
ウガンダプロジェクト〜支援ではなく、創造する力を育てる
従来の途上国支援といえば、お金や食糧を送ることが中心だった。しかしそれは援助が続く限りの話であり、支援が途絶えれば状況は元に戻るどころか、支援への依存が深まり、むしろ悪化することすらある。本来ならば自立へ向かうはずの人々が、外部の援助なしでは生きられない構造に組み込まれてしまうのだ。
ウガンダのURDT(Uganda Rural Development and Training Programme)は、この従来型の支援とは根本的に異なるアプローチを取る。「与えられるのを待つ」のではなく、「自らの力で創造する」。それを学ぶのが、このプロジェクトの核となる考え方だ。URDTは単なる支援団体ではなく、構造思考と創造プロセスを活用して、人々が持続可能な未来を自らの手で築けるようにする教育機関である。
「ないもの」ではなく、「創りたいもの」から始める
多くの支援活動では、「今、何が足りないのか」「どんな問題があるのか」といった現状の不足や課題に焦点を当てる。
URDTのアプローチはまるで異なる。大切なのは、「今ないもの」ではなく、「どんな未来を創りたいか」から考えることだ。
映画The Uganda Project Film - URDTには、印象的なエピソードがある。ウガンダの少女アイリーンは、「私には家がない。両親もいない」と語る。これは彼女だけでなく、多くの貧困地域の子どもたちが抱える現実でもある。しかし彼女はURDTで創造プロセスを学び、「どんな人生を創り出したいのか?」という問いを投げかけられる。
この問いが彼女の視点を変えた。これまでは「足りないもの」に目を向けていたが、「創りたいもの」を考えることで、彼女は未来を描き始めたのだ。その瞬間、彼女の目の輝きが変わる。ただの受け身の存在から、自らの人生を切り拓く主体へと変わっていく。このアプローチこそ、URDTが提供する最も重要な学びである。
問題解決ではなく、望む未来を生み出すアプローチ
従来の支援活動は、「問題を解決すること」を目的としてきた。しかしURDTのアプローチは異なる。重要なのは、現状の問題ではなく、これからどんな未来を創り出したいのかを明確にすること。望む未来が明確になったとき、人は自然と「どうすればそれを実現できるか」を考え始める。
例えば、URDTの生徒たちは、単に教育を受けるのではなく、学んだことをすぐに実践に移す。彼らは自分たちの手で家を建て、農業を学び、起業し、地域を豊かにするプロジェクトを次々と立ち上げている。これは、「創りたい未来」を明確にし、それに向かって行動するプロセスそのものだ。
こうした変化を映像として記録したのが、ロバート・フリッツ監督のドキュメンタリーThe Uganda Project Film - URDTである。この映画に映し出されているのは、単なる支援活動ではない。子どもたちが、自らの力で未来を切り拓いていく姿だ。
人はどんな環境に生まれても、自らの人生を創ることができる
創造プロセスと構造思考は、教育レベルや生まれ育った環境に関係なく、誰もが学び、活用できる。ウガンダの子どもたちは、それを体現している。彼らは「貧しいから何もできない」とは考えない。むしろ、「どんな未来を創りたいのか」という視点を持つことで、限られたリソースの中でも主体的に行動し、未来を切り拓いていく。
この映画を通じて、私たちが学べることは多い。社会の中で「問題解決」に目を向けるのではなく、「望む未来を生み出すこと」に意識を向ける。それこそが、本当の意味での変化を生む力となるのだ。
未来を決めるのは、与えられた環境ではない。「自分が何を創りたいのか」という問いにどう向き合うか。それが人生の方向を決める鍵となる。