ウェーニバルを愛したい。
※ポケモンSVをゼロ知識でプレイしたい方はネタバレ注意です。
ウェーニバルとのストーリー
パルデア地方から船で1週間、
遠く離れた小さな島で彼は産まれた。
インターネットも通っていないその島は、
島民の大半が老人で子供は彼1人しかいなかった。
皆が手を取り合い、自給自足している孤島だ。
彼が8歳の時だった。
彼は家の倉庫から一本のビデオテープを見つけた。
『なんでこんなところにビデオテープが?』
彼は不思議に思いながらもビデオテープの内容が気になり、島に唯一テレビがある公民館へと向かった。
顔馴染みである職員のおじいさんへの挨拶もそこそこに、
島民が集まって週に1回お茶を飲みながら誰がいつ録画し編集したか分からない『朝だ!生です旅サラダ』内で松尾伴内が中継している映像の総集編を観る、通称 バンナイ部屋へと駆け込んだ。
ビデオデッキが一体化されているブラウン管テレビから旅サラダテープを取り出し、例のテープを入れすぐさま再生ボタンを押す。
ビデオテープから流れてきたのは、
映画 Shall we ダンス?だった。
生まれて初めて見る映画、
生まれて初めて聴く音楽、
そして生まれて初めて、彼は踊りを知った。
再生して30分経ったところでテレビから不協和音が鳴り、映像が砂嵐へと変わった。
ビデオテープは壊れていた。
取り出しボタンを押してもビデオテープは出て来なかった。
島唯一のテレビを壊し、島唯一の娯楽『旅サラダ』が観れなくなった事で職員のおじいさんや両親を始め、島民全員に叱れた。
しかし、彼の心はもうこの島にはなかった。
その日から彼の夢はダンサーとなり、
頭の中はステップでいっぱいになった。
映画は途中までしか見れなかったが、彼の脳内には役者達が踏んでいたステップがしっかりと刻み込まれていた。
これが悲劇の始まりだった。
その日から昼夜問わず、四六時中、
彼はとにかくステップを踏みまくった。
車に乗っていても、椅子に座っていても、ご飯を食べていても、用を足しながらでも、、、
時間や場所、タイミングを彼は選ばなかった。
とにかく踏めるだけのステップを彼は踏んだ。
彼がステップを踏み始めて1年、
島民からステップの事で注意されなくなった。
彼がステップを踏み始めて3年、
島から段差という概念が消えた。
彼がステップを踏み始めて6年、
島で地平線が見えるようになった。
そして彼がステップを踏み始めて10年が経った頃、島全体が沈み始めた。
彼が18歳の時、
両親を含む島民全員から、『頼むからこの島から出てってくれ』と泣きながら懇願された。
このまま島が沈めば、皆家に住めなくなる。
大事な故郷を失ってしまうのだ。
島民達の願いは決して間違っていない。
島民達は彼が憎いわけではない。
むしろ彼が心優しい少年であることは島民全員が知っている。
ただ目障りなステップを踏みまくるだけ、我々が我慢すれば良いだけだと、皆そう言い聞かせて生活していた。
しかし、島民の我慢の限界よりも先に、
島自体が限界を迎えてしまったのだ。
彼は10年と145日ぶりにステップを踏むのをやめ、微笑みながら島民達に答えた。
『僕の夢は世界一のトップダンサーになること。だから僕は自分の夢を叶える為に、自分の意思でこの島を出るよ。』
その日の晩、静かに、誰にも別れを告げず、
彼は小さな船で島を出た。
航路をパルデアの大都市テーブルシティに向け、彼は船上でステップを踏んだ。
冷たい海の夜風を全身で受け止め、
目から溢れ出る涙に気を留めず、
彼はただ、ステップを踏み続けた。
パルデアに向かって3日目。
大きな嵐が彼を襲った。
風は吹き荒れ、激しく波打つ中でも、
悲しみや後悔を忘れるかのように彼は夢中でステップを踏み続けていた。
当然彼の小舟転覆し、
彼の体は荒れる海の中へと放り出された。
目を覚ますとそこは見知らぬ浜辺だった。
『ここは、、、どこだろう』
上半身を起こし、辺りを見回す。
灰色の髪の女の子が自分の傍にいることに気付いた。
ギョッと驚きながらもその女の子を見ると、
女の子は何故か全身びしょ濡れで肩で大きく息をしていた。
視線を向ける彼に気付いた女の子は、
呼吸を整え、微笑みながら彼に語りかける。
『わたしシリラ。あなたの名前は?』
少しの沈黙の後、彼は答えた。
『・・・ぼ、僕の名前は、ジルエアエル。』
彼等の冒険が始まる。
ウェーニバルの技構成ともちもの
技① フェザーダンス
技② アクロバット
技③ インファイト
技④ アクアステップ
ウェーニバルのもちもの
もちものは、かわらずのいし。
本来は持たせたポケモンを進化させない為のアイテムだが、故郷に二度と帰らぬという覚悟、必ず夢を叶える決意、それらの意思の表れとして彼は自発的にかわらずのいしを持っている。
技②のアクロバットは死ぬが、関係ない。
ウェーニバルと私。
ポケモンバイオレット、楽しいです。
ただ一つ、プレイするにあたり個人的に大きな問題が生じてました。
それが、
ウェーニバルを愛せない。
スカーレット・バイオレットの御三家
みずタイプ枠、クワッスの最終進化がウェーニバルです。
色味が好きで、キャラメイクした主人公にも合いそうだったクワッスを選びました。
ウェルカモも好きです。
顔に精悍さが出てカッコいい。
主人公はポケモン世界に転送したシリの設定です。ロールプレイ楽しいです。
クワッスに付けた名前は、ジルエアエル。
ウィッチャー作品でシリが呼ばれる名前の一つで、シリの愛剣の名前です。意味はツバメ。
こがもポケモンであるクワッスに対する皮肉も込めました。
ジルエアエルと過ごす日々はとても幸福に満ちた時間でした。
でも、
ウェーニバル好きの方には申し訳ないですが、
ちょっと、ウェーニバルは愛せなかった。
イケメンなんですがね。
主張の激しい細部、騒がしい鳴き声、
そして挙動不審。
加えて、話しかけるとこちらを威嚇するようなモーション。求愛のつもりかそれで。
何より、バトル中常に踏み続けるステップ。
ちょっとキツい。
特にこのステップ嫌。
サンバすな。
ちょっとこのままじゃ愛せない。
ウェーニバルに進化して以降、
ジルエアエル⇆ウェーニバルの名前を行き来し、このままボックスに入れちまうかと考えるくらい、気持ちが揺らいでました。
ウェーニバルを愛する為に。
でもやはりこのままゲームを進めたくない。
最初に選んだ御三家ポケモンとは最後まで一緒に冒険したい。
もうなりふり構わず、
とにかくウェーニバルを愛する為、
やれる事を全部やり、自己暗示を試みました。
妄想に妄想を重ねたオリジナルストーリー。
想像で想像を膨らました技やもちもの。
無理矢理にでも愛着を湧かせました。
結果、
いやもう、大好き。
普通に超好き。
カッコいいよウェーニバル。
いや、私の愛しいジルエアエル。
ポケモン楽しいです。
捕獲×オープンワールドの相性が良過ぎてひたすら探索してます。まだ終わってませんがストーリーもすっごい楽しいです。
やってない人はぜひ。
近年のポケモンをやってない人こそより楽しめる一本だと思います。
ぜひぜひです。