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アフリカ人夫と離婚までの道のり#4
いつまでも続けられない不安
いつまでもこの生活を続けていく自信はなかった。私が行けなくなったら彼も仕事がなくなる。土台を作らなきゃ、と思いははやる。
事業承継の現実と新たな挑戦
隣村での肥育牧場の事業承継の話もあったが、何千万何億といった資金など、追われるような生活をしている私たちには非現実的だった。そんな折、天然記念物の牛を世話する地域おこし協力隊の募集が目に飛び込んできた。「これしかない!」と申し込み、合格したら辞めさせてほしいと牧場主へも話した。 結果、面接に合格。「旦那の仕事はすぐに見つかるか?」と面接で確認したところ、「選ばなければ何でもある」と言ってくれていたので安心した。
新天地での生活と現実
勤め先を退職し、2021年1月20日に引っ越し、また新たなスタートを切った。日本の天然記念物なので保護が目的だが、その価値は高い。以前の肥育牧場で働いていた頃、この牛の存在を知っていた。市場には出回らないが、都市部の高級料理店のみが扱う高級肉だった。 とはいえ、一頭一頭に持ち主がいるため、同じく国の天然記念物である奈良公園の鹿とは事情が異なる。この牛に関するミッションについてはここまでにしておこう。 なぜなら、地域おこし協力隊(会計年度任用職員)は期間限定の地方行政職員になるため、知り得た情報には守秘義務が生じるからだ。 ……と言うのは建前で、知られてはいけない闇を暴こうとしても良いことは起きない。それがこの国の社会構造なのだろう。
旦那の仕事が見つからない現実
引っ越し先では旦那の仕事は見つからなかった。「選ばなければ仕事はある」という言葉は、ただの口約束だったのかもしれない。しかし、引っ越してきた私たちにとっては何とかしてほしいところだった。 だから、私は戦った。 戦って、戦って、戦った……。 行政を敵に回して、一人で戦った。
旦那の突然の家出と知人の申し出
仕事がない旦那は1月末には家を出て行き、知人宅に遊びに行った。知人宅のリフォームを手伝えば、11月末まで住み込みでアフリカへ帰るお金(80万円)をもらえると言われた。知人は「旦那の話を聞いていたら、可哀想でアフリカ里帰りに協力してあげたくなった」と電話で私に話してきた。
私は戦うことがバカバカしくなり、元いた場所に戻ろうと何度も思った。しかし、旦那は「10カ月後の80万円」が重要で、元の場所には戻らないと言った。
今思えば、一人で帰ればよかったのに、私は旦那のビザ更新のために動くことができなかった。私の心よりも旦那の配偶者ビザを、周囲は当然のように優先した。そして、他人に私を都合よく利用することを許したのは、私自身だった。なぜなら、私は旦那に80万円をあげることもできないし、ここで我慢してビザの協力をするしか自分の価値がないと思い込んでいたからだ。
しかし、やりたくないことを我慢し続けると人間は病気になる。その後、私は診療内科にかかることになった。
職場での戦いと旦那の楽しそうな姿
旦那の仕事のことで戦った結果、上司からとことんミッションの邪魔をされ、さらに上司に媚びる正職員たちからも冷たくされた。 その頃、旦那は楽しそうに遊んでいる写真をSNSに投稿していた。音楽の仕事も少ししていた。
旦那がいる世界と、私がいる世界は全く違っていた。私は何のためにここにいるのか、もはや考えたくなかった。私は生存していたが、生きているとは言えない状態だった。
上司のパワハラについて、行政のハラスメント対応課にも何度か相談した。しかし、行政にも人の心で仕事をする人がいると信じたかったが、組織にとって邪魔なのは「心」だった。
旦那の周囲での評価と私の扱い
旦那が住む知人宅まで行くには、高速船で1時間、さらに港から車で3時間半かかった。1月末に家を出てから、旦那が家に帰ってきたのは5月にたった一度だけだった。 私が旦那に会いに行くと、なぜか無視されたり、邪険にされたりすることがあった。旦那は普通に接してくるが、その知人の態度が妙だった。「私、何かした?」と心がざわついた。
その理由が分かったのは、旦那がアフリカに里帰りしている間に、全く別の人物から証言を得た時だった。
旦那は知人やその周囲の人たちに「奥さんから酷い扱いを受けていて、自分は可哀想」「一人でやっていきたいけど、ビザのことがあるから我慢してる」などと話していたのだった。さらには「お金を搾取されている」とまで言っていたらしい。
見えなかった事実と知人の態度
この事実をまだ知らない時期、私は時々旦那とデートをした。だが、ゲストハウスに泊まろうとすると知人夫婦が現れ、旦那を連れ帰った。彼らは旦那を心配していたのだろう。
また、旦那が大きなホールで演奏するとき、私は見に行った。しかし、知人夫婦に「家族しか入れないから帰ってほしい」と言われた。コロナ対策のためだと説明されたが、主催者に挨拶した際には退出を求められなかった。それでも、知人夫婦が強く主張するので私は帰った。
旦那の里帰りと発覚した借金
アフリカに里帰りする前日、旦那と一緒に海を見に行ったりした。ワークショップ会場まで送り届け、さよならをした。
そして、旦那が出発してから色々なことが判明した。
旦那は知人から90万円の借金をしていた。そして、彼が日本を発った後にその事実を知らされた。だが、もはや私には関係のない話だった。
旦那は利益を得るためなら私を悪者に仕立て上げ、相手に嘘をつくことも平然とやってのける。
知人の奥さんの態度
知人の奥さんと二人きりになったとき、何を話しかけても完全に無視された。だが、旦那や他の人がいるときはニコニコと話しかけてくる。まるで典型的なモラハラ人間のようだった。
愛の気持ちの温かさよりも、違和感と気持ち悪さしか感じられなかった。