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ラブコメの主人公になりたい。


ラブコメが好きです。

パンチラや裸体が散見するラブコメではなく、
胸キュンやもどかしさを主体とした日常系や
欠陥ラブコメ系作品を好みます。

またなし崩し的なご都合でお互い好意を寄せあったラブコメではなく、明確な理由からお互いに好意を寄せあった作品が好きです。



そんな面倒なこだわりを持ちながらラブコメ作品を見漁っていると、一つの欲望が生まれ始めました。

ラブコメの主人公みたいなハーレムな状況に自分も身を置かれたいのではなく、


文字通り、額面通り、見た通り、


ラブコメの主人公みたいな人間になりたい。

一番のフィクションは主人公の人柄


平凡な容姿と運動能力と頭脳。
そこまで複雑ではない家庭環境。
自分に自信が無く引っ込み思案な性格。

でも、分け隔てなく誰にでも超優しい。

平凡な容姿と運動能力と頭脳。
そこまで複雑ではない家庭環境。
自分に自信が無く卑屈な性格。

ここまでは共通点しかないのに、
突き放し方が半端じゃない。

彼等はめちゃくちゃ優しい。

もう計算も打算も利権も都合も一切無く、
まるで呼吸をする様に、
朝起きたら顔を洗うかのように、
用を足したら手を洗うように、
歯磨きで前歯を磨くように、
当たり前にめちゃくちゃ優しい。


しかも平凡な見た目や能力や性格は決して短所ではない。普通だ。

この普通な個性に超絶優しいという異能が備わったら手が付けられない。

もはや平凡さが優しさをブーストさせている。
もはや相乗効果でどちらも彼等を際立たせる要因と化してしまっている。
手の付けようが無い。

己を優先した優しさじゃなく、
他が為に動ける人。

そこにヒロインは気付く。

フィクションだとヒロインしか気付かない。
けどもし仮に現実だったら絶対みんな気付く。

性別も年齢も立場も関係なくみんなが気付く。
本当に優しい人の周りには人が集まる。



滅多にいない。
いや、ほぼ絶対いない。

ハーレムより、ラッキースケベより、席替え、体育倉庫、文化祭、修学旅行イベントより、
ラブコメの何よりのフィクションは主人公の人柄です。

何食ったらあんな優しくなれんの?

しかもそこに上乗せられる、
非凡な才能(特技)と純度100%の童貞性。


ラブコメ主人公の素質

ラブコメ主人公の祖でありパイオニアでありカリスマであり絶対王者。

ラブコメ開拓のコロンブス、
ラブコメ帝国のレオニダス王、
ラブコメ界のソクラテスであるのは恐らく、

野比のび太氏だと思われます。

駄目人間然りの生き様を歩みながらも真の優しさを損なわず生まれ生き、
あやとりや射撃という非凡な才能、
好意を抱く異性の入浴を覗き見ては快楽を求めるも、マスをかかない堂々たる紳士っぷり。

野比氏を皮切りに諸星あたるやあだち充流派の主人公達に派生していき、今日のラブコメ主人公としての素養は延々と受け継がれてきていると推察されます。


どんな人間でも何かしらの取り柄はある。

どんな男だろうと紳士道を踏み外すなかれ。

こんな素晴らしい人生の教訓を、
彼等ラブコメ主人公達は我々読者に教えてくれています。

現実では誰かに誇れる特技なんて無いし、
現実ではパンチラだけでも充分なおかずだし、
現実ではそもそも異性と接する機会すら無い。

それでも彼等はフィクションであろうと、
我々に祝福の導きを示し続けてくれる存在なのです。



ラブコメ主人公になれない


それでも現実は無味乾燥で刻々淡々と抗う術も逆らう術もなく、佇むように静かに過ぎていきます。


電車で席を明け渡す事は出来ても譲り渡す事が出来ません。

高齢者、子連れのお母さんや妊婦さんに
『良かったらどうぞ。』
この一言が言えません。

静かに席を立ち、
【この空いた席、座るも座らぬも貴様次第だ】と心でナレーションを付けながら不自然に席を明け渡す事しか出来ません。


道で困ってる人に『大丈夫ですか?』の一言が何故言えないんだ。

通勤中に外国人に話しかけられて慌てふためいている同僚の様子を、何故物陰に隠れてスマホで動画を撮影してしまうんだ。

昼から一緒に遊んでる友人の髪に大きめのゴミがついてる事にだいぶ早い段階で気付いたのに、何故夜になるまで教えないんだ。


優しくなりたい。

彼等のように、自分も優しくなりたい。

せめて彼等のように優しくなれなくても、


モテたい。


引くほどモテたい。

女なんて面倒なだけだよって言いたい。

今は誰とも付き合う気ないからって言いたい。

彼女途切れさせた事ないって言いたい。

普通に過ごしてるだけなのに言い寄られたい。

人肌が恋しくて夜に泣きそうになりたくない。

手を繋ぐだけで下半身が反応したくない。

SEXの仕方ってどうやんだっけって思いたくない。



あーーモテたい。