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地方に「あるもの」を起点に創造する

施政方針演説を執筆中です。次年度、どのようにまちづくりを進めていくかを明らかにする重要な演説。私は自治体経営者として理念を共有することを大切にしているので、特に「はじめに」は重要なものと位置付けています。過去の演説も、そこで示した理念はまちづくりの現在と未来にもつながるので、2025年度の施政方針演説を前に、過去のものを振り返ります。まずは、2021年度の演説から。

1.はじめに

地方に「あるもの」を起点に考える。私たちの地域の魅力として現に「あるもの」に、新たな価値をつなぎ、地域社会をつくっていく。新型コロナウイルス感染症によって価値観の変容が起き、東京一極集中の打破と地方分散型社会を実現するチャンスが到来しています。この機を捉え、私たち地方自治体には主体的、能動的にその実現に向けた政策を展開していくことが求められますが、そもそもこれはコロナ禍以前からの国家的課題でした。

私は県議時代の2014年、都市と地方の格差を考えるシンポジウムを東京で開催し、コーディネーターを務めました。そのとき、パネリストだった社会活動家の湯浅誠さんが提示した視点が事の本質を突いたものとして記憶に残っています。

「地方は自分の地域に『ないもの』に注目しがち。そうではなくて、東京になくて、地方に『あるもの』を探し出すべき」

ないものねだりではなく、あるもの探し。そもそも私たちの地域にある資源を発掘し、磨き、つなぎ、魅力として発信していく。古賀市はコロナ禍以前からこの理念を大切にしてきました。

こうした考え方を基礎として、これからのまちづくりを進めていくうえで、20世紀を代表する経済学者、ヨーゼフ・シュンペーター(1883~1950)の提唱したイノベーションの概念が重要になってくると考えます。1912年に刊行されたシュンペーターの代表作「経済発展の理論」の初版完訳本が、日本で初めて昨年5月に出版され、私も通読したところですが、それまでの経済学を「静学」とみなし、これに対する「動学」という新たな理論を打ち出すことで、経済の「発展」を解明しています。

この中で、イノベーションについて「新結合」という言葉を使い、その概念を示しました。曰く、経済発展つまり進歩をもたらすのは「企業者」と表現する「行動する人」である。「企業者」こそが、従来の「静態的経済」から「発展」を生み出すことができる主体であり、その活動の本質は「経済的可能性として存在しているものを新しい結合(新結合)に具体化して遂行することにある」。「企業者」は精力的、意欲的に行動するものであり、新たな生産物を生み出したり、新たな生産方法を導入したりするなどそれまでとは異なる方法や組み合わせを見出し、実践する。こうして新たな創造が生まれ、経済が発展していく。このように考察し、「新結合」の実現が社会の変化につながることを示しています。

私たちはこれからウィズコロナ、アフターコロナも見据え、地域社会をつくっていかなければなりません。これまで以上に、受動的ではなく能動的に行動していくことが求められています。そして、私たちの地域に「あるもの」を起点に、様々な価値を結び付け、新たな創造につなげ、持続可能性を高めていきたいと思います。

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