僕たちは向井理になれない(ミャンマー編⑥)
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ようやく動き出したベルファイア
後部座席はきっちりウェットティッシュで拭いた
2人ともきっちりリステインでうがいをした
僕はそういうところをきっちりしたい派なので
今考えると、衛生用品を持ってきてくれた
彼女のパパである日本人2人には
感謝しないといけないな
ありがとう、見知らぬ駐在員さん達
なんか、旅人から旅人への
優しいノールックパスを受けた気分だ
そうやって、穴兄弟という事実を
左脳の片隅に追いやってるうちに
僕らはヤンゴン市内のクラブに着いた
-いくら探しても当時の写真が出てこない-
トタン屋根のでかい倉庫
周りは砂利道
その脇に無造作にマンゴーの木🥭
ぷわーんと果実が発酵したようなあの
東南アジアの貧困地帯特有の香り
あまりに無機質すぎて外観の記憶がない
ろくなセキュリティーチェックもなく
クロークさえもない
黒いTシャツのゴツいスタッフもいない
そして何より、不安になるくらい暗い
軍の収容所だったらどうしようってくらい
彼女がちゃちゃっと
ミャンマーチャット(MMK)で入場料を払う
ビルマ族のヒモと化した日本人
中に入ると
20代前半と思しき若者だらけだった
例外なくみんなスタイルがシュッとしてる
全員邦楽ロックバンドの
ギターボーカルを目指してるのか?
と見間違うほど、スキニーを貫き通してる
そして着ている服はほぼ皆UNIQLOだ
私達全員UNIQLOの店員です!
というドッキリかと思った(即バレだ)
入り口は真っ暗なのに
何故かフロアは明るい
カバンを持ったビジネスマンと
キスしすぎて口紅💄とれかけの黒ボディコン
明らかに僕らは浮いていた
何に謝ったらいいのか分からないが
僕はなんだか申し訳ない気分になった
フロアは地味に明るく
丸テーブルが並んでおり
そこにグラスがちょこちょこ置かれてる
若者男女が絶妙な距離感で談笑している
UNIQLO社員の立食パーティーかよ
こんな感じの曲がBGMとして流れていた
そう、BGMつまり
会話の邪魔にならないように
PAが音量を下げている
イコライジングも
明らかにLOWを下げている
てか鳴ってない、大丈夫か
日本の音響業者がこんなことしたら
蹴られるだけじゃ済まされないだろう
声の小さいロックバンドも苦痛だけど
音量の小さいクラブも中々の地獄だ
滅多に体験出来ることじゃない
ダメなものを知るのも大切だ
キャン: まあ、こんな感じよ😌
つまんないでしょ?帰る?💦
僕: んん?そんなことないよ😀
キャン: いやいや、眉間に皺が笑
僕: うーん、、今日は疲れたからかな
エッチし過ぎたしね😌
キャン: あたしも足がガクガクだわ😅
深夜1時過ぎだっただろうか
そそくさと僕らはクラブを後にした
砂利だらけの駐車場に向かい
あくびをしながら🥱車に乗り込む際
駐車場の隅に
石碑のようなものがあるのに気付いた
僕の第六感がワンワン鳴る🚨
そういえば
何でこの辺だけ雑木林なのだろう
ヤンゴンのど真ん中だというのに
僕: ねえ、、あれ何?
と石碑を指差した
キャン: ああ、戦争のモニュメントかな😌
気になったので早歩きで確認しに行く
日本軍・英国軍xxxx慰霊碑
xxxxxxxを記念して
ここに友好の証としてxxxx
確かこんな感じのことが
日本語で彫られていた
ここは、、、何なのだろう
戦没者慰霊碑
雑木林
誰が植えたか分かんないマンゴーの木🥭
砂利だらけの駐車場
トタン屋根のクラブ
何の肉かわからない串焼き屋
タバコみたいな何かを吸う地元ヤンキー達
カオス過ぎて
クラッと来た
とりあえず僕は手を合わせた🙏
どんな心の声を響かせたところで
誰かに叱られそうな気がしたから
世界平和とかを静かに願った
車に戻る
キャン: 写真撮らなくていいの?😌
僕: 撮るわけないだろ笑
キャン: よし、じゃシートベルトして〜
クラブで飲んだレッドブルウォッカが
効いてきたからだろうか
僕は現在地が分からなくなってきた
カオスだけど懐かしい
ダメだ、、
これに慣れたらダメだ
これ以上気持ち良くなると
アジアに沈没してしまいそうだ
夢現
目を覚さなきゃ
僕はアジアの極東から
はるばるやって来たんだ
極東?
それは誰から見て?
端っこはどっちだ
僕らにとっての中心はどこ?
緯度と経度、確認した?
ねえ、、確認した?
確認、、します
キャン: くぼみ、どこ見てるの?
乳首触んなくていいから💦
だめだよこんなとこで、、
早くその、、シートベルトして😣
乳房の中心を探していた
音楽をかけよう
車内のステレオでThe1975を鳴らした
目を閉じる
羽田空港国際線ターミナル
あの子を泣かせた理由が分かった気がする
多分分かったけど
書くことはできないらしい
羽田空港では何かの果物が発酵した匂いはしない
それだけは確かだ