移す時もこの漏斗が大活躍。使った後は古布で拭った後ためらいなく食洗機へイン。シンプルツルッとステンレス、とてもいい。

漏斗をもう一つ。

 これは、「ペットボトルにドボドボドボ」の時に使う。さっきのステンレスのものより大きい。「省スペースがいい」とあんたさっき言うてたやんか。ええ。言いました。でも、これはいいのです。とてもいいのです。
 うちの次男は「オレの血液はアイスティーでできている」と豪語する中学2年生である。なんでそんなに紅茶を気に入ったものか母にはさっぱりわからないが、とにかく毎年GWごろから盛んにアイスティーを飲みたがるようになる。学校へ持参する水筒の中身もアイスティー。しかも、トワイニングのアールグレイをストレート、甘みなしときたものだ。
 わたしの作るアイスティーはとても美味しい。
 「不味いと言わないのが美味しいと言うことだから察してくれ」が基本姿勢の夫も「あ、これどうしたの、美味いね」と言ったし、たまに遊びにくるわたしの両親は「ムスメの家で出てくるアイスティー」を楽しみにしている。たまにうっかり忘れていると「今日はアイスティーないの?」と請求が来る。
 今までアイスティーは水っぽいか渋いかのどちらかをガムシロでごまかして我慢して飲むものだと思っていたが、数年前Twitterで教えてもらった、「フランス人マダム直伝のアイスティー」これに出会ってから認識が全く変わった。とても美味しいのだ。

 鍋で2リットル。これがマダムのレシピで推奨される一度に作るアイスティーの量だ。一度に飲み切る量ではない。全然ない。で、いいものを見つけた。日本の緑茶のペットボトル(2リットル)。
 鍋からペットボトルの細い口に、フリーハンドで紅茶を移せますか。わたしにはできません。

画像1

この人たちならできるかもしれんけど。

さっきのステンの漏斗。あれはもちろん頼りになる。しかし、鍋をもつ手が狂うと、どかっと漏斗を溢れさせ中身をこぼすことになる。勿体無い。mottainai。それで、あの漏斗の出番である。(前置きが長すぎるに程がある)

 もう一回お目にかけときましょう。
 この漏斗はペットボトルの口のネジにピタリと合うように作られている。ここが一番すごいところだ。漏斗とペットボトルが一体化するので、ペットボトルさえぐらついたり倒れたりしなければ、何の憂いなく液体を注ぎ込むことができる。うっかり溢れても、とりあえず漏斗が受け止めといてくれる(サンキュー!)。使い終わったらサッと水で濯いでおけばすぐ片付けられる。
 キャップがついていて、「計量カップにもなります」とウリにしているが、これは蛇足だ。計量カップは計量カップが使いやすい。この漏斗くんには、漏斗としての機能でもっと胸を張ってもらいたい。キャップ無くしそうだし。

 夏の台所に立つのは辛い。温度湿度も辛いし、11時45分になると「腹減ったー」「昼ごはん何ー?」と電話してくる息子が二人いる(中2と高1です)(わたしは毎日12時半に帰宅すると言い続けて2年経つのに)。超手抜き飯を作成するにしても、使い勝手の良い可愛い相棒がキッチンにいてくれるのは大変にありがたいことである。

 あなたの相棒は、何ですか?

いいなと思ったら応援しよう!