※予備軍増加中。依存し合う家族が増える世の中の現状
私は生活相談員歴10年。現在はフリーの相談員として小規模などの相談員業務の委託とアドバイス業務を行っています。
生活相談員とは?
介護施設の相談窓口としての役割を持つ職種です。 利用者さんが安心して介護サービスを利用するために、相談対応や関係各所への連絡・調整などを行います。
特別養護老人ホームとデイサービスでは現場で走り回って仕事をしていました。現場で仕事をしている時は本当にたくさんの家族とお付き合いをして、多くの家族ノカタチを見てきました。
これが現状か?これが日本か?こんなの…と衝撃を受けるほど色んな家族関係があり、私はこういった人達をたくさん見てきたので、自分の家族を人一倍大切にしています。
もちろん、笑顔の絶えない、温かい家族もたくさんいました。なぜこうまで違うのか?など考えさせられ、ある共通点も発見し、私自身もこういった事を自分の人生に役立てていきたいと思っています。
その中で私が出会った、モンスター家族を紹介していきたいと思います。
今回は1つ紹介したいと思います。
モンスター家族とは?
モンスター家族に明確な定義はありませんが、介護施設におけるモンスター家族とは、常識がなく自己中心的で介護事業者に理不尽な要求を突き付ける家族のことです。 モンスター家族と似た言葉に、モンスターペアレント(教育現場)やモンスターペイシェント(医療現場)もあります。
私が認知症型デイサービスで相談員として働いている時です。
近くの事業所のケアマネさんから相談の電話を頂きました。
「ご紹介したい利用者様がいるのですが少し難しい対応の方で、市役所や包括も一緒に関りを持っているご家族です。デイサービスの利用を希望している」との事でした。
長年同じ場所で相談員を行って、まじめに働いているとケアマネさんも対等に向き合って下さり、私に対応してほしいとお願いして下さるようになりました。ですが難しいパターンが殆どです。
その方家族の希望に添えられなさそうであれば私はお断りする場合もたくさんあります。
誰でも受け入れる訳ではないという事ですね。
市役所にてケアマネと私と包括との話し合いが行われました。
「利用者様は、85歳女性、長男と二人暮らし。数年前から認知症を発症。認知症の初期症状 「同じことを繰り返し言う」「以前はできていたことができなくなる」「同じ服ばかり着る」「物忘れや探し物の回数が増える」などあらわれ、介護サービスを利用し始める。その時介護度は1。しかし、訪問介護は拒否、デイサービスは本人拒否とご家族様とトラブル続きで受け入れ拒否となり(数カ所)家で見る事に。息子さんは自称IT系会社員。しかし、お母さまを一人で置いておけないとの事で介護休暇を3カ月程とり、介護を行う。しかし、その3か月間で認知症が進行した様子。
お母様は、レビー小体型認知症で、
レビー小体型認知症とは
記憶障害を中心とした認知症と、動作が遅くなり転びやすくなるパーキンソン症状、繰り返す幻視がみられます。 しかし、患者自身には病気であるという認識がありません。 男性の方が女性の約2倍発症しやすく、他の認知症と比べて進行が早いのが特徴です。
レビー小体型認知症がかなり進行した状態で、妄想や幻想がひどく見られ、小柄でおっとりとした方なのですが、顔は凄く攻撃的な感じでした。
認知症の症状で言うと、当時は色は分からない。勿論日付や季節も分からない、しかしトイレは一人で出来る。
こんな感じです。
息子さんは限界だったのですね。
ケアマネと包括の方が、息子さんと話し、このままでは息子さんが体調を壊してしまう。色々あると思うがデイサービスを利用していきましょう。
他人を頼る事も大事という事を少しは理解して下さり、本人からも頼みます、お願いしますといった感じで今回私の所に話が来ました。
まぁ、色々と条件やその他ルールなどありますが、
ご自宅で担当者会議が行われました。
何とも言えないご自宅の雰囲気で…
ちょっと息が苦しくなるような空間でした。
そして、私はデイサービスの説明を一通り終えると最後にお話ししました。
「認知症を患っていると、様々な記憶が混在して言葉として出てきます。私達もお母様に心穏やかに過ごして頂けるように努めますが、ご利用している方は他にもたくさんいます。時にはお母様のご希望を100%叶えての対応が出来ない時もあるかもしれません。プロとして一生懸命、真摯に向き合いますのでご理解いただきたいです。そして一緒に協力してお母様が過ごしやすい場所となる様にしていきましょう。」と「そして、日々の事は連絡帳を通して描かせて頂きますのでお返事は構いませんので少しでも目を通して頂けたらと思います。」「そしてお母様は、現在認知症の症状で妄想や幻想が多いと伺っています。ですので何かお母様からのお話で分からないことなどありましたらご連絡ください。」と。
モンスター家族の特徴で、他人にはいい顔をする!という事があって、正にとても優しそうで、まじめで一生懸命な良い息子さんと言った感じです。
週3回、9時~17時のご利用で、入浴はなし(?)です。
私が見た感じ入浴は一人では絶対できないと思ったのですが、ご家族の強い希望でなしです。理由は本人が極度の潔癖症なのでとの事でした(?)
きっと別の理由があると思いましたが今は触れず。
順調にご利用がスタートしました。
まぁ、最初だけですよね!この業界を知ってる方ならわかると思いますが、人当たりがよくて、印象もよい家族程、何かあると一変して攻撃的になってしまいます。
そして、仕事復帰をすると言っていた長男さんはどうやら、仕事はやめた様子。そして、お母さんの年金で生活している様子でした。
身なりも綺麗で、お迎えの際には全くそんな様子もなくと言った感じです。
そしてこの長男さんが豹変するあるきっかけがありました。
ある日、お母さまがご利用中に便失禁してしまいました。
本人は何が何だか分からない様子でした。
周りの皆様をフォローしながら本人の対応を私が行いました。
「大丈夫ですよ」と声を掛け続けてスムーズに終えました。
その後も、穏やかに過ごしていました。
その日の連絡ノートに、長男さん宛に報告をして、施設の着替えを貸出しした旨を伝えました。
営業終了後に電話が鳴りました。
明らかに怒っていらっしゃる長男さんからの電話でした。
「連絡帳を読んだんだけど、母が言っている事と、書いてあることが全く違うんだけど?どうゆう事?」との事でした。私は本日の出来事(連絡帳に描いてある内容)を説明しました。
すると、息子さんは「それはあなたの意見でしょ?」
母は「間に合わなくて便が少し出てしまった。パンツを着替えれば済むことなのに、私が無理やりお風呂場に連れて行き全部着替えさせられた」と
こういった相手には、反論せずに、否定せずに、穏やかに対応します。
「私はプロの介護職員として生活相談員として認知症の方々を向き合っています。便でパンツやお洋服が汚れてしまった場合、多い少ないに関係なく丁寧に自尊心を傷つけないように速やかに対応します。実際にお母様も、私に感謝の気持ちを伝えて下さいました。そして、お母さまのご病気や認知症について私は少なくとも理解しています。なので、決して無理やりや強引に対応は絶対にしません。今回も丁寧に対応させて頂きました。」
すると長男さんは、
「じゃあうちの母親が嘘ついているという事か?」
「てめーは何様だ?」と声を荒げていました。
こういったやり取りがなされました。
困りましたね…
ですが、自分のお母様の認知症を中々理解できない葛藤があるのは理解しています。優しいお母さんが…と信じられないですよね。
今回の事や今後についてはケアマネに相談させて頂く!と一方的に電話を切られました。
きっとケアマネさんから連絡来るだろうと思い私はかけませんでした。
案の定掛かってきて、出来事を話しました。
要は、こういったトラブルが行く所行く所であり、どこのデイサービスにも通所できないといった事だったようです。
私の所がダメだときっとこの家族は、大変な事になる。
私は、入浴についても提案し、病気の進行や認知症についてももっとケアが必要と感じていたのでお話しさせて頂きました。
そして3日後、長男さんが私に電話してきました。
謝罪の電話でした。そしてご自宅で再び便失禁をして大変だったとの事です。まぁ、今だけと思いましたが、通所を希望しましたので、承諾しました。そして、入浴についても提案しました。週2回施設で入れば、自宅で入る回数が減って、心配事が少し軽減できると。
それからは順調に通所し、入浴していましたが、ある時から入浴を拒否するようになりました。
「家で息子と入ってるから大丈夫」と
まぁ無理強いはせずに、入らない時が増えてきました。
そしてある時から
「夜中に襲われたの」と口癖のように話
周りのご利用者様にも「私が寝てると襲ってくる」
と話していました。
きっと何か変化があった合図と思いケアマネに相談し、
身体的にも認知的にも進行していることを伝えると、ケアマネさんがそろそろケアを検討したいと思っていたとの事で、また連絡しますとの事でした。
そして数日後、なんと…
「息子さんの希望でケアマネが変更になりました」と新しいケアマネから連絡がありました。
そして諸々話をして、なんだかもやもやしていると
元のケアマネさんから連絡がありました。
衝撃の内容で、言葉が出ませんでした。。
ケアマネさんがご自宅に伺いお母様のケアプランや現在の状態についての話をしていると、息子さんから、デイサービスの回数を増やしたり、お泊りしたり、入所は困ると涙ながらに言われたそうです。
ですがこのままご自宅で生活していくのであれば、お母さまの為にももう少しケアが必要と話すと。
実は息子さんとお母様はお互い依存関係にあり、
お母様が認知症になる前から、一緒のお布団で寝たり、お風呂も一緒に入ったり、大人になっても子供のままの親子関係がありました。
異常なまでにお母様に依存しており、なので他人が家に入ったり嫌がっていたのですね。仕事しているのも嘘で、長年引きこもり状態だったそうです。
ケアマネさんは息子さんの支援も必要と考え、各機関と連携を取り対応をしようとしたそうですが、、
その後すぐケアマネ交換の希望があり、豹変したお怒りの息子さんが市役所に連絡を入れたそうです。
そこからしばらくして息子さんから、デイサービスの変更の希望があり私のデイサービスお契約も終了しました。
まとめ
他社とのコミュニケーションをとる事が出来ずに環境の変化についていけずに今回のような事がありました。
お母様を大切に思うがあまり、過度な要求をしてしまったり、過敏になってしまったり、息子さんとお母様の関係が何とも複雑でした。
ご自宅はとてもきれいで、一見そんなようには見えないのですが、一歩入ってみると現実は違いました。
今、こういった他人を受けいらない、信用しないなどの方が増えており、誰でもモンスター家族になる要素があると言われています。
気付かないうちに、知らず知らずに、過敏になってしまうのですね。
家族のケア!私は一番大切にしていければと感じています。
核家族が多く、こういった介護の現状が中々分かりづらいのもあるのかな?とにかく、介護の大変さと周りを頼ってみんなでが出来ればいいですね。
他人に怒ったり、不満や、妬みがあるのは自分が満たされていないからなんですかね?
色んな家族と出会い、考えさせられることが多い仕事だと感じた出来事でした。
長々書いてしまいましたが、最後までよんでくださり有難うございました。
Tamu