
「やりたいこと」はやりながら見えてくる
創造と聞くと、未来に向けて何かを生み出す前向きなプロセスを思い浮かべるだろう。「これを創りたい」「こう創ろう」と考え、目標に向かって進み、やがて完成に至る。これが創造の一般的なイメージであり、事実、多くの創作は前向きの活動に他ならない。
しかし創造にはもう一つの重要な側面がある。完成したものを振り返り、「実はこれを創っていたのだ」と気づくプロセスだ。これを遡及的創造と呼ぶ。この考え方は、創造の当初にはゴールが明確でなくても、振り返ることで初めてその意図や価値に気づくというものだ。
あとで振り返ってわかる自分の”志”
創造プロセスの中で、最初から完成予想図が明確であるとは限らない。レオナルド・ダヴィンチは「最初に終わりを思い描け」と語ったが、これは創作の基本であって、ありとあらゆるプロセスがそう進むとは限らない。実際には、手を動かし、試行錯誤を重ねる中で、次第にゴールが姿を現すことも多い。
振り返りの中で、「これが自分の目指していたものだ」と気づく瞬間がある。その気づきが自分の価値観や志を明らかにし、未来への新たな創造を後押しする。
自分の志は小学生の頃の原体験にあった
小学生の頃、担任の荒木徳也先生に憧れ、学校の先生になりたいと本気で思っていた時期がある。成長するにつれその夢は忘れ、教員免許すら取らなかった。
ところが経営コンサルティングのキャリアの中で、ワークショップやトレーニング、コーチングを通じて、誰かに何かを教える役目を果たすようになっていく。
振り返ったとき、「自分は荒木先生への憧れを、形を変えて実現していたのだ」と気づいた。この気づきは、過去を整理するだけでなく、未来への行動を方向づける力を持っていた。「教える」という役割が自分にとって重要なものであると再確認し、それを意識的に伸ばしていこうと考えるようになった。
自分が大切にしているものを明らかにする
遡及的創造の価値は、過去をただ思い出すことではない。自分が何を大切にしているのか、何を成し遂げたかったのかを明らかにする作業だ。この振り返りが、新たな創造プロセスを前向きに活性化させる。
遡及的創造を活かすポイントは3つ。
1. 振り返る時間を持つ
完成した後、そのプロセスをじっくり振り返ることで、本質が見えてくる。
2. 柔軟性を持つ
当初の計画に固執せず、プロセスの中で変化する意図やゴールを受け入れる。
3. 価値観を再発見する
振り返りの中で、自分の大切な価値や志を再確認し、それを次の行動に活かす。
創造は未来だけを見るものではない。過去を振り返ることで、そのプロセスに隠れていた価値や意図を発見し、新たな可能性を切り開くことができる。そうした振り返りこそが、創造を深め、未来を豊かにする鍵となるのである。