コーポレートサイトのオウンドメディア化は継続できないならやらないほうが良い
現在、弊社でも新たなコーポレートサイトを制作している。そこで悩みどころの一つが「社内ブログ」を作るかということ。
ブログというメディアスタイルは、一昔前と違って今では誰にでも認知されている。さらに、企業が保有するブログ形式のメディアはオウンドメディアと呼ばれ、一時期かなり流行ったマーケティング手法だ。
これには以下のような強力なメリットがある。
サイト自体の更新性を高めることでSEO効果が期待できる
ロングテールで複雑な検索クエリを拾えることがある
企業(や個人事業主)のサービスや商品を周知できる
役員や社員の人柄を見せられる
インサイドセールスの起点にできる
自社保有のため資産となり、差別化も容易
だが、失敗例がないわけではない。ゆえに、弊社がそもそもオウンドメディアとして社内ブログを機能として組み込むべきかをnoteを書きながら考えてみる。
企業のオウンドメディアが失敗するケース
弊社がシステム開発会社であることもあり、オウンドメディア構築(WordPressのパターンもあればゼロベース構築のパターンもある)を依頼されたことは何度かある。
もちろん、依頼されれば開発するのだが、実際に運用がうまくいっているであろうケースは少ない。あらかじめ運用マニュアルや、社内運用を推進するための仕組みづくりをサポートしてもなんらかの原因で頓挫してしまうケースが多い。
だいたいまとめると原因は下記のようなものだ。
社内で認知されずにそもそも始まらない
更新作業が社内で押し付け合い(そして忘れ去られる)
初期に設定したターゲットキーワードをガン無視した記事を量産(特に多いのが更新担当者が休日行ったスポットや食事処紹介)
CVへのリンクや資料が更新されたがメディア側放置で成果なくなる
短期間で効果が出ないのでモチベーション低下
これらが多々発生するが、気持ちはわかる。
本来の業務に加えて効果があるかわかりづらいものに投資する時間がもったいない、めんどくさい、つらい。
かといってKPIを記事数にするのも間違っている。「我々は何を求めていたのだろう」と闇中模索状態になってしまうことも珍しくない。
オウンドメディアに求める成果を振り返る
もし貴社のオウンドメディアが失敗した、と感じているのであれば今一度見直してみよう。
弊社はまだ自社のオウンドメディアを公開してもいないので、未来の姿として創造してみる。
そもそも何を求めるべきか?
元来、オウンドメディアのようなコンテンツマーケティングはAIDMAよりもAISASモデルをベースに考えることが多い。(このAIXXXモデルは様々な種類があるが、一旦AIDMAとAISASだけ覚えておこう)
AIDMAは注意→関心→欲求→記憶→行動なのに対し、AISASは注意→関心→検索→行動→共有だ。
AISASモデルの中で、特に重要なのが検索と共有である。
顧客が何を探し求め、どのように顧客体験を共有できるか。
オウンドメディアはこれを取り入れやすいと言える。検索エンジンやSNSで検索し、ボタンひとつで簡単に共有できる。
つまり自社のオウンドメディアがバズることは一つの指標になるだろう。だが、実際にはバズることと売上向上はノットイコールである。なんなら認知度ともノットイコールである。
人はSNSで共有するとき、たいしてどの企業のなんの製品であるかを気にしていない。
だからこそ、自社の成果とは自社で考えるべきである。
「Aという商品を広告なしで◯万円売り上げる」とか「Bというサービスのリードを広告なしで◯件得る」とか。
そういった成果ありきでオウンドメディアが有効であるかを考えれば良い。
つまらない意地は張らなくていい
ここまで長々と語ったが、AIDMAもAISASも気にしなくていい。まず、そもそも何を求めているかが明確でない企業はオウンドメディアをやらなくていい。
ゴールに向かう手段としてオウンドメディアを使い、その中でマーケティングモデルを考えるべきだからだ。
なので、まずはオウンドメディアやマーケティングやらは頭の中から排除して、「顧客に何をもたらすことが成果なのか」を考えることが重要である。
「売上を上げる!」「認知度を増やす!」と声高らかに言ったところで顧客に価値を与えられない自己満足メディアでは意味を為さない。
すでにオウンドメディアをスタートさせており、形骸化してしまったものの、お金を払って調達し、コストを支払って運用している場合はもったいなく感じるかもしれない。
大丈夫。従業員の精神的苦痛や赤字垂れ流し状態で放置するより、捨てるほうがよっぽど健全だ。
それでも「復活させてやる!」「成果は決まっているからちゃんとやる!」と心に誓った運用担当者は腰を据えて見直す作業に入ろう。
こちらも大丈夫。先達たちがたくさん検証した結果を共有してくれている。
次の項で参考にするべきオウンドメディアを紹介しよう。
オウンドメディア運用で参考にするオウンドメディア
オウンドメディアを学ぶにはオウンドメディアを見るのが手っ取り早い。
しかし、ここで紹介するオウンドメディアは有名すぎてもはや紹介するほどでもないオウンドメディアたちである。
実際に参考にするべきは「同じ業態でうまくやっているオウンドメディア」である。製造業がIT屋と同じオウンドメディアを目指す必要はない。
これは「◯◯業 オウンドメディア」で調べたり、競合他社のWebサイトを片っ端から調査することでリスト化できる。
一旦、オウンドメディアを生業の一部としている企業のオウンドメディアを見ていこう。
ferret - マーケティング界の大御所・ベーシック社が運営するてんこ盛りオウンドメディア。今日からできる施策で溢れている。
LIG - オウンドメディアという言葉を広めた開拓者と言って過言ではないLIG社のブログ。最近では尖った記事が減ったものの、安定感は抜群。
ナイルのマーケティング相談室 - 最近上場したナイル社の根幹であるSEOやマーケティング特化メディア。役員の土居氏が著者の『10年つかえるSEOの基本』(2015年発売)はそろそろ10年使えたかわかる頃合い。
Web担当者Forum - Webメディア界の重鎮であるインプレス社運営のメディア。運営メディアすべてが強すぎて逆に参考にならない可能性すらある。
どれか1つでもいいからRSSでウォッチするなり、コンテンツを通読しておくと良い。
これらで基礎や最新情報がそこそこ身についた状態で見直し作業を言語化していこう。
見直しとモチベーション維持
では何をしたらいいんだ、という方向けにずらっとすべきことを書いていく。なお、これは過去に顧客に改善提案依頼をいただき実際に提出したものの見出しを改変したものである。
デザインの抜本的改善はしない
失敗したと感じる理由を書き出す
競合のやり方は真似していいがコンテンツは真似しない方針を作る
現在のサイト全体コンテンツの把握と分析(検索順位とか狙ったキーワードで検索インデックスに登場するかとか)
オウンドメディアのターゲット、ペルソナを思い出す
サイトマップを図化して再確認
PV数はKPIから排除
不必要なコンテンツの削除
リライト対象の選定(基準は独自性、権威性を高められるか)
低品質なコンテンツの削除、またはリライト
CTA位置のA/Bテスト
回遊率向上施策
GA4をちゃんと見て効果測定できるようにする
コンテンツ制作ワークフローの正規化
CV導線を増やせるか検討
KPI、KGIそのものの見直し
上記はメディア側目線での話となる。
以下は運用者側目線でモチベーションをどう維持するか、について。
今の運用担当者の精神状態チェック&ケア
コンテンツ制作ワークフローの正規化
責任者不在なら偉い人を1人責任者で置く(社内体制がなく1人運用なら覚悟を決めてもらう)
最初の目標を小さく置く(それなりの品質の記事を◯記事、とかで良い)
2つ目、3つ目の目標も小さく置く
1年後の目標も小さく置く
PVにつながらなくていいので共感されやすいSNSを開設していいね!で承認欲求を満たす
社全体に協力を仰ぎコンテンツ制作のネタ作りの元にする
記事制作後、社内で「書いたよ!」と公表してSlackなどでスタンプもらう
完璧を求めさせない
主に必要なのは続けるための仕組みづくりである。
CVが上がれば運用担当者のモチベーションも上がるが、それまでの期間をどう乗り切るかにとにかく注力すべきだ。
それでも頑張るオウンドメディア運用
こうやって休日に会社の代表者のくせにつらつらとnoteを書いているが、本質的にはオウンドメディアも同じでいいと感じる。
自分が悩んでいることはきっと誰かも悩んでいる。そんなときに頭の中だけで行う禅問答ではなく、言語化してアウトプットすることで整理できる上に誰かの役に立つ可能性もある。
それが専門的であればあるほど、オウンドメディアのコンテンツとして価値があることだ。
我々のように労働に汗を流す人間の経験や知恵はきっと誰かの役に立つ。そしていつかそれが多くの人に届く日が来るかもしれない。
その日のために、今日もキーボードを叩き続けたいものである。
まとめ
営業のアタックリストを作りながら、福岡のさまざまな企業のWebサイトを見ているが、やはりいくつもオウンドメディア化しようとした形跡だけ残るものが見つかった。
そういった企業に対して「頑張ってやり直しましょう!」なんて営業をかけることはできない。逆に「更新性ないのは逆効果になり得るので投稿日時非表示にするか、ブログ機能自体非表示にしちゃいましょう!」と言いたい。
モチベーションを高く維持することが当然だとは思わないし、誰かに強制する気もない。
ただただ業務の1作業として、流れるようにオウンドメディア運用をしていく形に持っていけるのが一番素敵だ。勉強と同じで、淡々と改善しながら継続できる人が一番強い。