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#4:アメフト部で学んだチームワークとPM業務の共通点

昨日までのNoteでは、大学院時代の論理的思考や、なぜPMを志したかについてお話ししました。今日は少し角度を変え、私が大学時代に所属していたアメリカンフットボール部での経験が、PMとしてのチームワークにどう影響しているかを考えてみたいと思います。


アメフト部での経験:支える役割とチーム全体の勝利

試合の様子。ボールを持っているのが自分。

私は学部生時代、東京工業大学のアメリカンフットボール部「BUFFALOES」に所属し、オフェンシブライン(OL)として活動していました。OLは華々しいタッチダウンを決めるポジションではありません。むしろ地味で、相手のラッシュを止め、クォーターバック(QB)やランニングバック(RB)が自分の能力を最大限発揮できるよう支える裏方的存在です。常に最前線で相手の圧力に耐え、道を切り拓くことで、味方が前へ進むチャンスを作ります。

アメフトは「究極のチームスポーツ」と呼ばれ、攻守合わせて22人がそれぞれ専門的な役割を果たさなければ勝てません。OLが崩れれば、QBはパスを投げる時間が得られず、RBは走るスペースを見いだせません。つまり、OLは黒子的存在でありながら、チーム全体の戦略を形にするためには欠かせない基礎部分を担っています。

この経験は一見、PM業務とは離れた世界に思えるかもしれません。しかし、実際には多くの共通点があると感じています。

PMとOLの共通点:自分が目立つためではなく、チームで価値を創る

PMもチームスポーツの一員です。PMがコードを書くわけでも、デザインを直接描くわけでもありません。PMは、顧客要件やビジネスゴール、テクノロジーの可能性を総合し、方向性を提示し、エンジニアやデザイナー、他部門(営業・CS・マーケなど)が自分の力を発揮できる環境づくりを行います。状況によっては日陰の仕事も多く、スプリント計画を調整したり、ユーザーインタビューの結果をわかりやすくまとめたり、チーム内の認識ギャップを埋めるファシリテーションに時間を費やしたりします。

アメフトのOLが目立たないように、PMも「華やかな機能リリース」や「大きな売上インパクト」の裏側で、問題解決のための下準備を行います。機能がうまく回ったとき、その光はUIやエンジニアリングの質、マーケの施策成功など、他の領域にスポットが当たりますが、それを後押しするための見えない仕事をPMは担っています。

チームワーク=個の特性を引き出す統合力

アメフトのポジション。それぞれ専門性を持って、連携して動くことで試合を進める。

アメフトでは、OL・QB・RB・WRなど、それぞれ強みが異なる選手が連携します。PMも、エンジニアは技術的な深い知識を持ち、デザイナーはユーザー体験設計やUIデザインに強く、営業やCSは顧客接点で得た生々しいインサイトを持っています。PMはこれら多様なバックグラウンドを持つ人たちが上手く噛み合うよう促す必要があります。

アメフトで学んだのは「相手の強みを理解し、自分は何をすれば相手の力を引き出せるか」を常に考える姿勢でした。OLはQBが投げやすいようにポケット(防御陣形)をつくり、RBには走路を提供する。そのために、OL同士でコミュニケーションを密に取り、どちら側からブリッツが来そうか、どのギャップを埋めるかなど、事前の準備が欠かせません。

PMも、例えばエンジニアから「この要件は技術的に工数が大きいから別案を検討したい」という声を受けたり、デザイナーから「このUI案はユーザー理解が浅いため再考したい」という提案を受けたりします。そこを無視せず、どうすれば各人が力を出せるかを考え、必要な情報を追加提供したり、仕様を少し修正するなどして折り合いを探ります。

コミュニケーションと信頼

ハドルという試合中のショートミーティングの様子。20秒ほどで次のプレーの認識合わせをする。

アメフト部では、練習後にミーティングを行い、今日の課題は何だったか、次の試合までに何を改善するかを共有しました。時に厳しい指摘も出ますが、それはチーム全体が勝利を目指す共通目標があるからこそ受け止められます。またアメフトはスポーツの特性上、プレイのたびにハドルという短い認識の合わせの時間が設けられる。またプレーが始まってからも、細かい声掛けなどで、認識が乖離しないようにする。

PMも、チーム内のコミュニケーションは欠かせません。スプリント計画の振り返り(レトロスペクティブ)やデイリースタンドアップミーティング、1on1などを通じて、進捗や問題点をこまめに共有します。クリアな目標(プロダクトビジョン)があれば、個々の職能が異なっても、互いを信頼し合い、「どうすれば目標達成に近づけるか」を建設的に話し合えます。

私がアメフトで体感した「信頼関係を前提とした率直なコミュニケーション」は、PMとしても非常に役立つと感じています。時に厳しい改善要望や問題点の指摘を受けても、それが全員のゴール(顧客価値創出、ビジネス成長)に向けた建設的な発言ならば、積極的に取り入れるべきです。

勝利=顧客価値創出への転換

スポーツでは「勝利」が目的ですが、PMにとっての「勝利」は「顧客が価値を感じ、プロダクトが成長すること」です。アメフトで勝利を目指すチームワークと、顧客価値創出を目指すPMチームワークは本質的に似ています。バラバラの才能と視点を結集し、共通目標に向かって整合的に動く。そこでは、個々が英雄になる必要はありません。むしろ、全員が自分の役割を全うし、相手を支え、足りない部分を補い合うことが不可欠です。

新人PMとしての心の拠り所

まだ経験が浅い私にとって、アメフト部で学んだ「チームへの奉仕的リーダーシップ」が心の支えです。PMは方向性を示す立場と言われますが、それは必ずしもトップダウンで指示することではありません。むしろ、チームが成果を出せる環境を整え、情報や判断材料を与え、意思決定の助けをする存在です。アメフトのOLと同様、目立たないところで地道に相手を支える役割をいとわず、最終的にチームが「勝利」(ユーザー価値創出)を得ることが大事だと感じます。

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