パンのカタチ
「あんぱん、ジャムパン、クリームパン…」という歌詞を皆さんは聴いたことがあるだろうか。その中に出てくるパンの中で、天狗堂海野製パン所で昔からつくられているのがジャムパン。
最近のパン屋さんでは、出会う機会が少ないが、懐かしいなぁーと思えるパンの一つである。
(写真:ジャムパンに切れ込みを入れる海野滋さん)
お客さんからチラッと見えるようなイメージで撮影したので、店主の手元があまり見えないのだが(言い訳)、生地の分割に使うスケッパーで、ジャムパンに切れ目を入れている作業。
切れ目を入れるのは、他のパンと見分けがつくようにするためだと三代目店長の海野滋さんは話す。
「昔は、同じ種類のパンをたくさんつくらなあかんかったからね。できるだけシンプルな切れ目を入れていってるのよ」と三代目夫人の謹子さんは言う。
最近のパン屋さんの店頭にあるようなお洒落な成形のパンでは追いつかないくらい、同じ種類のパンが売れていた時代があったのだ。
近年では、〝インスタ映え〟という見栄えが重視されているけれど、前述した通り、昔からあるパンはとてもシンプル。もちろん私だって見た目に惹かれてパンを買うことは多々あるので、インスタ映えが良くないという訳ではない。時代とともにパンの形も変えていくのは、パン屋さんにとって大切なことである。
ただ変わっていく中で、変わらないものもあっていいと思う。
変わっていくもの、変わらないもの。長く商売を続けていくと、その選択を迫られることがあるのだろう。とても難しい選択だ。昔からパンを買ってくれている常連さんからすれば、変わらないジャムパンの形は安心できるパンのカタチなんだろうなぁと想像する。
■天狗堂海野製パン所
住所:京都府京都市中京区壬生中川町9
電話:075-841-9883
定休日:日、祝