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【水墨画】液体墨より固形墨のがいい理由

「墨汁(液墨)ではダメですか」と聞かれることがあります。
この質問には「ダメではないけど固形墨のがいい」と答えてます。

※墨汁・液体墨・墨液などいろいろ呼び方がありますが、ここでは液墨と表記します。

実際、液墨が使えないわけではないのです。ただ使い勝手のいい液墨を選ぶのも、調整するのも実はすごく難しくて面倒です。
墨と膠の特性や、紙との相性を考えて使うのはいいことです。しかし自分の表現に合った液墨に出会うまでには、コストも労力もかかるので最初は固形墨をおすすめしています。

こちらの記事に本当に簡単に墨のことを書いていますが、今回はもう少し具体的に墨について書いていきます。


■墨には色がある

墨は黒く見えますが、実際は色があります。
茶色がかった茶墨、青みがかった青墨など。紫系、赤系と書かれているものもあります。もちろん黒ではあるのですが、色味に少し違いがあるのです。

松煙墨(しょうえんぼく)と「油煙墨(ゆえんぼく)という種類があっって、煤の採り方や原料が違うのですが、この辺はいくらでもかけそうなので今回は省略します。

水墨画では青墨と書かれているものを使っている人が多いです。私も含め。

■液墨の種類

液墨には、膠(にかわ)を使用したものと 樹脂を使用したものがあります。それぞれ、メリットもデメリットもあるのですが、水墨画を描く上で気にすべき特徴を挙げてみます。

●膠系液墨
・固形墨に近い色が出る
・固形墨とブレンドできる(濃さが足りなければ固形墨で調整が可能)
・ゲル化を防ぐため少し塩分が入っている。ので、裏打ち前の乾燥に少し時間が必要。また紙を中性にするためにレジンドーサを最後にひいたほうが良い。

●樹脂系液墨
・裏打ちする際に滲んだり流れる可能性がある(そもそも表装不可な製品もある)
・製品以上に濃くすることはできない
・筆が少々痛みやすい

この特徴だけ見ると膠系の液墨で良さそうですが、液墨には基本的に使用期限があります。早いもので大体1年くらい。それ以上経つとゲル化したり、劣化して墨色も墨の伸びも悪くなる。あまり使わなかったとしても1年くらい経ったら捨てなくてはなりません。※製品によって使用期限には多少違いがあります。

■なぜ固形墨がいいのか

一番は、墨の濃度を調整しやすいことです。
自分で磨(す)るので、濃墨を好きな濃さにできます。少しトロッとした状態まで磨って、描く物によって濃淡を変えたりできるので幅広い墨色で作品を制作できます。

●裏打ちするときに墨が流れる心配がない
描いた紙が乾いてしまえば、墨が定着するので裏打ちのときに水で濡れても墨が流れて作品が崩れるということがない。これが液体墨だと、表装可と書いてある製品じゃないと流れてしまう可能性があります。

最近では、服についても落としやすい墨が売っていたりします。こういうのは必ず裏打ちで作品が流れくずれてしまいます。学童用ではありますが、何も知らないで水墨画を始めた人がうっかりこういった墨を使ってしまわないためにも固形墨をお勧めしてます

●劣化しにくい
液墨には使用期限があると書きました。固形墨にはそれがない。極度な感想や湿気を避けて保管しておけば、何年経っても使えます。

液墨のデメリットがないのが固形墨なのです。だから最終的にコスパも良い。(相当高級な墨でなければ)

■液墨はいろいろ試してみたけれど…

大きい作品を描くときは結構な量の墨を磨ります。これを少しでも時短できないかと考え、いろんな液墨を試しました。色は良くても濃さが足りなかったり、濃さは良くても色が思った墨色でなかったり…3つくらいのメーカーの膠系液墨と、濃墨とされているものはほぼ使ってみました。

その結果、今は固形墨を使っています。
結局、納得いくものに出会えないまま、使いこなせないままなので、固形墨がいちばん私には合っていると結論づけています。今のところ。

ただ、中には液墨でしかできない表現を、それに合わせた用紙や画材を使って描いている人もいます。話を聞くと、かなり試行錯誤してその表現に辿り着いたようです。だから、冒頭部分で「ダメではない」と書いたのです。人によっては、素晴らしい作品を生み出せるので。

■まとめ

墨というのは、一冊の本ができてしまうくらいに奥深いです。この記事は水墨画を描くために必要な知識と、最初に墨を買う際に失敗しないようにという思いで書いています。参考になったら幸いです。

ここまで読んでくださってありがとうございました。
ではまた。

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