第13週 / 新たな収益基盤を要請される地方銀行 / コロナ禍での鉄道会社の経営 / サービスを民主化したIT企業に課せられる義務 /(20/08/30-09/06)
こんにちは。秋になってしまいました。
戦後最大級の台風が、九州・沖縄地地方へ迫っています。
近年は災害の大型化も目立ち始めています。周辺の方は十分お気をつけてください。それでは、今週もよろしくお願いします。
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次期総裁候補に最有力視されている、菅官房長官が地方銀行再編について言及
金融緩和による資金が地方に広がらない主因は、地方銀行あると捉えているようだ。
問題の背景は地方の人口や企業数の減少だが、それに追い打ちをかけているのは2016年から始まっているマイナス金利政策と言われている。
地域銀行の現状と課題 ―求められる経営基盤の確立― / 財政金融委員会調査室
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2018pdf/20180702050.pdf
地域銀行は都市銀行に比べて、経常収益における貸出金利息収益への依存度が高い(平成28年度末で地方銀行 48.6%、第二地方銀行 56.7%に対し、都市銀行 37.1%) 。
利息収益が主軸の地方銀行にとって、マイナス金利は日銀からの利息収益依存を控える要請と同じ意味を持つ。
その状況で銀行が事業収益を増やすには、貸出を更に増加させるか、貸出以外による収益を増加させるしかないが、前者は経済縮小のため大きな伸びは期待できない。後者についても、特に地方銀行が進んでいないことがデータからわかる。
地銀、強まる再編機運 合併特例法と異業種連携で
政府の特措法により合併の話題も増えてきそうだ。
地方銀行には、比較的安定志向が強い方が勤めていると聞いたことがある。もし本当なら貸出(利息収益)以外の新しい事業を生み出すことは、企業体質からも簡単ではないだろう。異業種連携を後押しするような、政府判断が進んでいる理由なのかもしれない。
「週刊エコノミスト」にはSBIホールディングスは「地銀連合構想」は政府としてはありがたい存在となりつつあると書かれていた(Kindle Unlimitedで読めます)。
マネタリーベース(2020年8月) / 日本銀行
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/base2008.pdf
マネタリーベース(2019年9月) / 日本銀行
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/base1909.pdf
ここ1年のマネタリーベース(流通現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と「日銀当座預金」の合計値)を比較すると512兆5,110億円 ⇒ 571兆5,919億円で約60兆円増加 (+11%増)。貨幣流通高は、4兆8,876億円⇒ 4兆9,682億円、と 1000億円程度の増加(+2%)。となっている。
増え続ける市中の現金をどのように活用し自足する構造を作ることが、銀行も含めて強く求められいていることなのだろう。カンフル剤的な現金を擦り続ける(国の借金を増やし続ける)にも、常識的には限界がある。
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JR東日本が首都圏の終電の繰り上げを検討している模様。
各社鉄道会社がコロナの影響を強く受けており、大きな営業赤字となっている。
主要な鉄道会社3社のIRを確認したところ、短期間で大型の資金調達を実施していることがわかる。
■JR東日本:保有現金;約3600億円(20年 4-6月 最終損益:▲1500億円)
https://www.jreast.co.jp/investor/financial/2021/pdf/quarter1-01.pdf
短期借入 (コマーシャル・ペーパー=CPも含む?):2700億円、社債=1200億円
■JR東海:保有現金;約3750億円(20年 4-6月 最終損益:▲726億円)
https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000040663.pdf
短期借入:400億円、CP=50億円、社債=400億円
■東急電鉄:保有現金;約550億円(20年 4-6月 最終損益:▲201億円)
https://www.tokyu.co.jp/ir/upload_file/m002-m002_04/01_tanshin_j_202006.pdf
短期借入 = 450億円、CP=50億円、社債=40億円
JR東日本は社債発行も含めて4000億円以上の調達を行っている。また、四半期で1900億円の純資産を減らしている(総資産は約3兆円)ことから、影響の大きさがわかる。
日本国内は人口減少による未来予測は、どの企業も念頭に入れて経営を進めていたとは思うが、今回のコロナショックは数十年後に起こりうる乗客数減少の未来が、一瞬で発生したともいえる。
現状、コロナが沈静化する目処も立っていないことからも、鉄道会社は20年7月-9月も赤字が続く可能性が高い。そうなると収益圧迫が長期化し、短期の資金調達の限界も見えてくる。極論としては記憶に新しい国内航空会社同様な、経営改革が求められる流れになることも考えられる。
もしかしたら、近々ダイヤ改正だけでない、コスト改革が行われる可能性があるかもしれない。
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EpicGameのAppleへの販売手数料(30%)の問題提起が、各国の政府系機関へ波及している。
フォートナイト問題、日本の公正取引委員会委員長も裁判に注目か
フォートナイトに追い風?ロシアでApp Store手数料を制限する法案が提出
欧州各国はEpic問題以前から、GoogleやFacebookも含めた市場地位乱用のリスクを警告している。特にAppleに関しては、以前から下記の指摘が行われている。
最終的には消費者が,選択肢の増加と価格の下落から得られる利益を享受できないことにより,不利益を被る可能性がある。
米国内でもIT企業への規制強化の風当たりは強くなっている。
Epicの問題提起は、このような潮流を踏まえた上で、ユーザーの援護射撃(社会的な潮流を加速化させる)を狙ったものと思われる。
本件と近いニュースで真っ先に思い出されるのが、マイクロソフトの独禁法違反問題。下記は当時の記事(2012年の和解)。
当時の米国本社プレジデント兼最高法務責任者のブラッド・スミス氏の、独占禁止法問題についてのインタビュー記事が興味深かった。
何よりもまず、(企業としての)責任に対する高い意識を持つことの重要性を学んだのだと思う。確かにマイクロソフトはコンピューターを普及させ、“民主化”し、世界を変えた。だが世界を変えるほどのことを成し遂げると、世間はやることなすことについて監視しようとする。つまり、規制をかけようとする。マイクロソフトが犯した間違いは、私が思うに、そうした世間の感覚に抵抗したことにある
Epic Gameの問題提起は、特に欧州では声が強かった、グローバルなIT企業への規制の流れを強めた。
現在、Appleは反論を行っているが、スミス氏の通り、民主化してしまったサービスは世間の感覚に抵抗を続けることは難しいのかとしれない。そもそも、サービスが社会となっていることは、社会の感覚とに抗うこととは矛盾しているからだ。
本問題の結論を予想するなら、過去のマイクロソフトの経緯をたどるとするならば、今後の論争の上、最終的には社会の意見(規制ともいう)を受け入れ、手数料は下がると思う。
テック業界ではつねにスピード感を持つことが良しとされている。だが、本当にそうなのか。自分で考えられる時間を持てないほどの速さで動けば、本来気をつけなければならないことすら壊してしまう。だからといって、(ビジネスを)ゆっくり進めることがゴールということではない。思慮深くなれる程度にはスピードを落としつつ、世界中の人々にとって(テクノロジーを享受できる)機会を改善できるくらいにはスピードを上げることを目指していく。
時間をかけて人のためになる最良の方法を考えることは、スピードを上げて何かを壊してしまうよりも、持続的で長期的な成功につながるーー。シリコンバレーでよく使われる言葉だ。
巨大化したインフラ企業の使命はスピードを上げて利益を生み出すことだけなく、社会の感情も含めて受け入れ続ける必要があるとだろう。もしかしたら今回の問題は、IT事業者が真のインフラ企業になるための、通るべきプロセスなのかもしれない。
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今週もここまで読んでいただきありがとうございました。まだまだ残暑が続くようですので、お体にはご自愛ください。
来週もよろしくお願いします。
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