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モルドヴァ共和国憲法 試訳

モルドヴァ共和国憲法
1994年7月27日制定

我々、モルドヴァ共和国国民を代表する国会議員は、
モルドヴァ共和国独立宣言によって表明された、主権国家を求める国民の世俗的願いから出発し
モルドヴァが国家として成長してきた歴史的、民族的枠組みの中で、モルドヴァ人の国家としての継続性に十分な配慮のうえ
モルドヴァ人とともにモルドヴァ共和国の国民を構成する諸民族の市民としての恵沢を確保に努め
法の支配、市民の平和、民主主義、人間の尊厳、基本的人権と自由、人格の自由な発展、正義、政治的多元主義を至高の価値として考慮し
過去、現在および将来の世代に対する責任と義務を自覚し
全人類の普遍的価値に対する献身と、全世界の人々が一致して認める国際法の原則及び基準に従って、平和と調和のうちに生活することへの希求を改めて表明し
我々はここにモルドヴァ共和国憲法を採択し、これを社会及び国家の最高法規と宣言する。


第1編
基本原則

第1条
モルドヴァ共和国

(1)モルドヴァ共和国は主権国家、独立国家、統一国家にして不可分である。
(2)国の統治形態は共和制とする。
(3)モルドヴァ共和国は、法の支配に属する民主的国家であり、国民の尊厳、権利及び自由、人格の自由な発展、正義並びに政治的多元性が保障されるべき至高の価値を表す。

第2条
主権及び国権

(1)国家主権はモルドヴァ共和国の国民に存し、国民は憲法の定めるところにより、直接かつ代表機関を通じてこれを行使する。
(2)いかなる私人も、いかなる民族的集団も、いかなる社会集団も、いかなる政党その他の公共団体も、自己のために国家権力を行使することを認めない。国家権力の簒奪は、国民に対する最も重大な犯罪とする。

第3条
領域

(1)モルドヴァ共和国の領土は不可侵である。
(2)国境は、国際法の原則と規範に基づき、基本法でこれを定める。

第4条
人権及び自由

(1)人権及び自由に関する憲法の規定は、世界人権宣言、慣例及び批准するその他の条約に従って解釈され施行される。
(2)モルドヴァ共和国が締結国である基本的人権に関する条約と国内法の間に不一致がある場合、国際法規を優先させるものとする。

第5条
民主主義と政治的多元主義

(1)モルドヴァ共和国の民主主義は、独裁又は全体主義とは相容れない政治的多元主義の条件の下、行使されるものとする。
(2)いかなる主義も、国家の公式主義として制定することはできない。

第6条
三権の分立と連携

立法権、行政権及び司法権は、憲法の規定に従って与えられた特権を行使するために、分立し連携する。

第7条
憲法 ―最高法規

モルドヴァ共和国憲法は国の最高法規とする。憲法の規定に反する法律又は法律行為は、法的効力を有さない。

第8条
国際法及び国際条約の遵守

(1)モルドヴァ共和国は国際連合憲章及び自国が締結している条約を遵守し、他国との関係は(訳者挿入:その国と)一致して認める国際法の原則及び規範に基づくと、ここに約束する。
(2)憲法に反する規定を含む国際条約の発効は、憲法の改正に先行するものとする。

第9条
財産に関する基本原則

(1)財産は公共財と私財から為る。財産は物的財産及び知的財産で構成される。
(2)いかなる財産も、人権、自由及び人間の尊厳を損なう使い方をしてはならない。
(3)市場、自由な経済活動及び公正な競争は、経済の主要な要素でなければならない。

第10条
国民統合及び国民意識の権利

(1)モルドヴァ共和国国民の団結は、国家の基礎を構成する。モルドヴァ共和国は全ての国民にとって共通かつ不可分の祖国である。
(2)国は全ての国民がその民族的、文化的、言語的及び宗教的アイデンティティを継承、発展及び表現する権利を認定し、これを保障する。

第11条
モルドヴァ共和国 ―中立国として

(1)モルドヴァ共和国は永世中立国であることを、ここに宣言する。
(2)モルドヴァ共和国は、自国領土に外国軍の駐留を認めない。

第12条
国の象徴

(1)モルドヴァ共和国は国旗、国章及び国歌を有する。
(2)モルドヴァ共和国の国旗は三色旗である。色は旗竿から見て縦に青、黄、赤の順とする。三色旗の黄色部中央に、モルドヴァ共和国の国章を置く。
(3)モルドヴァ共和国の国章は、水平に2分割された盾から為る。即ち上部は赤、下部は青とし、オーロックスの頭部を重ね、その角の間に8角の星を描く。オーロックスの右頭部に5枚の花弁を持つ薔薇を、左頭部にわずかに回転させた半月を置く。盾に描かれる紋章の構成部分は全て金色(黄色)である。盾は、嘴に金十字、右の爪に緑のオリーブの木の枝、左の爪に金笏を持つ野生の鷲の胸の上に置く。
(4)モルドヴァ共和国の国歌は、基本法でこれを定める。
(5)国旗、国章及び国歌は、モルドヴァ共和国の国の象徴であり、象徴として法律によって保護される。

第13条
国語及び他言語の使用

(1)モルドヴァ共和国の国語はラテンアルファベットに基づくモルドヴァ語とする。
(2)国はロシア語および国の領域内で話されているその他の言語の保存、発展及び使用に関する権利を認め、これを保護する。
(3)国は、国際的に広く使用されている外国語の学習を奨励し、促進する。
(4)モルドヴァ共和国の領域内における言語の使用は、基本法でこれを定める。

第14条
首都

モルドヴァ共和国の首都はキシナウとする。

第2編
基本的権利、自由及び義務

第1章
通則

第15条
普遍性

モルドヴァ共和国の全ての国民は、憲法およびその他の法によって与えられる権利及び自由を享受し、これによって定められた義務を負うものとする。

第16条
平等

(1)個人の尊重と保護は、国家の最も重要な義務である。
(2)モルドヴァ共和国の全ての国民は、人種、国籍、民族、言語、宗教、性別、意見、政治的所属、財産、社会的出身に関わらず法と公的機関の前で平等である。

第17条
モルドヴァ共和国の市民権

(1)モルドヴァ共和国の市民権は、基本法の条件の下、取得、維持又は剥奪されるものとする。
(2)何人も、恣意的にその市民権又は市民権を変更する権利を奪われることはない。
[第17条は2002年11月21日付法律第1469-XV号(2002年12月12日公告モルドヴァ官報第169号記事1290掲載)で改正]
[]内はおそらく誤訳、以下同。英文では"Art. 17 amended by the Law no.1469-XV of 21.11.02, MO no.169/12.12.02, art. 1290"

第18条
モルドヴァ共和国国民の保護

(1)モルドヴァ共和国の国民は、国内及び国外の双方において、国の保護の利益を享受する。
(2)モルドヴァ共和国の国民は、国外送還又は追放されることはない。
[第18条は2002年11月21日付法律第1469-XV号(2002年12月12日公告モルドヴァ官報第169号記事1290掲載)で改正]

第19条
外国籍市民と無国籍者の法的地位

(1)外国籍市民及び無国籍者は、法律に定める例外を除き、モルドヴァ共和国国民と同様の権利及び義務を享受する。
(2)外国籍市民及び無国籍者は、互恵的国際協定又は裁判所の決定に基づいてのみ、引き渡しされる。
(3)亡命の権利は、法律に基づき、モルドヴァ共和国が批准する国際条約を遵守して付与され、剥奪されるものとする。
[第19条は2002年11月21日付法律第1469-XV号(2002年12月12日公告モルドヴァ官報第169号記事1290掲載)で改正]

第20条
裁判を受ける権利

(1)何人も、自己の正当な権利、自由及び利益を侵害する行為に対して、管轄の裁判所で裁判を受ける権利を有する。
(2)いかなる法も、裁判を受ける権利を制限できない。

第21条
推定無罪

容疑者は、法的根拠に基づき有罪とされるまでは無罪と推定され、弁護のために必要な全ての保障が確保された公開裁判に付される。

第22条
法の不遡及

何人も、その行為が行われた時点において、犯罪を構成しなかった行為について判決又は不利益を受けない。犯罪が行われた時点で適用される刑罰よりも重い刑罰を科されない。

第23条
全ての人が自己の権利と義務について認識する権利

(1)何人も、法的地位を認識する権利を有する。
(2)国は、全ての者が自己の権利及び義務を認識する権利を確保する。そのため国は、全ての法律及びその他の規範的決議を公表し、かつ利用しやすいようにしなければならない。

第2章
基本的権利及び義務

第24条
生命と身体的及び精神的尊厳の権利

(1)国は、全ての個人に対し、生命、身体的及び精神的尊厳に対する権利を保障する。
(2)何人も、拷問又は残虐な、非人道的もしくは品位を傷つける刑罰や待遇を受けない。
(3)死刑は廃止する。何人も死刑判決を受けず、又執行されない。
[第24条(3)は2006年6月29日付法律第185-XVI号(2006年7月14日公告モルドヴァ官報第106-111号記事502掲載)により修正]
[第24条(3)は2001年7月12日付法律第351-XV号(2001年8月2日公告モルドヴァ官報第90-91号記事699掲載)により改正]

第25条
個人の自由及び安全

(1)個人の自由及び安全は不可侵である。
(2)捜索、身柄拘束又は逮捕は、法に定められた場合及び手続に従ってのみ認められる。
(3)身柄拘束の期間は、72時間を超えることができない。
[第25条(3)は2001年7月12日付法律第351-XV号(2001年8月2日公告モルドヴァ官報第90-91号記事699掲載)により改正]
(4)勾留は、裁判官の発する令状に基づき、最長で30日間行われるものとする。逮捕状の有効性に対しては、法律に基づき、より高位の裁判所に上訴することができる。勾留の期間は、法律に基づき、裁判官又は裁判所によってのみ、12ヶ月を超えない範囲で延長することができる。
[第25条(4)は2001年7月12日付法律第351-XV号(2001年8月2日公告モルドヴァ官報90-91号記事699掲載)により改正]
(5)勾留又は逮捕されている者は、直ちにその勾留又は逮捕の理由を知らされ、かつ能う限り速やかに自己に対する告発を通知されるものとする。告発の通知は、弁護士の私選又は公選のうえ、その弁護士の立会の下にのみ行うものとする。
(6)身柄拘束又は逮捕の理由がなくなった場合には、遅滞なく関係者の釈放をしなければならない。

第26条
抗弁の権利

(1)抗弁の権利は保障される。
(2)何人も、自己の権利及び自由の侵害に対して、適当な手段により独立して応弁する権利を有する。
(3)当事者は、裁判の間、私選又は公選で指名された弁護士による援助を受ける権利を有する。
(4)法律上、確立された範囲内で抗弁を行う者の活動を妨害することは、法律で罰する。

第27条
自由な移動の権利

(1)国内間の自由な移動の権利は保障する。
(2)モルドヴァ共和国の全ての国民は、国内の何処にも居住し、海外旅行、移住、帰国する権利を保障される。

第28条
私生活及び家庭生活

国は、私生活及び家庭生活を尊重し、これを保護する。

第29条
住居の不可侵

(1)住所及び居所は不可侵である。何人も、その所有者の承諾を得なければ、住居の敷地に立ち入り又はその敷地に留まることができない。
(2)法律は以下の状況において、(1)の規定の適用除外を認める。即ち、
 a)逮捕状又は裁判所の判決の実行、
 b)個人の生命、身体、財産を脅かす差し迫った危険の除去、
 c)伝染病の蔓延防止。
(3)現場での捜索及び捜査は、法律に基づいてのみ命令され、実行される。
(4)夜間の家宅捜索は、現行犯を除き、これを禁止する。

第30条
通信の秘密

(1)国は、信書、電報、その他郵便の発送、電話の通話及びその他適法な通信手段の秘密を保護する。
(2)(1)の規定は、国家の安全、国の経済的福祉、公の秩序及び犯罪の予防のために必要な場合にのみ、法律によって適用を除外できる。
[第30条(2)は2001年7月12日付法律第351-XV号(2001年8月2日公告モルドヴァ官報第90-91号記事699掲載)により挿入]

第31条
良心の自由

(1)良心の自由は保障され、及びその発現は寛容と相互尊重の精神に基づくものでなければならない。
(2)宗教団体の自由は保障され、法律に基づき、それぞれの定款に従って組織されるものとする。
(3)宗教団体が、その相互関係において、憎悪や敵意を利用、表現、扇動することを禁じる。
(4)宗教団体は、国家から分離され、自律的でなければならず、又、軍、病院、刑務所、精神病院及び孤児院における宗教的援助のためのあらゆる便宜を含む支援を享受するものとする。

第32条
意見及び表現の自由

(1)全ての国民は、思想及び意見の自由並びに公の場における言論、映像その他可能な手段による表現の自由を保障されるものとする。
(2)表現の自由は、他人の名誉、尊厳又は自己の意見もしくは判断を表明する権利を害するものであってはならない。
(3)国家と国民の否定と中傷、扇動、侵略戦争、国家的又は人種的又は宗教的憎悪、差別の扇動、領土分離主義、公共の暴力、その他憲法秩序を侵害する行為を目的とする全ての行為を禁じ、訴追する。

第33条
創造の自由

(1)科学的及び芸術的な作品を創作する自由はこれを保障する。創造的作品は、検閲の対象とならない。
(2)知的財産に対する国民の権利、各種知的創造物に関する国民の物心両面の利益は、法律により保護されるものとする。
(3)国家は文化及び科学における国内及び世界の業績の保存、発展及び伝播に寄与するものとする。

第34条
情報公開権

(1)公共の利益となるあらゆる種類の情報を得るための権利は、制限されてはならない。
(2)公的機関は、その与えられた権限に従って、国民が公的な事柄と個人的な関心事の両方について、正しい情報を得られるように努めなければならない。
(3)情報公開権は、国民を保護するためにとられる措置や、国家の安全を損なうものであってはならない。
(4)国及び民間の公共メディアは、世論の正しい情報を提供する義務を負う。
(5)公共メディアは、検閲の対象とはならない。

第35条
教育の権利

(1)教育を受ける権利は、義務教育、中等教育及び職業教育、高等教育並びにその他の形態の教育及び継続的な訓練によって確保される。
(2)国は、法律の定めるところにより、国民の教育及び訓練の言語を選択する権利を保障する。
(3)公用語の学習は、あらゆる種類の教育機関において確保される。
(4)国の公教育は無償とする。
(5)教育機関は、国の財政的援助を受けていないものも含め、設立され、法律に従って運営されるものとする。
(6)高等教育機関は、自治権を享受する。
(7)国の中等、職業及び高等教育は、個人の長所に基づき、何人もこれを利用できる。
(8)国は、法律に基づき、宗教教育の自由を保障する。国の教育制度は無宗教とする。
(9)親は、自分の子どもに適切な教育分野を選択する優先的な権利を有する。

第36条
健康保護の権利

(1)健康保護の権利は保障される。
(2)国が提供する最低限の健康保護は、無料で提供される。
(3)国民健康保険制度の構造及び個人の身体的及び精神的健康の保護を目的とする手段は、基本法でこれを定める。

第37条
環境権

(1)全ての人は、生態学的に安全で健康的な環境に住み、健康的な食品を摂り、無害な家電製品を使用する権利を持つ。
(2)国は全ての個人に対し、自然環境の状態、生活及び労働の条件並びに食糧及び家庭用品の品質に関する信頼に足る情報に自由に触れ、及びこれを普及させる権利を保障する。
(3)人体に無害な要素に関する情報の隠蔽や歪曲は、法律によってこれを禁じる。
(4)私人及び法人は、生態系への侵害により人の健康や財産に生じた損害について責任を負う。

第38条
選挙権及び被選挙権

(1)民意は国家権力の基礎を為す。民意は普通、平等、直接、秘密及び自由に表明された投票により、定期的に行われる自由な選挙によって表明される。
(2)投票日までに18歳に達するモルドヴァ共和国の国民は、法律で投票を禁じられた者を除き、投票する権利を有する。
(3)被選挙権は、法律に基づき、選挙権を有するモルドヴァ共和国の全ての国民に保障される。

第39条
行政参画権

(1)モルドヴァ共和国の国民は、公務の運営に直接参加する権利と、代理人を通じて参加する権利を享受する。
(2)公職に就くことは、法律に基づき、モルドヴァ共和国の全ての国民に保障される。

第40条
集会の自由

集会、デモ、示威行為、行進又はその他の集会は自由であり、平和的及びいかなる種類の武器も不使用な時のみ組織され、実施できる。

第41条
政党及びその他社会・政治的結社の自由

(1)全ての国民は、政党及びその他の社会的・政治的団体に所属する自由を有する。これらの組織は、法律に基づき、市民の政治的意思の定義と表明に貢献し、又選挙手続きに参加しなければならない。
(2)全ての政党及びその他の社会・政治的団体は、法の下に平等である。
(3)国は、政党及びその他の社会・政治的団体の正当な権利及び利益の保護を確保する。
(4)政治的多元主義、法の支配、主権、独立、モルドヴァ共和国の領土一体性の原則と戦うことを目的又は活動とする政党及びその他の社会・政治的団体は、違憲と宣言する。
(5)いかなる秘密結社も、これを禁じる。
(6)外国籍者による政党運営は、これを禁じる。
(7)政党に所属できない公職は、基本法でこれを定める。

第42条
労働組合の設立及び加入権

(1)全ての被雇用者は、自己の利益を守るために労働組合を結成し、これに加入する権利を有する。
(2)労働組合は、法律に基づき、その定款に従って設立され運営される。労働組合は、従業員の職業的、経済的、社会的利益の保護に貢献する。

第43条
労働権及び労働者保護

(1)何人も、労働権、職業及び職場を自由に選択する権利、公平で満足のいく労働条件並びに失業にたいする保護を享受する。
(2)全ての被雇用者は、労働の社会的保護を受ける権利を有する。保護の措置は、労働安全衛生、女性及び若年者の労働条件、最低賃金の導入、週休及び年次有給休暇、並びに困難な労働条件及びその他特定の状況に対処するものとする。
(3)1週間の労働時間は、40時間を超えてはならない。
(4)労使協定を締結する権利及び労使協定の拘束力は保障される。

第44条
強制労働の禁止

(1)強制労働は、これを禁じる。
(2)以下の事項は強制労働と見做さない。
 a)法律に基づき、徴兵免除者の行う軍事行動又はその代替行動、
 b)拘禁又は条件付釈放の期間内に通常の条件で行われる受刑者作業、
 c)災害又はその他危機対処に必要な従事及び法律で定められた通常の市民義務の一部。

第45条
ストライキ権

(1)ストライキ権はこれを認める。ストライキは、被雇用者の経済的、社会的、職業的利益を保護する目的に限り実行できる。
(2)法律は、ストライキ権の行使を規定する条件と、ストライキの違法な解除に対する責任を定めるものとする。

第46条
私有財産権及びその保護

(1)私有財産の所有権及び国が負担する債務は、これを保障する。
(2)何人も、法律の定める公益上の目的でなければ、あらかじめ定めた公正な対価に反して、収用されることはない。
(3)正当に取得された資産は、差し押さえることができない。資産取得の適法性は推定される。
(4)軽犯罪または犯罪のために使用され、又はこれによって生じた資産は、法律に基づいてのみ差し押さえることができる。
(5)私有財産を所有する権利は、環境保護と良好な近隣関係の維持に関する義務、及び法律に基づき所有者に課されたその他の義務を遵守することを約束するものである。
(6)私有財産を相続する権利は、これを保障する。

第47条
社会的支援と保護を受ける権利

(1)国は、全ての者が、衣食住、医療及び必要な社会サービスを含む本人及びその家族の健康の保護及び福祉を確保するための適正な生活水準を有するよう、措置を講じなければならない。
(2)全ての国民は、失業、疾病、身体障碍、寡婦、老齢その他自己の支配し得ない事由により生活必需品を得る源泉又は手段を喪失した場合に、生活保護を受ける権利を有する。

第48条
家族

(1)家族は、社会の自然かつ基礎的な要素であって、国家及び社会からの保護を享受するものである。
(2)家族は、男女の自由な合意による婚姻、男女の権利の平等及び父母がその子の養育と教育を保障する権利と義務に基いて成立する。
(3)婚姻、離婚、又は無効にするための条件は、法律で定める。
(4)子どもは、親を扶養し、必要な援助をする義務を負う。

第49条
家族及び孤児の保護

(1)国は、経済的及びその他の手法により、家族の形成及びその義務の遂行を容易にするものとする。
(2)国は、必要な制度の整備を促進することにより、母性、児童、及び若年者を保護しなければならない。
(3)親の監護を受けない孤児及び児童の保護、養育及び教育を目的とする一切の事項は、国及び社会に属させなければならない。国は、これらの児童のために慈善活動を促進し、支援する。

第50条
母親、児童及び若年者の保護

(1)母及び子は、特別の援助及び保護を受ける。非嫡出子も含め、全ての児童は同一の社会的保護を享受する。
(2)児童及び若年者は、その権利を追求するため、特別の援助を受けることができる。
(3)国は、児童に必要な手当及び疾病又は障碍児の看護に必要な補助を与える。児童及び若年者に対するその他社会的扶助の形態は、法律でこれ定める。
(4)未成年者の搾取、健康及び道徳心を害する恐れのある活動、及び生命や正常な発達を脅かす恐れのある活動に参加させることは、これを禁じる。
(5)公的機関は、若年者が国の社会的、経済的、文化的及びスポーツ生活に自由に参加することができるよう、適切な条件を確保する義務を負う。

第51条
障碍者の保護

(1)障碍者は、社会全体から特別の保護を受ける。国は、障碍者の医療及びリハビリテーション、教育、訓練並びに社会的統合のための正常な条件を確保しなければならない。
(2)何人も、法律に定める場合を除き、強制的な医療行為に服されない。

第52条
請願権

(1)全ての国民は、署名者のためにのみ作成された請願書によって、公的機関に請願する権利を持つ。
(2)合法的に設立された団体は、その代表する団体を代表して、専ら請願を提出する権利を有する。

第53条
国家賠償請求権

(1)行政行為又は法的期間内に苦情を解決しなかったことにより、公的機関から権利を害された者は、宣言した権利の承認、行為の取消、損害賠償の支払いを受ける権利を有する。
(2)国は、捜査機関及び裁判所の刑事訴訟における過失により生じた不利益について、法律の定めるところにより、財産上の責任を負う。

第54条
特定の権利又は自由の行使の制限

(1)モルドヴァ共和国において、個人及び市民の基本的権利及び自由を抑制又は制限する恐れのある法律を採択することはできない。
(2)権利及び自由の行使は、法律に定めるものであって、国際法の全会一致で認められた規範に適合し、かつ次のような場合に要求されるものでなければ、他の制限に服させることはできない。即ち、国家の安全、領土保全、国の経済福祉、集団暴動及び犯罪を防止するための公安、他者の権利及び自由並びに尊厳の保護、秘密情報の開示防止又は司法権及び公平を保障すること。
(3)(2)の規定は、第20条から第24条に規定する権利の制限を認めるものではない。
(4)制限は、その原因となった状況に応じたものでなければならず、かつ権利又は自由の存立に影響を及ぼすものであってはならない。
[第54条は2001年7月12日付法律第351-XV号、(2001年8月2日公告モルドヴァ官報第90-91号記事699掲載)により改正]

第3章
基本的義務

第55条
権利及び自由の行使

何人も、他の者の権利及び自由を侵害することなく、誠実に、憲法で定められた権利及び自由を行使しなければならない。
[第55条は2001年7月12日付法律第351-XV号、(2001年8月2日公告モルドヴァ官報第90-91号記事699掲載)により改正]

第56条
国家への忠誠

(1)国家への忠誠は神聖である。
(2)公職に就くことを委託された市民及び軍人は、国家に対する忠実な義務の履行について責任を負い、法律が定める場合には、その要求に従い宣誓をしなければならない。

第57条
祖国の防衛

(1)祖国の防衛は国民一人ひとりの神聖な権利であり義務である。
(2)軍は、法律に従い、国防、国境警備、公共の秩序の維持のため、軍事行動を実行するための枠組みを構成する。

第58条
財政的貢献

(1)国民は、義務や税金によって、公的支出に貢献する責務がある。
(2)法定納税制度は、税負担の公平な配分を保証するものでなければならない。
(3)その他の税は、法律で定められたものを除き、禁止される。

第59条
環境及び記念碑の保護

環境及び歴史的、文化的建造物の保全は国民一人ひとりの義務とする。

第3編
公的機関

第4章
議会

第1節
組織及び機能

第60条
国会―最高代表及び立法機関

(1)議会はモルドヴァ共和国国民の最高代表機関であり、国家唯一の立法機関である。
(2)国会は101名の議員で構成される。

第61条
国会議員選挙

(1)国会議員は、普通、平等、直接、秘密及び自由に表明された投票によって選出される。
(2)法は、選挙を組織し、実施するための手続を定めなければならない。
(3)国会議員選挙は、任期満了又は前国会の解散後3カ月以内に実施される。

第62条
国会議員の職務権限の検証

中央選挙管理委員会から提出された提案を受け、憲法裁判所は、国会議員の職務権限を検証し、かつ選挙法が侵害されていた場合の選挙無効を決定する。

第63条
任期

(1)国会議員の任期は4年とする。但し戦時又は国難の際、法律に基づいてこれを延長できる。
(2)議会は、モルドヴァ大統領により、選挙日から最大でも30日以内に招集される。
(3)国会の権限は、新たに選出された議員の法定招集まで延長されるものとする。この間、憲法を改正することはできず、又、いかなる法律も採択、改正又は廃止することはできない。
(4)前国会の議事日程に含まれる法案または立法案は、新国会において継承されるものとする。

第64条
内部組織

(1)国会の構成、組織及び機能は内部規則でこれを定める。議会の財源は、議会が事後承認する予算に予見される。
(2)議長は、無記名投票により、任期中の選出された国会議員の過半数の賛成により選出される。議長は、議会の無記名投票により、総議員の3分の2以上の賛成で、いつでもこれを解任される。
(3)副議長は国会議長の提案により、国会の各会派と協議の上、選出される。

第65条
審議の公開

(1)国会審議は公開される。
(2)国会は、特定の審議を非公開にできる。

第66条
基本的権限

国会は、以下に掲げる基本的権限を有する。
 a)法律、決議、動議の採択、
 b)国民投票の実施を宣言、
 c)法解釈の提供及び全国一律の法規制の確保、
 d)国の内外政策の主要な方向性の承認、
 e)国家の軍事方針の承認、
 f)憲法が定める方法と範囲において行政権に対する議会の統制、
 g)モルドヴァ共和国が締結した国際条約の批准、解除、停止、廃止、
 h)国家予算の承認及びその統制、
 i)借款の配分、外国に供与される経済的又はその他の援助、国債に関する協定及び外国債券についての監督、
 j)法律の定めるところにより、国家公務員の選出及び任命、
 k)モルドヴァ共和国の叙勲及び褒章の承認、
 l)軍の部分又は総動員の宣言、
 m)国家非常事態、戒厳、戦争の宣言、
 n)公共の利益に関わるあらゆる事柄の調査及び聴聞会の開始、
 o)法律で定めるところにより、地方行政機関の活動停止、
 p)恩赦の採択、
 q)憲法及び法律の定めるところにより、その他の権限を行使する。

第67条
国会議事

(1)国会は年に2回、通常国会として招集される。第1会期は2月に始まり、7月末日を越えて会期を延長することはできない。第2会期は9月に始まり、12月末日を越えて会期を延長することはできない。
(2)議会はまた、モルドヴァ共和国大統領、議長又はその構成員の3分の1の要求により、臨時または特別国会として招集される。

第2節
議員の地位

第68条
代表権能

(1)国会議員は、その職務権限を行使するにあたり、国民に奉仕する立場にある。
(2)いかなる命令委託も無効である。

第69条
議員権能

(1)国会議員は、事前確認の前提の下、職務権限を行使する。
(2)議員権能は、直近選挙の議会の合法的招集、議員辞職、権能の辞退、議員資格不適格、又は死亡の場合に消滅する。

第70条
不適格事項及び免責

(1)国会議員は、教学活動や科学活動を除き、他の報酬を受ける職と両立できない。
[第70条(1)は2002年11月21日付法律第1470-XV号、(2002年12月12日公告モルドヴァ官報第169号記事1292掲載)により改正]
(2)その他の不適格事項は、基本法でこれを定める。
(3)国会議員は、あらかじめ国会の同意を得、かつ当該議員の意見を聴かなければ、現行犯の場合を除き、逮捕、捜索、又は法律上の訴えを提起されることはない。

第71条
意見の独立性

国会議員は、その権限の行使において、表明した投票又は意見において、起訴又は法的責任を問われない。

第3節
立法行為

第72条
法律の分類

(1)国会は、憲法的法、基本法及び一般法を採択する権限を授与される。
(2)憲法的法とは憲法改正を目的とした法律である。
(3)基本法で規定するのは以下のとおり、
 a)選挙制度、
 b)国民投票の運営及び実施、
 c)国会の組織及び機能、
 d)政府の組織及び機能、
 e)憲法裁判所、最高司法評議会、一般裁判所及び行政裁判所の組織と機能、
 f)地方自治体の組織、領域、及び地方自治の一般規定、
 g)政党の組織及び機能、
 h)排他的経済水域設定手続き、
 i)私有財産及び相続に関する一般的な法規制、
 j)労働関係、労働組合、社会的保護に関する一般的な規制、
 k)教育制度全般の構造、
 l)宗教団体の一般的な規制、
 m)国家非常事態、戒厳及び宣戦の規制、
 n)刑事犯罪、刑罰及びその執行手続き、
 o)恩赦及び釈免の付与、
 p)その他憲法で基本法採択の必要性を定める分野、
 r)その他国会が基本法制定を推奨する分野、
(4)一般法は、憲法及び基本法に規制する領域を除き、社会関係のいかなる分野にも介入する。

第73条
立法府の発議権

立法府の発議権は、国会議員、モルドヴァ共和国大統領、政府及びガガウズ自治区の人民議会に帰属する。
[第73条は2003年7月25日付法律第344-XV号(2003年8月8日公告モルドヴァ官報第170-172号記事721掲載)により改正]

第74条
法律及び決議の成立

(1)基本法は、少なくとも2回の読会に付され、選挙で選出された国会議員の過半数の賛成を以って採択される。
(2)一般法及び決議は、国会に出席した議員の過半数の賛成を以って採択される。
(3)政府提出法案、及び政府が受理した議員立法案は、緊急時の手続きも含め、国会の慣例及び政府が定めた優先順位に従い審議される。その他の立法行為は定められた方法により審議される。
[第74条(3)は2000年7月5日付法律第1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により(4)の前に挿入]
(4)法律はモルドヴァ共和国大統領に提出され、公布される。

第75条
国民投票

(1)モルドヴァ社会及び国家が直面する最も重要な問題は、国民投票によって解決されるものとする。
(2)共和国国民投票の結果に基づいて採択された決定は、最高の法的権限を有する。
[1994年10月20日公告モルドヴァ官報第10号により改正挿入(第75条は(2)により補足)]

第76条
法の施行

法律は『モルドヴァ官報』に掲載され、その掲載日又はその本文で指定された日に発効するものとする。掲載されない限り、その法律は存在しないものとみなされる。

第5章
モルドヴァ共和国大統領

第77条
モルドヴァ共和国大統領―国家元首

(1)モルドヴァ共和国大統領は国家元首とする。
(2)モルドヴァ共和国大統領は、国家を代表し、国家主権、独立、国家の統一性と領土の一体性の保証者でなければならない。

第78条
大統領選挙

(1)モルドヴァ共和国大統領は、自由意思による普通、平等、直接、秘密投票によって選出される。
(2)いかなるモルドヴァ共和国国民も、選挙権を有し、40歳以上で、モルドヴァ共和国領土に10年以上居住又は永住しており、国の公用語を話すという条件の下、大統領選挙に立候補できる。
(3)大統領選挙で、少なくとも過半数の得票をした候補者が、新大統領として宣言される。
(4)第1回目の投票の結果、過半数を得票した候補者がいない場合、第1回目の投票において得票数の多かった順に候補者の中から2名選出され、第2回目の投票が行われるものとする。得票数が反対票数より多いという条件で、第2回目の投票で最も得票した候補者が新大統領として宣言される。
(6)モルドヴァ共和国大統領選挙の手続きは、基本法によって規定される。
[第78条(1)、(3)及び(4)は2016年3月4日付憲法裁判所判決第7号に基づき復活]
[第78条は2000年7月5日付法律第1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により改正]

第79条
権能の確認及び宣誓

(1)憲法裁判所は、モルドヴァ共和国大統領職の選挙結果を確証する。
(2)選挙後最長45日以内に、当選が確定した候補者は国会及び憲法裁判所において以下の宣誓をしなければならない。
「私はモルドヴァ共和国の繁栄のために、個人のあらゆる力と能力を捧げ、憲法と国の法律を遵守し、民主主義、基本的人権と自由、モルドヴァの主権、独立、統一、領土の一体性を擁護することを厳粛に誓います。」

第80条
任期

(1)モルドヴァ共和国大統領の任期は4年とし、宣誓をした日から開始するものとする。
(2)モルドヴァ共和国大統領は、新たに選出された大統領が宣誓するまでの間、その職務権限を行使する。
(3)モルドヴァ共和国大統領の職務権限は、戦時又は災害の場合、基本法により延長することができる。
(4)何人も、モルドヴァ共和国大統領職を、2任期連続を越え、遂行することはできない。
[第80条(4)は2000年7月5日付法律第1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により挿入]

第81条
不適格事項及び免責

(1)モルドヴァ共和国大統領職は、他の報酬を受ける地位の保持と両立しないものとする。
(2)モルドヴァ共和国大統領は免責特権を享受する。モルドヴァ共和国大統領は、その権限の行使において表明された意見について法的責任を負わないものとする。
(3)国会は、その構成員の少なくとも3分の2の賛成に基づき、モルドヴァ共和国大統領が不法行為を犯した場合、その起訴を決定することができる。最高裁判所は、法律に基づく起訴権が付与される。大統領は、裁判所の判決が確定した日に、法的に解任されるものとする。

[第82条は2000年7月5日付法律第1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により削除]

[第83条は2000年7月5日付法律第1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により削除]

第84条
教書

(1)モルドヴァ共和国大統領は、国会審議に出席できる。
(2)モルドヴァ共和国大統領は、国家の重大事に関する教書を国会で演説する。

第85条
国会の解散

(1)政府の樹立が不可能な場合、又は法律の採択手続きが3カ月間滞った場合、モルドヴァ共和国大統領は、国会の各会派と協議のうえ、国会を解散できる。
(2)国会は、最初の要請から45日以内に新政府樹立のための信任投票を受け入れなかった場合及び少なくとも2回の就任要請を拒否した場合にのみ、解散することができる。
(3)国会は、1年間に1度だけ解散できる。
(4)国会は、モルドヴァ共和国大統領任期の最後の6カ月以内、又は非常事態、戒厳、戦時中は解散することはできない。
[第85条(4)は2016年3月4日付憲法裁判所判決第7号に基づき改正]
[第85条(4)は2000年7月5日付法律第1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により改正]

第86条
外交政策分野での権限

(1)モルドヴァ共和国大統領は、モルドヴァ共和国を代表して公式に交渉を行い、国際条約を締結し、法律に定められた方法と期限で国会に提出し、批准させる権限を有する。
(2)モルドヴァ共和国大統領は、政府の提案により、モルドヴァ共和国の外交官の任命および罷免を行い、同様に外交団の設立、解散又序列の変更を承認する。
(3)モルドヴァ共和国大統領は、駐モルドヴァ共和国の外交公館代表の信任状及び召喚状を受領する。

第87条
国防分野での権限

(1)モルドヴァ共和国大統領は、軍の最高司令官である。
(2)モルドヴァ共和国大統領は、国会の事前承認を得て、部分又は総動員を宣言できる。
(3)モルドヴァ共和国大統領は、国に対する武力侵略があった場合、侵略を撃退するために必要な措置を講じるとともに、戦争状態を宣言し、この状態を遅滞なく議会に認めなければならない。国会が閉会中の場合は、侵略が開始されてから24時間以内に合法的に招集されるものとする。
(4)モルドヴァ共和国大統領は、国家の安全及び公の秩序を確保するため、法律の範囲内で、その他の適切な措置をとることができる。

第88条
その他の権限

モルドヴァ共和国大統領は、以下の職務を遂行する。
 a)勲章及び栄典の授与、
 b)法律の定めるところによる元帥号の授与、
 c)モルドヴァ共和国に関する市民権の問題の解決及び政治亡命の許可、
 d)法律の定めるところによる公務員の任命、
 e)恩赦、
 f)国の利害に関する事項について、国民投票による国民の意思表示の要求、
 g)外交官職位の授与、
 h)法律に基づき、検察機関、裁判所、その他公務員に対する上級職位の授与、
 i)憲法裁判所の最終判決の通達まで、法に反する政府の行為の停止、
[1994年8月19日付モルドヴァ官報第1号第2部<第88条はi)が補足され、旧来のi)はj)となる>により改正挿入]
 j)法律の定めるところによりその他の権限を行使。

第89条
職務停止

(1)モルドヴァ共和国大統領は、憲法の規定に違反する重大な犯罪を犯した場合、国会議員の3分の2以上の賛成により、その職務を停止される。
(2)停職を要求する動議は、少なくとも議員の3分の1の要求により起草され、遅滞なく大統領の知るところとならなければならない。大統領は、国会において、問責される行為について弁明することができる。
(3)大統領の停職動議が可決された場合、30日以内に大統領解職を問う国民投票を実施しなければならない。
[第89条は、2016年3月4日付憲法裁判所判決第7号に基づき復活]
[第89条は、2000年7月5日付法律第1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により改正]

第90条
空席

(1)モルドヴァ共和国大統領の空席は、職務の満了、辞任、解任、職務遂行の決定的不可能性、又は死亡の結果として宣言されるものとする。
(2)モルドヴァ共和国大統領による辞任要望は、国会に提出され、国会はそれに対する意見を表明するものとする。
(3)モルドヴァ共和国大統領が、60日以上職務を遂行できないことは、憲法裁判所に申請書が提出されてから30日以内に確認されるものとする。
[第90条(3)は、2000年7月5日付法律第1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により挿入]
(4)モルドヴァ共和国大統領職が空席となった日から2ヶ月以内に、法律に基づいて、新しい大統領選挙を実施しなければならない。
[第90条(4)は、2000年7月5日付法律第1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により改正]

第91条
暫定職位

モルドヴァ共和国大統領職に空席が生じた場合、大統領が解任された場合、又は職務の遂行が一時的に不可能となった場合は、暫定的に国会議長又は首相が職務を確保するものとする。

第92条
暫定大統領の責任

モルドヴァ共和国暫定大統領として活動する人物が、憲法の規定を侵害する重大な犯罪を犯した場合、第89条(1)および第91条が適用される。

第93条
法律の公布

(1)モルドヴァ共和国大統領は、法律を公布する。
(2)モルドヴァ共和国大統領は、ある法律について一定の異議がある場合、最長で2週間以内にそれを議会に差し戻し、再検討を求める権利を有する。議会がその法律を再可決した場合、大統領はその法律を公布する。

第94条
大統領令

(1)モルドヴァ共和国大統領は、その権限の行使において、国家の全領域で強制執行可能な政令を発布する。政令は『モルドヴァ官報』に掲載される。
(2)第86条(2)並びに第87条(2)、(3)及び(4)に規定する権限の行使において大統領が発する政令は、首相が連署するものとする。

第95条
大統領府職員の財源、報酬及びその他の権利

(1)モルドヴァ共和国大統領府職員の財源は、国会で承認され、国家予算に含まれる。
(2)モルドヴァ共和国大統領の報酬及びその他の権利は、法律で定めるものとする。

第6章
内閣

第96条
内閣の役割

(1)内閣は、国家の内外政策の遂行を確保し、行政の全般的管理を行う。
(2)内閣は、その特権を行使するに当り、国会の承認する施政方針に導かれるものとする。

第97条
構成

内閣は、首相、第一副首相、副首相、大臣、及びその他基本法で定められた議員で構成される。

第98条
任命

(1)モルドヴァ共和国大統領は、国会の各会派との協議を経て、首相候補を指名する。
[第98条(1)は、2000年7月5日付法律1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により改正]
(2)首相候補者は、その指名後15日以内に、施政方針及び内閣構成員の名簿全体について国会の信任投票を請求しなければならない。
(3)施政方針及び内閣構成員の名簿は、会期中の国会審議に付される。選挙で選出された国会議員の過半数の賛成により、内閣は信任を得る。
[第98条(3)は、2000年7月5日付法律1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により改正]
(4)議会の信任投票に基づき、モルドヴァ共和国大統領は内閣を任命する。
[第98条(4)は、2000年7月5日付法律1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により挿入され、旧来の(4)は(5)とする]
(5)内閣は、その構成員がモルドヴァ共和国大統領の前で宣誓したその日に、その権限の行使に入るものとする。
(6)内閣改造又は空席が生じた場合、モルドヴァ共和国大統領は、首相の提案により、内閣構成員の一部を罷免及び任命するものとする。
[第98条(6)は2000年7月5日付法律1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により挿入]

第99条
不適格事項

(1)内閣構成員は、他の報酬を受ける地位の保持と両立しないものとする。
(2)その他の不適格事項は、基本法により規定される。

第100条
内閣構成員の退任

内閣構成員は、辞任、更迭、不適格、又は死亡の際に退任する。
[第100条は2000年7月5日付法律1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により改正]

第101条
首相

(1)首相は、内閣を率い、委任された権限に従って内閣構成員の行動を調整する。
[第101条(1)は2000年7月5日付法律1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により改正]
(2)首相が職務を遂行できない場合、又は死亡した場合、モルドヴァ共和国大統領は、他の内閣構成員を指名し、新政府が成立するまで首相の暫定的な職務を遂行させるものとする。職務遂行不可能な期間の暫定職務は、首相が内閣での活動を再開するか否かに関わらず、終了するものとする。
[第101条(2)は2000年7月5日付法律1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により改正]
(3)首相が辞任した場合、内閣全体が退陣する。

第102条
内閣の行為

(1)内閣は閣議決定、政令及び規範を採択する。
(2)閣議決定は、法の執行を確保するため採択される。
(3)政令は、第106/2条の規定に従い発令される。
(4)内閣によって採択された閣議決定及び政令は、首相が署名し、その発効に責任を負う大臣が連署し、『モルドヴァ官報』に掲載される。掲載されない閣議決定及び政令は、無効である。
(5)内閣の職務分担については、首相によって規範が発令される。
[第102条は2000年7月5日付法律1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により改正]

第103条
任期満了

(1)内閣は新国会の選挙の効力発生日まで、その権限を行使するものとする。
(2)国会が内閣不信任案を可決した場合、首相が罷免された場合、又は上記(1)に規定する場合には、内閣は、新内閣が宣誓するまでの間、公事に関する行政のみを統制するものとする。

第7章
議会と内閣の関係

第104条
国会への通知

(1)内閣は国会の前に責任を負い、国会、その委員会及び議員の要求する情報及び資料を提供しなければならない。
(2)内閣構成員は、国会審議に出席できる。国会の要請があれば、出席を義務付ける。

第105条
質疑応答

(1)内閣全体及び内閣構成員は、国会議員によって提起された質問又は疑義に回答する義務がある。
(2)国会は、質疑の論点に関して、その見解を策定するための動議を可決できる。

第106条
不信任決議

(1)国会は、その議員の4分の1以上の提案により、国会議員の過半数の賛成を以って、政府に不信任を表明できる。
(2)不信任の発議は、国会に提出された日から3日以内に投票に付される。

第106/1条
内閣による責任の所在

(1)内閣は、施政方針、所信表明演説又は法案に対して、国会の前に責任を負う。
(2)第106条に基づき、施政方針、所信表明演説又は法案を提出してから3日以内に、不信任決議が可決された場合、内閣は総辞職する。
(3)内閣が(2)に従って総辞職していない場合、提出された法案は採択されたものとみなされ、内閣は施政方針又は所信表明が必須となる。
[第106/1条は2000年7月5日付法律1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により挿入]

第106/2条
法的委任

(1)内閣の施政方針を遂行するため、国会は内閣の提案により、基本法の範囲に属さない分野において、内閣が政令を発令することを可能にする特別法を採択することができる。
(2)委任法は、政令を発令することができる分野と期日を強制的に定める。
(3)政令は、公布されることなく、その公告の日から施行される。
(4)委任法が要求する場合、政令は承認のため議会に提出される。政令の承認に関する法案は、委任法で定められた期間内に提出されなければならない。期間不遵守の場合、その政令は失効する。国会が政令の承認に関する法案を否決しない場合、後者は効力を維持する。
(5)命令発令に規定された期間の経過後、命令は法律によってのみ無効化、停止又は修正することができる。
[第106/2条は2000年7月5日付法律1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により挿入]

第8章
行政

第107条
専門的中央省庁

(1)国家の専門的な中央機関は、省庁である。省庁は、法律に基づき、政府の政策、その決定と命令を実行に移し、又委託された活動分野を指導し、その活動に責任を負う。
(2)国民経済及び各省の権限に直接属さないその他の分野を指導、調整、統制するため、法律に基づき、その他の行政機関を設置するものとする。

第108条

(1)軍は、専ら国民の意思に従属し、国及び立憲民主国家の主権、独立、統一及び領土の一体性を保護しなければならない。
(2)国防組織の機構は、基本法によって定められる。

第109条
地方行政の基本原則

(1)行政区画内の行政は、地方自治、公共行政の地方分権、地方行政当局の適格性及び特別な関心を持つ地方問題についての市民との協議という原則に基づくものとする。
(2)自治の概念は、地方行政の組織と機能、及びその行政によって代表される地域社会の管理の双方を包含するものとする。
(3)前述の原則を実施しても、国家の単一政府制を変えることはできない。

第110条
行政ー地方組織

(1)モルドヴァ共和国の領土は、行政組織として村、町、地区及びガガウズ自治区で構成される。一部の町は、法律の下、市政機関として指定される。
(2)ドニエステル川左岸の地域は、基本法で定められた特別規定に基づき、自治の特別な形態と条件が与えられる。
(3)モルドヴァ共和国首都であるキシナウ市の地位は、基本法によって規定される。
[第110条は2003年7月25日付法律第344-XV号(2003年8月8日公告モルドヴァ官報第170-172号記事721掲載)改正]

第111条
自治領ーガガウズ自治区

(1)ガガウズは、特別な法令を持ち、ガガウズ人の自決の形態を表す自治区であり、モルドヴァ共和国の統合された不可分の一部を構成し、その能力の範囲内で、モルドヴァ共和国の憲法の規定に従って、社会全体の利益のために、政治、経済、文化問題を独自に解決しなければならない。
(2)ガガウズ自治区の領域では、憲法及びモルドヴァ共和国の法律に規定される全ての権利と自由が保障されるものとする。
(3)ガガウズ自治区領内では、法律に基づく代表機関及び執行機関が存在する。
(4)ガガウズ自治区領内の土壌、下層土、水、動植物、その他天然資源は、モルドヴァ共和国国民に帰属し、同時にガガウズの経済基盤を構成する。
(5)ガガウズ自治区の予算は、ガガウズ特別法で定められた条件に従って編成される。
(6)政府は、法律の条項の下、ガガウズ自治区内のモルドヴァ共和国の法律の遵守を監督する。
(7)ガガウズ自治区特別法を規定する基本法は、選出された国会議員の5分の3以上の賛成で改正することができる。
[第111条は2003年7月25日付法律第344-XV条(2003年8月8日公告モルドヴァ官報第170-172号記事721掲載)により改正]

第112条
村及び町役場

(1)村及び町で地方自治を行う行政機関は、選挙で選出された地方議会及び選挙で選出された長である。
(2)地方議会及び長は、法律に基づき、自治行政機関として機能し、村や町の公共的問題を解決する。
(3)地方議会及び長の選出手続き、及びその権限と範囲は法律によって定めるものとする。

第113条
地方議会

(1)地区議会は、地区地位の公共事務を実施する目的で、村及び町議会の活動を調整するものとする。
(2)地区議会は選挙で選出され、法律に基づき運営されるものとする。
(3)地方公共団体間の関係は、自治、合法性、共通の関心問題を解決するための協力という原則に基づくものとする。

第9章
司法

第1節
司法裁判所

第114条
司法行政

司法は、法の名の下に、裁判所によってのみ行われる。

第115条
裁判所

(1)司法は最高裁判所、控訴裁判所、及び裁判所によって運営されるものとする。
[第115条(1)は2002年11月21日付法律第1471-XV号(2002年12月12日公告モルドヴァ官報第169号記事1294掲載)により改正]
(2)特定の区分の事件は、法律に基づき、特別法廷が運営される。
(3)臨時法廷の設置は、これを禁じる。
(4)裁判所の機構、権限範囲及び司法手続きは基本法によって定められる。

第116条
裁判官の地位

(1)裁判官は、法律に従って独立し、公平であり、解任されない。
(2)裁判官は、最高司法評議会の提案により、法律に従って、モルドヴァ共和国大統領によって任命される。試験に合格した裁判官は、まず5年の任期で任命される。5年の任期満了後、裁判官は法律で定められた年齢に達するまでその職に就くことができる。
(3)裁判所長官、副長官及び裁判官は、最高司法評議会の提案によりモルドヴァ共和国大統領によって任命され、任期は4年である。
(4)最高裁判所長官、副長官及び裁判官は、最高司法評議会の提案により、国会が任命する。裁判官として在職期間が10年以上なければならない。
(5)裁判官の昇進及び異動は、本人の同意がある場合のみとする。
(6)裁判官の制裁は法律に基づき行われる。
(7)裁判官職位は、教学及び科学上の活動を除く、他の公的又は私的な報酬を受ける地位の行使と両立しないものとする。
[第116条は2002年11月21日付法律第1471-XV号(2002年12月12日公告モルドヴァ官報第169号記事1294掲載)により改正]
[第116条は1996年7月19日付法律第957-XIII号(1996年8月15日公告モルドヴァ官報第54-55号掲載)により改正]

第117条
司法手続きの公開

全ての裁判所において、訴訟の審理は公開で実施される。非公開審理の遂行は、法律及び手続規則により、特定の場合にのみ認められる。

第118条
法的手続きの言語及び通訳の権利

(1)法的手続きはモルドヴァ語で行われる。
(2)モルドヴァ語が理解できない、又は話すことができない者は、裁判資料の全ての文書と行為について確認し、通訳を介して裁判中に発現する権利を有する。
(3)法的手続きは、法の下で、裁判に参加する者の過半数が受入れることのできる言語で行うこともできる。

第119条
上訴方法

裁判の当事者及び管轄の国家機関は、裁判所が言い渡した判決に対して、法律の定めるところにより、上訴することができる。

第120条
判決文の強制性及びその他最終的な法的判断

裁判中及び判決などの執行中は、裁判所が下した判決及びその他の最終的な裁定に従わなければならず、裁判所の要請に応じて協力することが義務付けられる。

第121条
裁判所予算、報酬及びその他権利

(1)裁判所の予算は国会で承認され、国家予算に含まれる。
(2)裁判官の報酬及びその他の権利は、法律でこれを定める。
(3)裁判所は、警察を自由に利用できるものとする。

第2節
最高司法評議会

第122条
機構

(1)最高司法評議会は、裁判官及び大学教員から選出され、任期は4年とする。
(2)最高裁判所長官、司法大臣及び検事総長は最高司法評議会の規則上、構成員である。
[第122条は2002年11月21日付法律第1471-XV号(2002年12月12日公告モルドヴァ官報第169号記事1294掲載)により改正]

第123条
権力

(1)最高司法評議会は、裁判官の任命、異動、罷免、昇格、懲戒処分の執行を確保する。
(2)最高司法評議会の組織と機能に関する手続きは、基本法によって定められる。
[第123条は2002年11月21日付法律第1471-XV号(2002年12月12日公告モルドヴァ官報第169号記事1294掲載)により改正]

第3節
検察庁

第124条
権力及び機構

(1)検察庁は、社会の一般的な利益を代表し、法の支配及び市民の権利と自由を擁護する。同様に法律に従って、刑事訴追を監督、実行し、裁判所に告訴する。
[第124条(1)は2002年11月21日付法律第1471-XV号(2002年12月12日公告モルドヴァ官報第169号記事1294掲載)により改正]
(2)検察制度は、検事総長、地方検察及び特別検察を含むものとする。
(3)検察庁の組織、権限の範囲及び運営手続きは、法律でこれを定めるものとする。

第125条
検察の権能

(1)検事総長は、国会議長の提出する案に従い、国会がこれを任命する。
(2)下位の検事は、検事総長の指名を受け、その指揮を受ける。
(3)検察官の任期は5年とする。
(4)検察官の職は、教学活動及び科学活動を除き、他の公的又は私的な報酬を受ける職と両立しない。
(5)検察は、その職権を行使するに際し、法律にのみ従わなければならない。

第4編
国家経済及び公共財政

第126条
経済

(1)モルドヴァ共和国の経済は、自由に競争できる私有財産と公共財の共存に基づく社会的志向の市場経済とする。
(2)国は、以下を確保しなければならない。
 a)経済活動の規制及びその公共財の管理は法律の下で行い、
 b)商業と企業活動の自由、誠実な競争の保護、全ての生産要素の発展に有利な枠組みの構築、
 c)経済、金融、通貨活動における国益の保護、
 d)科学研究の振興、
 e)国益に沿った土地やその他天然資源の合理的開発、
 f)環境の回復及び保護、かつ生態学的な均衡の維持、
 g)被雇用者数を増やし、生活水準を向上させるために適切な条件の設定、
 h)国外からも含む、個人及び法人の出資の自由。

第127条
資産

(1)国は、財産を保護する。
(2)国は、社会の利益に反しない限り、現に存する者が希望するいかなる形でも財産を所有する権利を、全ての者に保障する。
(3)公共財産は、国又は領域行政単位に属するものとする。
(4)広く公共の利益のために利用される全ての地下資源、領空、水域及び森林、経済地域及び大陸棚の天然資源、通信線並びにその他法律の定める財産は、専ら公共財産の対象となるものとする。

第128条
外国籍者及び無国籍者の資産

(1)モルドヴァ共和国では、外国、国際機関、外国人、無国籍者の財産は、法律で保護されるものとする。
(2)外国の自然人、法人、無国籍者がモルドバ共和国の領域で財産を所有する権利を行使する手続きと条件は、法律によって規定する。

第129条
外国との経済活動

(1)国会は、対外経済活動の主要な方向性、借款の使用に関する原則を承認する。
(2)政府は、対外経済活動に関わる国益の保護を確保し、国益を考慮して自由貿易政策又は保護主義政策のいずれかを推進しなければならない。

第130条
財務及び信用制度

(1)国、地域行政単位及び公共機関の財源の形成、管理、使用および管理は、法律に基づき、これを規制する。
(2)モルドヴァ共和国の通貨はレウとする。
(3)モルドヴァ共和国の中央銀行は、通貨を発行する独占的な権利を与えられる。通貨の発行は、国会の決定に従って行われる。

第131条
国家公共予算

(1)国の公共予算には、国家予算、国の社会保険予算、区、町及び村の予算が含まれる。
(2)政府は、国家予算及び国の社会保険予算の年次案を作成し、別途国会に提出し、その承認を受けなければならない。予算外基金を設ける場合は、これも国会に提出し、その承認を受けなければならない。
(3)国家予算及び国の社会保険予算が、現行の予算執行終了の3日前までに法的に承認されていない場合、新しい予算が採択されるまで、前年の国家予算及び国の社会保険予算が引き続き適用されるものとする。
(4)予算収入又は国債の増減及び予算支出の増減を伴う立法措置又は修正案は、政府の承認を得て採択されるものとする。
(5)地区、町及び村の予算は、法律に従って起案、承認、執行されるものとする。
(6)事前に資金源を明示しない限り、予算支出は承認されない。

第132条
財政制度

(1)国家予算、国家社会保険予算、及び地区、町、村の予算の全ての税金、関税、その他の収入は、法律に基づいて、管轄の代表機関によって確定される。
(2)その他の課税は禁止する。

第133条
会計検査院

(1)会計検査院は、公共財政の編成、管理及び使用に関する手続きを監督する。
(2)会計検査院は7名で構成される。
(3)会計検査院長は、国会議長の提案に基づき、国会により5年任期で任命される。会計検査院の構成員は、国会議長の提案に基づき、国会が任命する。
(4)会計検査院は、毎年国会に、公共財政の編成、管理及び使用に関する報告書を提出しなければならない。
(5)会計検査院に与えられるその他の権限、及びその組織と運営の手続きは、基本法によって制定される。

第5編
憲法裁判所

第134条
規則

(1)憲法裁判所は、モルドヴァ共和国において憲法を管轄する唯一の機関である。
(2)憲法裁判所は、他のいかなる公権力からも独立し、憲法にのみ従うものとする。
(3)憲法裁判所は、憲法の優位性を保証し、立法、行政、司法の三権分立の原則の実施を確認し、国の国民に対する責任、国民の国に対する責任を保証する。

第135条
権力

(1)憲法裁判所は、以下の行為を行う。
 a)モルドヴァ共和国が加盟している国際条約と同様に、国会の法律と決定、大統領の命令、内閣の決定と政令に対して、上訴により合憲性の審査を行う。
[第135条(1)a)は、2000年7月5日付法律第1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により改正]
 b)憲法解釈を提供する。
 c)憲法改正に向けた取り組みについて、その立場を表明する。
 d)国民投票の結果を確証する。
 e)モルドヴァ共和国国会選挙及び大統領選挙の結果を確証する。
 f)議会の解散、モルドヴァ共和国大統領の解任、暫定大統領の就任、及びモルドヴァ共和国大統領が60日以上職務を完全に遂行できないことを正当化する状況を確認する。
[第135条(1)f)は、2000年7月5日付法律第1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により改正]
 g)最高裁が主張する、法律行為の違憲性についての訴えを解決する。
 h)政党の合憲性に関する事項を決定する。
(2)憲法裁判所は、憲法裁判所に関する法律で規定された主題によってもたらされる提案に基づいて活動を行う。

第136条
組織

(1)憲法裁判所は6名の裁判官で構成され、任期は6年とする。
(2)裁判官は、国会が2名、内閣が2名、最高司法評議会が2名それぞれ任命する。
(3)憲法裁判所裁判官は、無記名投票によって憲法裁判所長官を選出する。

第137条
独立

憲法裁判所裁判官は、その職務の期間中、解任されることはなく、独立し、憲法にのみ従う。

第138条
任用資格

憲法裁判所裁判官は、卓越した司法知識、高い専門的能力、法律分野、法教育又は科学的活動における15年以上の勤続年数を有していなければならない。

第139条
報酬

憲法裁判所裁判官の地位は、教育的及び科学的活動を除いて、他の報酬を受ける公的又は私的な地位の保持と両立することができない。

第140条
憲法裁判所の判決

(1)法律及びその他の規範又はその一部は、憲法裁判所が適切な判決を採択した時点で無効となる。
(2)憲法裁判所の判決は最終的なものであり、上訴することはできない。

第6編
憲法の改正

第141条
改正の発議権

(1)憲法改正の発議は、以下の手続きによって開始することができる。
 a)投票権を持つモルドバ共和国の市民が少なくとも20万人以上であること。憲法改正の発議をする市民が、第2級の行政区域単位の少なくとも半分を占めし、これらの単位のそれぞれで、当該発議を支持する署名が少なくとも2万人分あること。
[第141条(1)a)は2000年7月5日付法律第1115-XIV号(2000年7月28日公告モルドヴァ官報第88-90号記事661掲載)により改正]
 b)国会議員の3分の1以上による提案。
 c)内閣によるもの。
(2)憲法草案は、少なくとも4人の裁判官の投票によって採択された憲法裁判所の勧告的意見とともにのみ、国会に提出される。

第142条
改正の制限

(1)国家の主権、独立及び統一に関する規定並びに国家の永世中立に関する規定は、投票権を有する登録市民の過半数の賛成による国民投票によってのみ改正することができる。
(2)国民の基本的な権利、自由又はその保障の侵害を伴う場合は、改正を行ってはならない。
(3)憲法は、国家非常事態、戒厳令又は戦時下において、改正されない。

第143条
憲法改正法

(1)国会は、対応する発議が提出された日から少なくとも6カ月後に、憲法改正に関する法律を成立させる権利を有する。この法律は、国会議員の3分の2以上の賛成により採択される。
(2)憲法改正の発議が提出された日から1年以内に、国会が適切な憲法を通過させなかった場合、その発議は無効とみなされる。

第7編
最終及び経過規定

第I条

(1)本憲法は、国会で採択され、モルドヴァ共和国大統領によって3日以内に公布されなければならない。
(2)本憲法は1994年8月27日を以って発効する。同日、1978年4月15日付憲法、及びその後の修正と補足は完全に廃止されるものとする。

第II条

(1)法律及びその他の規範は、この憲法に反さない限り、有効であるとみなされる。
(2)この憲法施行の日から1年以内に、国会及び政府の常設委員会は、法律の憲法に対する適合性を審査し、その点に関する十分な提案を国会に提出しなければならない。

第III条

(1)本憲法が発布された日に運営されていた国家機関は、新たな機関が設立されるまで、その運営を継続する。
(2)国会は、1993年10月14日の国会選挙に関する法律に従って、政治的及び政党的多元主義の条件の下、自由に表明された、普遍的、平等、直接かつ秘密投票で選ばれた104名の議員で構成され、この憲法が定める場合を除き、任期の満了までその活動を継続するものとする。
(3)モルドヴァ共和国大統領は、モルドヴァ共和国大統領の選挙に関する1991年9月18日の法律に従い、政治的及び政党的多元主義の条件の下、自由に表明された、普遍的、平等、直接かつ秘密投票によって、5年の任期で選ばれ、この憲法が定める場合を除き、任期の満了までその職に留まるものとする。
(4)国会が信任した政府は、この憲法に定める場合を除いては、その負託の満了まで、その権能を行う。
(5)国権及び国家行政の地方公共団体は、この憲法に定める場合を除き、その権能の消滅するまでの間、その権能を行う。
(6)この憲法発効日において、裁判所での勤務期間が5年以上である裁判官は、第116条(1)に従い、司法大臣及び最高裁判所長官の提案に基づき、モルドヴァ共和国大統領の政令によって、不動性の原則の適用を受けるものとする。
[第III条(6)は1996年7月19日付法律(1996年8月15日公告モルドヴァ官報第54-55号記事517掲載)により改正]
(7)この憲法施行の日から2年以内に、裁判所制度は、法律に基づき、再編成されなければならない。

第IV条

拘束期間に関する第25条(4)に規定する規定は、1995年1月1日までは、刑法第71条に規定する重大な犯罪を犯した者には影響を及ぼさないものとする。

第V条

(1)現行憲法の施行後6カ月以内に、憲法裁判所及び会計検査院を設置するものとする。
(2)憲法裁判所を当初構成する裁判官は、最高司法評議会に代わって、人民裁判官総会及び最高裁判所の裁判官によって、その職に任ぜられる。

第VI条

憲法裁判所が設立されるまでは、現行憲法第135条に規定する全ての事件は、国会の発議により、最高裁判所が解決することができる。

第VII条

(1)モルドヴァ共和国の領域内で話されている言語の使用に関する1989年9月1日の法律は、現憲法に抵触しない範囲において、引き続き効力を有するものとする。
(2)前項の法律は、本憲法の施行日から7年以内に、国会議員の3分の2以上の賛成を以って、改正することができる。

第VIII条

第7章 最終及び経過規定は、現憲法の構成部分とみなし、その効力発生に関する事項を規定する。

使用・参考サイト

本試訳は、モルドヴァ共和国憲法英語版を基とし、適宜DeepL翻訳を使用し訳した。英文は以下のPDFを参照している。(https://www.constcourt.md/public/files/file/Actele%20Curtii/acte_en/MDA_Constitution_EN.pdf
本稿における、編、章、節の訳は遠藤誠「モルドバ法制度の概要」BLJ法律事務所3頁を参照した。(https://www.bizlawjapan.com/wp-content/uploads/moldova_houseido_01.pdf)2023年2月15日他閲覧。
DeepL翻訳(https://www.deepl.com/ja/translator

修正

2023年10月16日 第102条(3)の1062条を106/2条に修正
        106/2条の題を追記

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