ハイドランジア
作:tana
雨上がりの午後
コーヒー片手に本を探した
光を求めている訳でもなく
暗闇を求めている訳でもなく
ただ…本が欲しかった
傘からこぼれ落ちる水滴が
地面にポツン、ポツン…と
小さな水たまりを作った
小さな水たまりに映るもう1人の自分
自分が誰なのか分からなかったから
もう1人の自分を作った
自分探しをしていたら
本を探している事を忘れ
あるショーケースに目が止まった
心が本よりもサンドイッチに心が動いた瞬間だった
きっと今日は本は必要なかったんだ
風の香りに誘われて木々たちの心地よい揺れと共にシャボン玉が飛んできた
そのシャボン玉が
まだ芽吹いたばかりの花に、
くっついた瞬間
シャボン玉がはじけた
何かが変わった瞬間だった
はじけたシャボン玉が、
小さな水たまりに儚く落ち
光が差した
その光が差すのは決して
誰もが行ける光ではない
暗闇を1人でしっかり歩めた人だからこそいける場所
心から懐かしい香りを感じるのは
心の音が綺麗だから
淡いピンクと紫の空は
私があなたをあなたとして見つけた日
我君ヲ想う